単位導入の4段階とは例えば、長さについていえば、いまはmが国際単位となっているが、その長さをどういう風に意識化してきたかということに対する認識である。
はじめはものをそこに並べて直接どちらが長いかを比較しただろうという。これを直接比較の段階という。
ところが動かせるものならそれも可能だが、そうできないものが普通である。それで何か動かせるもの(例えば縄とか紐)で一つのものの長さを測り、それで間接に長さを比べる段階がある。これを間接比較の段階という。
その後、手の長さとかを単位として長さを測定した段階がある。これを個別単位の段階という。そのうちに中央集権国家ができたりして、例えば王様が両手を広げてその右手の先から、左手の先までを長さの単位としたという段階に至る。この段階を普遍単位の段階という。
この単位導入の4段階を誰がいい出したのかは知らないが、私は数学者の遠山啓が言い出したことだろうと思っている。そういういえば、そういうことを彼の「数学入門」(岩波新書)に書いていたと思う。ところが遠山の処女作ともいうべき「無限と連続」」(岩波新書)にその萌芽とも言える、記述があることに最近気がついた。
最近ではこういう測定される量の単位は国際的な取り決めで決められる。西條敏美先生の著書「単位の成り立ち」(恒星社厚生閣)などはこの普遍単位の事典とでもいうべきものである。
(2012.11.7付記) 鶴見俊輔著作集の月報でこの著作集の編集者だかが書いていた。あるとき鶴見宅を訪れたら、突然そこにあった、座卓の長さを手のひらを拡げて測るということを実演されて、プラグマティズムとはこんなことだと言われたとか。
それを読んで思ったのは単位導入の段階でいえば、上に述べたことで言えば、第三段階の個別単位で測定をするということである。それを指摘しておきたいと前々から思っていた。
ただ、個別単位による測定であろうとなかろうと鶴見さんのプラグマティズムの説明は編集者に十分伝わったであろうと思われる。その鶴見さんからの直接指導に感銘を受けてある編集者がその経験を月報に書かれた。