和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

長い間。

2013-03-09 | 短文紹介
橋本武氏は1912(明治45)年京都府生まれなのだそうです。

橋本武著「伝説の灘校国語教師の『学問のすすめ』」(PHP)に

「国語の勉強に即効性を期待するのは無謀なのです。・・
ただし、長い間、国語教育にかかわってきてはっきりいえることは、『国語力』はすべての学問の基本になっているということです。」(p53)


この本、橋本武氏のエッセンスをやさしく伝えてくださる一冊となっておりました。
たとえば、こんな箇所はどうでしょう。

「国語力の土台を培うのは『書く』ことです」とあります。
「文章を書くためには、何を書こうかと考えなければなりません。何を書き、何を書かないのか、それを判断する力が身につきます。また、それをどのように展開して書けばいいのか、文章の道筋をつける必要がありますから、構成する力も養われます。さらに、そのような作業は集中しなければ進めることができません。すなわち、書くことによって、『判断力』『構成力』『集中力』が培われていくのです。」(p49~50)



第一部の最後には、こうありました。

「古文では受験と全く関係のない草仮名(そうがな)を授業に取り入れていました。」

「そもそも大学に進学することは人生の目的ではなく、手段の一つです。受験だけでなく、人生の途上で出合うさまざまな難問を解決する力を養うことに意味があるのです。」(p59)


第一部の最初の方に、東京高等師範学校時代に
漢和辞典の『大漢和辞典』全十三巻の編纂作業を手伝うことが出てきます。

「編集所に寝泊まりしながら、朝から晩まで仕事にあけくれました。好きな本を読む時間など全くありません。しかし、辞書の編纂という仕事は、以後の私にとって大きな財産になったと思います。わからないことがあったら、徹底的に調べるという姿勢を見につけられたからです。・・・」(p17)

これについては、
原田種成著「漢文のすすめ」(新潮選書)の第二章「諸橋『大漢和辞典』編纂秘話」に、橋本武の名前が登場しており、興味深いですよ(p86)。
コメント
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