先日から、読み始めたリンダ・グラットン著「ワーク・シフト」(プレジデント社)を読了した。この20年の自分と社会、そして、これからの20年の自分と社会を整理するのに良い機会であった。
私は、幸か不幸かグローバル企業に身を置き、ある意味通常の日本人より、時代を先取りできる位置にいたようである。そして、10年前のある日、今までのキャリアを離脱し、全く別の世界に向かう。コンピュータのマーケティングや営業の世界から、人の生き甲斐とかケアの世界にである。当時は、キャリア形成は叫ばれていたが、キャリアを変えることについて、ワークシフトのような本は全くなかった。営利企業から非営利企業という例も殆どなかった。
しかし、生き甲斐の心理学の自己実現の領域の問題、①何のために生きるか?②生き甲斐は何か?③身体、心、魂からなる自分を大切にしているか?は後から考えてみても、自らに問い続けていたように思う。拙いながら未熟ながら、自分の軌跡は、リンダ・グラットンの理論からしても、自然なキャリア変換だったようだ。
時代は複雑で矛盾に満ちている。その中で、悔いのない人生を歩むには、昔のように人から与えられた人生を歩むのではなく、もっと主体的に哲学を持ちつつ(それは、古くて新しい伝統宗教であったりするが)生きることだと思う。羅針盤が必要なのである。
日本の臨床心理学の図書は、変に科学的で宗教や哲学を敵視するところがある。しかし、宗教や哲学の領域は強烈な精神力動を引き起こす(いい意味でも悪い意味でも)領域でもある。世界的には臨床心理学を学ぶものは比較文化・宗教学の知識が常識とされている。運良く、生き甲斐の心理学の師匠は、こうした正統な心理学を学び、惜しみなく真髄を教えてこられた。
私も、これから10年、20年。いつまで生きることができるか不明ではあるが、リンダ・グラットンさんが指摘する現代の傾向。①テクノロジーの進化 ②グローバル化の進展 ③人口構成の変化と長寿化 ④社会の変化 ⑤エネルギー・環境問題の深刻化 は残念ながらも続くだろう。そして、その中で健康的に、そして悔いのない人生を歩むための、生き甲斐の心理学の普及活動。ますます重要になっていくと思う。
私たちの個性の美を大切にするためにも必要だ。
個性の美 8/10