宮崎信行の「新・夕刊フジ」

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

「河村劇場は自民党にも深刻な事態」「共通の危機意識が必要」岡田幹事長

2011年02月08日 17時39分55秒 | 岡田克也、旅の途中

[写真]笑顔で衆院を去った河村たかしさん(野党・民主党)。2008年通常国会。後ろは、前原誠司外相、岡田克也前外相、高木義明文科相ら(=与党になってからの肩書き)、毎日新聞さんの記事から拝借した写真です。

 民主党幹事長の岡田克也さんの2011年2月7日の記者会見では、名古屋市長選(出直し)・愛知県知事選(任期満了)・名古屋市議会解散の住民投票(リコール署名)のトリプル選挙で、河村たかしさんのチームが圧勝した「河村劇場」について、質問が集中しました。

 冒頭自ら、「申し訳ない」と謝罪。敗因として、(1)有権者の議会を見る目への問題提起(2)政治への失望感・閉塞感--などを挙げました。自らが民主党代表・ネクスト総理として大惨敗し多くの仲間を討ち死にさせてしまった2005年9月11日の「郵政選挙・小泉劇場」と同じワンイシュー(シングルイッシュー)の選挙だったとみずから発言し、「私はワンイシューは良くないと思っている」と述べました。これは、今後の政治人生で、選挙の構図を設定できる立場にあったとしても、「劇場型選挙」はしない。また、政権交代可能な政治を根付かせるために、国政選は、「与党の腐り方による政権交代の必要性および野党(政権準備党)の政策・人材の備え」を問う選挙システム・政治文化をつくりあげたい考えを示したものだ、と私は受け取りました。

 私が質問で、「増税」・「新税」に限らず、住民税「減税」も自治体の課税自主権であり、河村さんは国会議員時代によく勉強していたと指摘すると、岡田さんは「地方自治として、課税自主権をやる首長が出てきて欲しい」としましたが、岡田さんは「今減税をやる態勢なのか(疑問であり減税すべきではない)」と財政規律派らしい答え。それと、(河村減税は)多くの人にとっては(控除の関係で)減税になっていないということも申し上げたい」としました。ただ、私は大都市・名古屋から減税をきっかけに地方議会改革まで持っていくという大実験はもう余裕のある自治体がどんどん減っていく中で、パイロット自治体としてやってもいいと思うし、国政与党の幹事長が名古屋財政にそこまで言及すべきなのかというところで、珍しく、岡田さんと筆者の間でミゾを感じた記者会見でした。 

 2年前の名古屋市長選とは違い、民主党は今や国政与党です。国政与党の国会議員・秘書が東京から続々と名古屋に降り立ちし、幹事長が「名古屋がダメになる」とまで演説したのは、自民党の小沢一郎幹事長による「磯村尚徳候補擁立(対抗馬は鈴木俊一3選知事)」、鈴木都知事引退後の「7代の総理に仕えた官房副長官・石原信雄候補」、そして、青島幸男都知事引退後の「国際連合事務次長・明石康候補」と、「国政与党が下部組織の東京都に候補者(天下り候補)を送り込むという構図の選挙」で、私自身東京っ子として反感を覚えました。そして、現実に「天下り候補」は大差で落選しました。岡田さんが小沢さんに似てきているような気がして心配です。来月の出直し名古屋市議会議員選挙の結果までみないと「河村劇場」の判断はできませんが、岡田さんには反省して欲しいと考えます。

 岡田さんは「名古屋の選挙は自民党にとっても深刻な事態で、共通の危機意識が必要だ」としました。2月7日の衆・予算委員会では公明党幹事長代理の高木陽介さんが、「民主党の人は優秀だけど、現場を知らないんですよ」として雪害対策を批判しました。私が注目しているある民主党議員が「地元の自治体幹部と、臨時地方交付税(臨交)をすばやく措置することで一致しました」とツイート。一方で違う媒体で、「雪かきをする公明党地方議員の写真」を私は見ました。この辺にも民主党が抱える問題点を感じます。私はむしろ、民主党は国会議員が多い逆三角形政党のままでいいようにも、漠然とですが、感じます。

 河村たかしさんが一夜明けた月曜朝のNHKニュースに全国生出演しました。


[画像]再選を決めた河村たかしさん(左) 翌朝のNHKニュース「おはよう日本」の全国ネットで阿部渉アナウンサーの質問に答える(NHKさん映像からキャプチャー)

