【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

ナント!参院決算委員会が「平成20年度(!)決算」をようやく(平成22年2月)承認 

2011年02月14日 20時49分57秒 | 第177常会(2011年1月)大震災・3党合意

(未定稿)

[参・決算委員会 2011-2-14(月)]

 参院決算委員会は14日、民主党、自民党、公明党、みんなの党、統一会派「新党改革・たちあげれ日本」の賛成多数で、「平成20年度決算」を承認(是認)しました。また、委員会としての「政府に対する警告決議」を、決算に反対した日本共産党、社民党も含めた全会一致で可決しました。念のため、もう一度書きますが、「平成20年度(2008年度)決算」です。2008年度といえば、福田内閣が編成した予算案で、道路特定財源、ガソリン値下げ隊の揮発油税の1ヶ月間失効、そしてリーマン・ショックによる麻生内閣の補正、そして「定額給付金」補正があった、あれが平成20年度予算・決算です。それが、きょう委員会を通過し、これから本会議に上がります。なお、衆院側では予算委員が「平成23年度予算案」の地方公聴会のため、出張していたので、野田佳彦財務大臣ら9閣僚が答弁席に座りました。

 遅い!!

 大企業でも零細企業でも、こんなに遅れたら、融資も受けられないし、税務署に叱られる。自治体だって、前年度決算を議会が承認して、翌年度決算を首長が編成して、提出します。

 質問に立った、第22回参院選で初当選した自民党の若林健太さんは、「トヨタ自動車は世界に広がる決算を(3月31日にしめて)5月上旬に出している」「東京都は複式簿記・発生主義会計を平成18年から取り入れて、3月決算を9月に出している」として、財務省や会計検査院による決算書の提出が遅いと批判しました。若林さんの質問を受けた・政府特別参考人の西村正紀・会計検査院長は「数字のチャックをもれなくする計数処理と全国出張による実地調査で、翌年6月までかかり、(総理に手交する)報告書をまとめるのは10月ころになります」と答弁しました。

 これについて、散会の1時間後に開かれた民主党の定例幹事長会見で岡田克也さんは、「決算の細かい数字が必ずしも特定されなくても、概算で(決算委員会の)議論でやってもいいのではないか」との新方式を発案しました。これに先立つ参院委員会質疑の中で若林さんも検査院に対して、「今まで会計検査院の計数チェックの結果、数字が大きく違ったことがあるのか?」と質問し、西村政府特別参考人は、「特にない」と答えました。若林さんは「現場とのチェックは期中から初めて、期中と期末のメリハリある検査が必要ではないか」と提案しました。

 若林健太さんは、「ミスターリリーフ」こと若林正俊元農相の後継者として、第22回参院選長野選挙区に出馬。定数2のなか、293,539票を獲得し、防衛大臣の北澤俊美さんを「3、512票・得票率0・3%差」でかわしてトップ当選。俊美さんは当選4回目にして初めてトップ当選を奪われました。NHKの当確は開票開始1時間44分後という大苦戦でした。で、その若林さんを直に見たのはきょうが初めてでしたが、まさに「敵ながらアッパレ!」の質問でした。

 岡田幹事長は「参院が決算審査に熱心に取り組んでいることに敬意を表する」と述べましたが、これに先立つ若林さんの質問でも、「財政法では、決算書の提出時期を、通常国会の冒頭としているが、参議院(の先輩たち)の取り組みで、(およそその2ヶ月前の)前年11月20日ごろとなっている」として、野田財務相に財政法の改正を要求しましたが、野田さんは「官庁会計システムなど改善したシステムを運用しているが、全府省をまたぐ格好となると、現時点では難しい」として、前に進むものの、法改正は拒否しました。

 平成20年度決算審査は例年より1年近くスケジュールがずれ込みましたが、討論の中で、社民党副党首の又市征治さんは、「平成20年度予算は自公政権が編成して、平成20年度決算は民国政権が提出した。与野党を越えて国会の審議をして、(平成23年度)予算に反映することができなかった」と批判しました。又市さんは初当選以来、参院決算委員をつとめているそうです。そのうえで、次の決算審査(すでに平成21年度決算書は昨年11月に全国会議員に配布済み)について、「平成21年度予算は自公政権が編成して、政権交代で民国政権が執行停止や補正したものになる」として、さらに難しい審査になるので、参院として各会派が協力し合うべきだと主張しました。なお、岡田さんは記者会見で「決算書が出てきたときには(総選挙で)政権が変わっているということがなるべくないようにスピードアップしたい」と述べました。

 ちなみに、参院決算委員会と岡田さんの定例会見を並べて書いていますが、岡田幹事長は民主党役員会で「小沢一郎議員の党員資格停止を常任幹事会に発議する」という仕事をしていましたので、参院決算委員会を見ていたということはないでしょうが、私が質問したら、このような答えをもらえました。分かっているのに、なかなか前に進まない国会改革。

