おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「宵」(百年文庫)ポプラ社

2012-05-02 22:50:55 | 読書無限
 このところ、飛行機だの新幹線に乗って出かける機会が続きます。車中でちょっと読書を。ちょうど手頃なのが、「百年文庫」。それでいてけっこう読み応えがあります。なかなか侮れない良品ばかりです。
 今回は、明治の作家3人。樋口一葉「十三夜」、国木田独歩「置土産」、森鴎外「うたかたの記」。いずれも擬古文調の優麗たる文体です。
鴎外以外は、会話文が口語体で表現され、言文一致体の先駆をなす。鴎外は、欧文体。それぞれ特徴が出ていて、実に見事な編集になっています。
 中でも、樋口一葉の「十三夜」は、絶品。何回読み通しても飽きません。明治になっても封建時代の因習の残る頃、子どもを残し、意を決して実家に戻る覚悟を決めた娘の心境。両親の驚き、嘆きと説得。すべてを胸におさめて、再び帰途に着く娘。偶然乗った車の車夫が幼なじみ、将来は嫁ぐ気持ちでいた男だった。落ちぶれ果てて車引きとなった男との道すがら(今や上流階級の車上の女と車引きの男、という運命のいたずら)、とぎれることもなく続く会話は、切々と胸に迫る表現。
 お互いの運命のなすところ、我が身の不幸を嘆きつつも、二度と会うこともなく、東と南に別れていく・・・。
 「憂きはお互いの世におもう事多し。」見事な終わり方です。他の作品も改めて読んでみようか、と思いました。
 鴎外の作品は、うって変わってテンポよくとんとんと話が進んで、小気味よいほど。降りしきる雨の中を疾走する主人公と再会を果たした憧れの女性。登場人物は、若き芸術家たちから発狂した王まで多彩に富み、また舞台回しもめまぐるしいほど。ヨーロッパ文学に接し、目覚めた鴎外の勢いと自負を、書き出しの部分から一気に感じさせる作品。「舞姫」とはまた違った味わいがありました。
 間に挟まれた国木田さんがちょっと気の毒な感じ。
 淡い恋心とその結末、その後の運命のなせるわざ・・・。春宵にふさわしい作品群でした。 
コメント
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