おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「厩橋」(小池昌代)角川書店

2012-05-13 20:33:55 | 読書無限
 今年の2月に発刊されました。「東京スカイツリー」にまつわる物語です。
 いよいよ一般公開間近のスカイツリー。公開日を待たずに、すがすがしい青空の下、今日も大勢の観光客でスカイツリーをめぐる浅草通り、曳舟川通り、言問通り界隈は、賑わっています。
 これまでも、これから先もスカイツリーに関わる物語は実際の工事のようす、関係者の苦労、地元の期待・・・、何よりも、工事計画の発表、まったくの更地から徐々に立ち上がり、634㍍に至りまでの写真、ビデオ、人々の声、様々な感想、思いなど数限りなく出版されるでしょう。 毎朝、毎夕、通勤で、所用で、このツリーの真下を行き来していた多くの人々、その中の一人でもあった小生。それぞれに編み出された、それぞれのドラマがきっとあったことでしょう。
 この小説。生活の場であるマンションの一室いつから見上げれば、いつも出来上がりつつあるスカイツリーの成長を見ることのできる親子3人の物語です。天空を突き上げる電波塔と隅田川に架かる厩橋。他の橋に比べて、蔵前橋と駒形橋に挟まれた地味なイメージの橋(スカイツリー見物には、吾妻橋、言問橋、そして駒形橋?)。登場人物たちの日常生活に密着した厩橋にも、深い思いを寄せる物語。そこに、一人の(三者三様)人生の来し方行く末が語られます。その重要な狂言回しとしての樋口一葉の「にごりえ・たけくらべ」。これらをからませて物語を紡いでいきます。
 作者の、下町・地元生まれゆえの土地への愛着に裏付けられた、詩人らしい五感の働きを利かせた語り口は見事でした。
蝶の絵と厩橋の絵柄。蝶も厩橋も、ストーリーの展開の上で、隠喩の働きをしています。
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