すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

語りたくなることをつくる

2015年10月18日 | 読書
 【2015読了】100冊目 ★★★
 『実践!仕事論』(小山薫堂・唐池恒二 講談社)


 放送作家という枠にはまらない仕事をしている小山薫堂、そして「ななつ星」の成功で一躍脚光を浴びたJR九州の会長である唐池恒二。この二人の対談を編集して本に仕立てた。最近、こうした形をとる出版物が増えている気がする。対談そのまま?よりコンパクトに考えが伝わりやすい。その構成も一つの主張だ。

 
 「現場で成功した二人がはじめて語る『地方・人・幸福』」という副題がある。はじめてかどうかは定かではないが、いわゆる稀代のアイデアマンのぶつかり合いという様相は魅力的だ。そこには自ずと共通点が浮かび上がるし、挙げられた三つのキーワード「地方・人・幸福」そのものが、つながっている気がする。


 (唐池)
★組織の活性化の救世主は、内弁慶であるはずがなく、「よそ者、馬鹿者、若者」と見たり。「異端を尊ぶ」くらいの度量を示すべし。

 地方再生という観点で、成功を収めている自治体を見るとき、そこにはきっと「異端」がいるはずだ。そして、その異端を認めるリーダーがいる、もしくはその異端自身をリーダーに仕立てるフォロワ―がいるに違いない。その事実に目を凝らそう。意識変革なしに活性化や再生は計れないことを、端的に言っている。


 (小山)
★「防災」という言葉自体が人間の奢り。地球が危ないのではなく、ただ人間が危ないだけ。

 結局、危機を回避したいのは人間である。それはいくら環境保護を強く叫んだところで変わらない。また例として挙げられている、治水と集落、国の形成ということは実に興味深い。一人の力ではどうしようもないから組織ができる。しかし同時にそれでも自然に対抗できるものではないと踏まえて、集まるべきだ。


 達人、カリスマ、成功者…様々に形容できる二人の話から、重なり合う精神や行動をピックアップしてみたら、「人に語りたくなる」という言葉が浮かんだ。自らが体験した、関わったことを、他者に知らせたいと思えることを創りだそうとしている。それは自慢話とは質の違う、素晴らしさを分かち合おうとする心だ。