Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

唯一の共同作品(4)

2022年11月19日 06時30分41秒 | Weblog
 私などは、職業柄か、映画を観るときに言葉(セリフ)にばかり注目してしまうが、この映画を読み解くためには、言葉以外の(non - verbal)要素に着目する必要があるようだ。

『勝手にしやがれ』Vol.4|鏡を愛するチンピラ=ジャン=ポール・ベルモンド

 まず、ミシェルのモデルないしアイコンが重要である。
 彼については、「唇を指でなぞる仕草」が特徴的で、これは、「マルタの鷹」(1941年)のハンフリー・ボガートの仕草の引用だそうである。
(ちなみに、ラストではこの仕草がパトリシアにも伝染してしまう。)
 いわば「本歌取り」なのだが、アメリカン・フィルム・ノワールに出て来るギャングに憧れ、アメ車ばかりを盗み、アメリカ人留学生:パトリシアに首ったけになるというところからして既に、ミシェルのバカっぷりが遺憾なく表現されている。
 次に、ジャケットの着脱という行為の持つ意味が重要である。

 「ジャケットを着ている時に輝き、ジャケットを脱いだ時に、この作品は倦怠に突入するのです。

というのは、ファッションの専門家ならではの鋭い指摘である。
 ジャケットを着ている間じゅう、ミシェルは死に向かって突進するが、ジャケットを脱いだとたん、小休止に入るのである。
 さらに、大事なのは、「しかめっ面をする」(「むっつりする」「スネる」)(faire la tête)という仕草である。
 ミシェルによれば、これには三種類があって、人生はこの三つの表情に要約されるという。
 ラストで、彼はこの三つの表情をつくった後、”dégueulasse” と呟いて死ぬのである。
 
コメント
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