すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

かなり好きだなこれ

2015年10月10日 | 読書
 【2015読了】96冊目 ★★★
 『え、なんでまた?』(宮藤官九郎  文春文庫)


 週刊文春連載のエッセイをまとめたもの。10年以上も続いているらしい。子育て日記的な文章から始まったということだが、確かに面白い。特に「娘がウソをつくんです」と始まる件は考えさせられる。虚言を言うことについて「親が作り話を生業にしているんだから説得力に欠ける」ともっともなことを書いている。


 確かに虚言とは一種の「創造力の芽」と言えるかもしれない。何か心に不満や傷を抱えているから…と理由を探している因果な商売の教師にとっては、一つの驚きだ。その「ウソ」が何のためなのかが問題であって、関心を惹くためであれば、それは芸人も脚本家も変わらないわけで、どんな影響があるかが問題か。


 ほとんど脱力系の文章だが、なかに真面目な?テーマもある。映画批評があり、川島雄三という映画監督の言を引用している。これはなかなか深いなあと感じた。批評を受けて「薔薇を見て、それが桜でないことを嗤われたところで、何とも返答の仕様がない」…これは様々な場面であることではないか。例えば教育も。


 「あまちゃん」前後のことも楽しい。またおっと思いだしたこともある。映画『ゲゲゲの女房』で水木しげる役をクドカンがやったのでした…そしてその女房役は…なんと今をときめく吹石一恵だったではありませんか。彼女の最初の印象はあの大河「新撰組」だったし、「永遠の0」にも出ていたし…と浮かんでくる。


 解説は岡田惠和。この脚本家は私と同年代ではないかと思うが、クドカンの登場に脅威を感じたという。そしてそれ以上に「かなり好きだなこれ、どうしよう」と混乱したという。同業でないので混乱はしないが似たように世代は違っても、面白い!と感じる自分がいて、その訳はたぶん「匂い」だなと見当をつけた。