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校則から教育を覗く

2015年10月23日 | 読書
 【2015読了】104冊目 ★★
 『こんなに厳しい!世界の校則』(二宮皓 メディアファクトリー新書)


 先週、ある4年男児が登校の列から外れて、駆け寄ってきた。「先生、間違ってサンダル履いてきました。」小学校で具体的な校則を決めているところは少ないだろうが、入学時から靴やズックを履いてくることは暗黙の了解事項になっている。そうした多くの文章化されない約束事によって日本の学校は安定している。


 この本で得られた知識は、面白いなあと思う反面、教育の本質はいったい何なのかを考えざるを得ない。例えば、ドイツには「休日に宿題をしてはならない」という校則があり、イギリスのある校では「学校既定の宿題帳」があり量確保の細かいガイドラインを決めている。生徒への配慮は逆方向を向いているようだ。


 ドイツには、学校がコントロールすることは親がすべき教育の責任と権利を奪うという考えがあるという。イギリスは細かい学校区分があり、筆記試験のための意識がかなり強いようだ。教育に力を入れる政策は、ほとんどの国にあるのだろうが、その具体策の多様さは、私たちが想像するよりはるかに広く複雑だ。


 校則と言えば「持ち物」も大きな点だが、それは諸国でも同じ。禁止と記載されているなかにある「おもちゃの銃」「適正な大きさでない食器」「枕と毛布」等々、これも実に多彩だ。共通点を探せば「家庭での寛いだ生活を連想させるものは、教育の場にふさわしくない」という考えだろうか。日本も同様と言える。


 瑣末なことを並べているように見えて、編者はあとがきで決定的な点に触れる。曰く「日本の校則でも教師への尊敬を堂々と求めてもらいたい。世界の校則では、教師への態度や尊敬を明確に義務づけている。教師を尊敬してこそ学校での学びが成立する」。失われた尊敬をどう取り戻すのか、問われている現在がある。