パンセ(みたいなものを目指して)

好きなものはモーツァルト、ブルックナーとポール・マッカートニー、ヘッセ、サッカー。あとは面倒くさいことを考えること

「母の像」の大きな手

2010年01月30日 15時42分50秒 | Weblog
何年ぶりに日展に出かけた(名古屋)

この展覧会を見るにはコツがいる
まずは最初からハイテンションで見ないこと
見るだけでも結構体力を使うので
(立ちっぱなし、歩きっぱなしだけの理由ではない)
気になる作品を目ざとく見つけてそれに集中すること
そこで2.3点あれば儲け物と考える事

日本画、洋画、彫刻、書道、工芸の順番だけれど
いつものことながら後半の方はどうしてもいい加減な見方になってしまう
文字は何が書いてあるかわからないし
工芸の辺になると集中力が切れて、、

それにしても、人の表現意欲というものに驚いてしまう
日本画、洋画も畳何畳を要する大きさ
おそらく完成までに相当な時間がかかる
そして細部に個人個人の感覚のうちにこだわって、、、

正直なところ、自分には絶対こんなに時間のかかることには
取り組んでいられないからそれだけで感心してしまう
たいしたもんだ!
と同時に、自分も何かこだわって
しつこく何かしなくては等と瞬間的には浮かんだが、、、

気になった作品
どうしても最初の方が多いけれど、、、

「道」
砂漠の中の一本道
画面下から上に向かって伸びている
太陽は左側から照らして歩く人の影は左に
画面の大部分を占める道の中央部は
風に運ばれた砂で半分位覆われている
確かに明るい日差しの中なのだが
ここで感じられる静寂感、孤独感はまだ深刻なものに至らず
ある面若々しい

「巣立ち」
文字通り小鳥が飛び立つ様を描いているけれど
鳥よりも眼に入るのは川の中の石
それかが圧倒的なリズム感で迫ってくる
タイトルが鳥がらみなことを忘れそう

タイトルは忘れてしまったが
家族3人が川に字になって昼寝している絵も良かった
たくさんの色を使いすぎるとまとまりが無くなりそうだけれど
(素人が言うのも変だけれど)
この絵ではそのカラフルさがこの家族のあったかさを
感じさせて効果的(たしか何か商を貰っていた)

それから
「母の像」
暗い色調の中に着物を着た、背の曲がった
小さな老婆が正座している
見えるのは横顔、しかしその表情は
何年間も確かに生き抜いてきた(それも多分真面目に真剣に)
意志の強さ、奥深さが感じられる
視線をずらしてみると体の割に大きな手が見える
この手は様々な事を子供達のためにしてきた手だ
そう、この時代の人達は本当に良く働いてきた
作者のやがていなくなる母堂への記憶の証
自分の為に描いた気持ちがよくわかる

そんなことを思うと
不意に祖母のこと、母のことを思い出し
胸が熱くなり目頭からじんわりと何かが

全体の中で、この絵は良い方かどうかは分からない
しかし自分にとっては一番印象に残った作品
体に似合わない大きな手
優しい作者の想い

今日は、もうこれだけで充分

自分の気力、体力の低下を嘆きつつ
後はサラッと流して帰路についた



コメント
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