 この中で、地域政党「減税日本」とは何かと問われた河村さんは「(国政では)昔から政党というのはどっちが勝つかの団体戦なんです。昔なら、新進党自民党か。今なら民主党自民党か。(地方議会は)違うんですよ。(海外のニュース映像などで)よく見るでしょう、夜議会とかやって。ボランティア型にしていく。早く変わっていって、いろいろな人が入って。ボランティアって言ったって、(職業議員よりも)そっちの方が(地域や職能の)専門家なんですよ。それを「減税日本」という格好でやっていこうと思うんです」と話しました。

 この河村発言、まずは昔は「新進党か自民党」と新進党の名前を出してくれたのがうれしい。河村さんは市長選に出る1年前ぐらいでも、「僕は今でも新進党議員だと思っている」と話していました。小沢一郎氏による新進党解党後、河村さんらしいといえばらしいのですが、世渡りに失敗し、自由党に行ってしまいました。が、小沢氏の「保保連合構想」は二大政党制から遠のくとして、離党し、無所属を経て、民主党にちょっとだけ遅れて馳せ参じました。だから、新進党が解党していなければ、河村さんは「ハマコー的存在」として活躍してくれていただろうと残念です。

 「おは日」で河村さんは「日本の(国・地方)政治は言っちゃ悪いけど、八百長みたいなもので、それを本気に戻す(きっかけが)減税なんです」と語りました。一方で、岡田さんは「減税をするような財政状態にない」と反論しているわけですが、これは、ある意味、名古屋と四日市の商家のお坊ちゃん同士のけんかに思います。岡田さんは地方自治を知らないのではないか。北九州市長に再選した北橋健治さんに少し教えてもらった方がいいかもしれません。北澤俊美さんは県議5期ですが、今でも国政同期の釘宮磐・大分市長とよく食事をしているそうで、先日は総理官邸で菅総理との3者面談も首相動静で報じられていました。

 私は岡田会見で、新進党の仲間で、首長に転出していった達増拓也さん(次期知事選の推薦は常幹で決定済み)、松沢成文さん、上田清司さんに国会に帰ってきて、与党を助けて欲しいと思いませんか?と聞いたら次のような答えが返ってきました。「力を貸してもらいたいという気持ちになることもある」。

河村氏完勝、既成政党に衝撃…首長新党は追い風 : 地方選 : 選挙 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 減税と既成政党への批判を掲げた河村たかし・前名古屋市長の再選、大村秀章・前自民党衆院議員の愛知県知事の初当選は、4月の統一地方選を前に各党にショックを与えた。

 首長が地域政党をつくって議会の多数派形成を狙う「首長新党」の手法も、他の地域で勢いづく可能性がある。

 ◆圧勝の図式

 市長選の河村氏と知事選の大村氏は、「日本初の市民税、県民税の10%減税」を共通公約に掲げて「計600億円の減税で2000億円の経済効果」と主張。これで選挙戦を終始リードした。

 自分と対立する市議会を解散し、自らの支持者を議員に送り込んで議会を掌握したい河村氏。描いたシナリオは、知事選で同じ減税を掲げる候補を担ぎ、自らも任期途中で辞職して出直し市長選に出馬、タッグを組んで有権者の支持を得る――というものだった。この選挙と同時に行った住民投票で市議会も解散となり、有権者の喝采を引き出す戦術が的中した。

 名古屋市は赤字地方債(臨時財政対策債)を400億円発行している。このため、対立候補は「恒久減税を行う財源などない」と批判した。だが、減税の主張と一緒に展開した市議の「厚遇批判」も有権者の関心を集め、これも大きな勝因になったとみられる。

 ◆首長新党

 もう一つの戦術が「首長新党」という手法だ。河村氏は市長選で自ら率いる政党「減税日本」公認で出馬し、大村氏も知事選直前に「日本一愛知の会」を発足させた。これで支持率が低迷する民主党など既成政党への批判を演出した。

 今回の結果に勢いづくのが、橋下徹・大阪府知事が代表を務める「大阪維新の会」で、「既成政党の機能不全が証明された。次は大阪だ」(浅田均政調会長=府議)という。同会は自民・民主両党を離党した府議や大阪・堺両市議らをメンバーに橋下知事の「大阪都構想」の実現が旗印。統一地方選で行う府議選、大阪・堺両市議選で過半数獲得を目指す。

2011年2月6日22時13分  読売新聞)
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