「喧嘩はしましたか。喧嘩しないと仲良くなれませんよ」と日中平和条約の締結のために中国を訪れた当時の田中角栄首相に毛沢東が会見で言った言葉だという。これは今朝の朝日新聞の記事からの引用である。
この記事の著者は、毀誉褒貶のある毛だが、こういった言を知るとやはりなかなかの人物であったろうと判断している。確かに現代中国では功6分、罪4分と評価されているが、毛の功績をなかったものにするという話はない。
このブログで以前に書いたことだが、数学者の遠山 啓が訪中団の一員として訪中して、毛との会見で彼にあったときの印象を書いているが、彼は毛はなんだか陰険に見えたと書いている。だから、遠山には毛の印象はよくない。
武谷三男は訪中することはなかったが、その著書の中で毛の有名な著書「実践論」「矛盾論」についてあまりに教訓的過ぎると書いている。しかし、なにかそれ以前の書か論文について褒めているのを読んだことがある。
その書か論文は私は見たことがないのだが、武谷は毛が考えるようにそんなにうまくは行かないだろうと予想をしていたが、その通りになってびっくりしたという風なことが書いてあった。
現代中国の専門家である、矢吹晋さんの書を読んで、最後の文化革命は毛の権力闘争の様相が強く、あまり褒められたことではなかったというか害が大きかったという歴史評価を知った。 多分そのことは正しいだろう。
ただ、学生時代に岩波文庫で毛の「実践論」「矛盾論」を読んで学ぶことが多かったことを覚えている。毛は実践論の方が、矛盾論よりも重要だと訪中したアメリカのジャーナリストのスノー氏に語っていた。
実践論の方は日本には武谷の三段階論という方法が知られているので、あまり感銘は受けなかったが、矛盾論はそのいろいろな矛盾のもつ性質とかその克服のしかたとかは大いに参考になった。
私はこういった矛盾のもついろいろな側面を述べた書を読んだことがない。誰かの哲学者の著書の中にそういうものがあるのかも知れないが、私には唯一の書であった。