Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

周回遅れ(3)

2022年11月11日 06時30分19秒 | Weblog
シュム ペーター 経済発展の理論 上
 「なぜなら、もともと生産をおこない、新結合を遂行するためにこそ、企業者は購買力を必要とするのである。そしてこの購買力は、循環における生産者のように、先行経済期間の売上金から企業者に対して自動的に与えられるものではない。もし彼が、偶然の場合はさておき、一般にはこれを所有していないとすれば――もし所有しているなら、それはずでに以前の発展の結果にすぎないーー、彼はそれを「借り入れ」なければならない。これに成功しなければ、彼は明らかに企業者になることはできない。」(p264~265)

 シュンペーターの不朽の名著。
 一般に流通している第二版は1926年の発行なので、かれこれ100年近く経とうとしているが、もはや日本は100年遅れという感がある。
 彼の主張によれば、「新結合」は金融、つまり「資本家から企業者への富の移動」によって実現されるわけだが、日本では、銀行がこれに逆行してきた。
 何しろ、企業者に対して、「土地を差し出しなさい。さもないとお金は貸しませんよ」と言っていたのだから。
 土地(=「以前の発展の結果」)を所有している者にだけ金融を行うのであれば、銀行は、既存の資本家の維持に奉仕するための存在ということになる。
 要するに、銀行は、企業者が生まれないようにするための装置だったのである。
 この根底には、「新参者の登場を許さない、あるいはこれを抑圧するシステム」があると思われるが、私見では、これも伝統的な「イエ」の思考に由来しているような気がする。
 
どうなる「社長の個人保証」
 「個人保証は「経営者保証」とも呼ばれますが、個人と会社の資産を一体として扱っている中小企業も多い中で、会社の財産と個人の財産を一体として弁済を担保する仕組みです。
 金融機関にとっては安心して融資ができるメリットがありますが課題も指摘されてきました。
 例えば、経営者がリスクをおそれて新規事業を始めるのをためらったり、事業を引き継ぐ後継者がなかなか見つからなかったりする要因になるとも言われています。
 またベンチャー企業の創業を妨げるという指摘もあります。


 一般的な金融機関のマニュアルでは、会社の場合は「実質的経営者」、個人事業主の場合は「法定相続人」の連帯保証を徴することとされてきた。
 こうした個人とカイシャを同視するかのような「経営者保証」も、結局のところ、「イエ」(事業・職業の世襲)の思考から脱却できていないことの証左のように思える。
 なので、金融庁が「経営者保証の見直し」を金融機関に求めたとしても、根本的な思考が変わらない限り、実効性は乏しいのではないかと思うわけである。
 ましてや、後継者不足に対処するための、つまり「イエの存続」を目的とする政策なのであれば、全くトンチンカンなことをやっていることになるだろう。
コメント
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