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【京都発幕間旅情】大阪城西ノ丸庭園,巨大城郭外郭の威容と防衛本山の胆力守る庭園の気風

2019-07-03 20:14:02 | 旅行記
■西ノ丸からの荘厳天守閣
 太閤の密使が如く烏が気位優美に舞う桜並木の向こうに天守閣、大阪城天守閣はこの方角からが一番勇壮かもしれません。

 大阪城二の丸、太閤秀吉が築き上げた城郭は毎回探訪するたびにその壮大さには圧倒されまして、エジプトのピラミッドや万里の長城は凄いと聞くのですが、大阪城造営は軍事拠点故に迅速に成し遂げられた事を踏まえれば、凄いものをあの時代に造った、思います。

 西の丸、大阪城を大阪観光という一括りで眺めますと意外や天守閣を堪能し帰路に就く方が多いという。天守閣は1936年の昭和天皇行幸を記念し、当時の陸軍が造営した日本有数の歴史を誇る復元天守閣なのですが、歴史の長さでは大阪城そのものの構造の方が長い。

 大手門に千貫櫓と火硝蔵筆頭に十三の重要文化財、梅林と西の丸庭園が広がっています。実は天守閣をいちばん勇ましく見上げる立地は、この二の丸庭園なのではないかな、と考えます。此処は桜の名所、青葉と共に天守閣を一望できまして角度により移ろう様子が。

 本丸の外郭、それが二の丸と西の丸です。本丸を防護する極めて重要な城郭構造物ですが、大阪城は特に大きい事から、外堀と内堀に挟まれた区域という位置づけとなっています。散策してみますと大きい、大坂夏の陣冬の陣で徳川が講和の際に必死に埋めた事が分かる。

 真田丸、有名になりました大阪城攻防戦ですが、太閤秀吉亡き後の大阪城は元々大阪城が軍事拠点として造営されつつ、壮大な防壁を誇示する行政施設としての色彩を帯びた事が大阪城の城郭としての生命を狭めてしまったのかな、と思います。せめて地下壕があれば。

 太閤秀吉は数多の激戦を潜り抜けた胆力と気力に戦略眼と人徳を兼ね備えた武将です。故に仮に大阪城攻防戦の際に存命であれば必ず防衛を成し遂げ、近畿一円の城郭を駆使し反撃により攻城軍を殲滅したでしょう。ただ、権力の後継者たちは胆力が無かった、敗因だ。

 西の丸は公園となっていまして散策が楽しめます。この広大な公園は兵力策源地となり、備蓄量も豊富、江戸時代に再建された二の丸は東大番頭屋敷として百間長屋が並び、対面には西大番頭屋敷が並んだ、いわば城郭を兵力策源地として徳川が継承していたのですね。

 300本のソメイヨシノが植えられたこの西の丸庭園は、庭園と聞きますと回遊式庭園を思い起こすのは京都の感覚でしょうか、広く芝生の公園が広がしまして、何かと考えますと日本第二の都市大阪、大阪府だけでベルギーやオランダに匹敵する街に開放感を与えている。

 明治維新の戊辰戦争時に全て焼失してしまった事は残念ですが、こちらを継承していた徳川慶喜は、大阪城というよりも幕府と朝廷の対立という懸念を恐れ、異なった意味で胆力よりも別の物を優先し、早々に大阪城を放棄しています。ある意味残念だった、といえる。

 帝国陸軍、大阪城を後に継承した人々は胆力がありました。明治以降は陸軍施設となり修大阪師管区司令部即ち第四師団司令部と大阪陸軍兵器補給廠櫻門前兵器庫が造営される事となりました。大阪造兵工廠も置かれ、大阪城は三度策源地へと、返り咲いたわけですね。

 東洋一の兵器工場、豊川海軍工廠と並び称された大阪造兵工廠は大阪城共々大阪大空襲の主要目標としてB-29爆撃機による猛攻を受けましたが、鉄筋RC構造の天守閣は今度こそ耐えました、戦後直後の天守閣周辺、二の丸西の丸は損傷著しくも、確実に耐えていた。

 千貫櫓ひとつとっても再建天守閣一つに匹敵する規模を誇ります。西の丸公園、元々は豊臣秀吉正室である北政所屋敷跡でしたが、戦後の1961年に総面積約64000平方米の芝生庭園として再整備されました。外堀外郭を散策するだけでも、雄大な歴史を実感できます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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