おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「清遊」(領家髙子)実業之日本社

2012-05-17 23:17:17 | 読書無限
 「清遊」俗塵を離れた静かな旅行・遊び。
 古い写真が織りなす家族の物語。いっとき前の福永武彦風の小説。辻邦生でもありそう。よく仕立てられた展開になっています。
 中国・大連から東京・隅田川の東、押上。世田谷から湯島。そして、八ヶ岳山麓。それぞれの土地を結びつけていく一枚の写真。拒食症。脳梗塞のため半身不随になった夫、かなり年の離れた若い妻の献身的な介護。その奥底に潜む女としての性。突然、家出し行方知らずになった一人娘に思いを寄せる、老境にさしかかった夫婦。
 様々な思いを抱く主人公たち、中国の大連がそれらを次第に結んでいく。引用された原口統三の「海の瞳」の一節が効果的。ちょっと下火の「ブログ」が狂言回しになっているのがおもしろい。おさまり方がちょっとおざなりな印象。しかし、読後感はさわやかです。こうした読書三昧も、まさに「清遊」ですね。
 二人の隠れ家がとなった長屋風の建物群は、すっかりなくなり、今はもう、東武鉄道の本社屋と大きなマンションになっています。もとは、東武鉄道の社宅だった、と思いますが。線路を挟んだ向こうには「東京スカイツリー」が天空に向かって伸びています。開業間近の押上・業平橋界隈です。
 余談ですが、この方は、小池昌代さんや石田衣良さんと同じく、墨田区江東橋にある都立両国高校の出身です。
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