 討論の中で、自民党の岡田直樹理事(森喜朗首相の親戚)は、「100年に1度の危機を言えるリーマン・ショック後の2度にわたる補正は、当時の(麻生自公)政府のタイムリーな政策であり、これがなければ、今の経済状態はもっと悲惨なものになっていた」として決算承認に賛成しました。そのうえで、委員長と理事が作成した「政府に対する警告決議案」について、「(府省、自治体、公益法人などに)不適正支出があり、政府に対して対応を求めるために、警告決議案に賛成する」として、「最後に昨年の通常国会で承認する手はずが、臨時国会を越え、ついには(翌年の)通常国会まで来てしまった。政府と与党に反省を求める」として、役人と民主党に責任を転嫁するような発言をしました。

 みんなの党の柴田巧さんは景気回復については、「我が党の代表である当時の渡辺喜美・金融担当大臣の対応」、行政改革については「我が党の代表である渡辺喜美・行革担当大臣の対応」が良かったので、決算に賛成するという趣旨の発言をしていました。

 このように非常に原稿にしずらい、切り取りにくい審議なので、あまり新聞記事にならないと思います。

 なので、私も好き勝手に書きます。

 ◇

 きょうの決算委員会は、直接国会に出向いて傍聴しましたが、「決算とは確認ということだな」と思いました。

 というのは、私はこのブログの中で、別段民主党マニフェストに書いていない自論を展開してきました。国の出先機関(地方支分局)の統廃合について、「まずはとりまとめ役の総務省が総務省行政評価局を本省・出先機関とも全廃して、身を切って、他府省に出先機関の廃止を迫るべきだ」。その理由は「なぜなら、きょう突然なくなっても困らない唯一の出先機関は、管区行政評価局だからだ」「本省と含めて1250人の雇用を確保(他部署へ異動)すれば誰も困らない」と書いてきました。これはきょうの審議を聞いても、民主党も、自民党も、みんなの党も、違う方向性の話をしている訳で、私の政策はまったくの「河村たかしさん状態」なんだけど、私はきょうの決算審査を聞いて、自分の論に自信を持ちました。

 みんなの党の柴田さんの質問では、「まず総務大臣に聞きたいのは、消えた年金の解決にあたる年金確認地方第三者委員会は管区行政評価局にあり、本来の業務を減らして、消えた年金の確認業務にとられている」として、総務大臣から他の大臣への勧告が、柴田さんによると年間12件から年間6件に減っているとのこと。そして、総務庁行政監察局が総務省行政評価局に衣替えして10年経つけど、片山善博・総務相の答弁では「行政評価局は、事業仕分けの後、行政刷新会議に触発されて、ミッション(使命感)に目覚めた。年金確認の仕事が終われば、行政評価や行政相談の仕事に早く戻りたいので、(年金確認の仕事が早く終わるよう)厚労省と密に行動したい」と述べました。私は総務大臣の勧告が半減したことが各府省の金遣いが荒くなった理由とは思えないし、事業仕分けに触発されて、ミッションに目覚めたとすれば、おそらくこの1年間の話である。どう考えても、この局はいらないだろうと思う。決算委員会で自分のアイディアの方向性は正しいのだろうと確認することが出来た。ちなみに、上で触れた西村正紀・会計検査院長は、略歴を見てもらえば一目瞭然で、総務庁で「中部管区行政監察局長」も務めたバリバリの総務庁行政監察局(現在は総務省行政評価局)のキャリア官僚なのです。

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 ヒジョーに様々な切り口があるので、また衆参の本会議のときにでも、きょうの傍聴ノートから何か書くかも知れませんが、やはり党派・当選回数を問わず、すべての国会議員に反省して欲しい出来事です。とはいえ、政権交代時の決算委員会の運営については、参院事務局が諸外国の事例を調べたり、かなりの苦労があったやに聞きます。お疲れ様でした。

 きょうの内閣府のGDP速報によると、日本は世界第3位に転落しました。トヨタ自動車が全世界の連結決算を1ヶ月半後に出しているのに、日本の国会はスピードが遅すぎます。とはいえ、なかなか味わいある充実した審議を聞けて、満足しました。決算委員会というのはなかなか面白いですよ。岡田さんは「政府も努力して早く・・・決算を出したときには政権が(自民党に)代わっているということで意味がありませんので・・・早く出す工夫が必要だ」と述べました。“事業仕分け”の要素も決算審議に取り組んでいけば、予算委(抽象的)よりも決算委(具象的)が花形ということになる可能性もあると考えます。

(このエントリーの中の、質問・答弁の正確な表現は、参議院インターネット中継や、後日できあがる会議録をご参照下さい)