[写真]厚労副大臣の民主党・小宮山洋子さん
【衆・予算委員会 一般的質疑 2011-2-10など】
2月7日週は、子ども手当についてが最大の論点となりました。
月曜日(7日)の一般的質疑で、公明党の竹内譲さんが、「なぜマニフェストの子ども手当の1人あたりの月額が1万6000円から2万6000円に引き上げられたのか?」と問題提起しました。
岡田代表時代の04参院選マニフェスト(自民党を49年目にして改選第2党に転落させる大勝)、05衆院選マニフェスト(民主党結党以来初の議席減の大敗)では「子ども手当は月額1万6000円」だったのに、小沢代表になった07参院選マニフェスト(非改選とあわせて第1党に躍進)、鳩山代表が引き継いだ09衆院選マニフェストでは「月額2万6000円」になっています。
これについて、公明党理事の富田茂之さんが10日、「小沢代表のときに選挙目当てで、エイヤー!と1万円上げて2万6000円になったんじゃないのか、と私はずっと思っていました」と発言しました。この富田さんの発言について、岡田克也幹事長の その日の夕方の定例記者会見で私が質問したところ、「個別の議員の発言についてはコメントしない」とし、2万6000円になった経緯については「(2005年9月~2009年5月は役員でなかったので)承知していない」と答えました。
国会審議では、質問者が答弁者を指名できます。これは野党の作戦でしょうが、子ども手当については、7人ほどの閣僚(細川厚労相、菅首相、野田財務相、玄葉国家戦略相(兼)民主党政調会長、枝野官房長官、与謝野・税と社会保障の一体改革大臣、片山総務相)らに質問をぶつけるので、答弁が混乱しています。自民党の加藤勝信さんが9日、「これじゃあ質問できません」と中井洽・予算委員長に政府統一見解の提出を要求すると、「あす朝の理事会で政府に提出させます」と中井さんが、その場で職権を発動するほどのグチャグチャな状態です。中井さんの対応は良かった、と私は考えます。
政府統一見解が出た後の、10日の質疑で富田さんは、「民主党『子ども手当』政策の変遷」と題する資料を配付しました。当ブログは独自にこのペーパーを入手しました。これをみると、1998年6月5日の98参院選選挙公約の「言及なし」から始まり、10マニフェストまでの12年間にわたって、マニフェスト・選挙公約・インデックスの変化を示しています。これは公明党は「マニフェストは破綻しているので、撤回して、予算案を修正しろ」という方向に政局を持っていこうという考えがあると思われます。仮に撤回したら、公明党はどうしてくれるのでしょうか?
先に、この問題のキーパーソンはだれかということを書きます。それは、野党・民主党税調で頑張ってきた小宮山洋子さん(現厚労副大臣)、それと“子育て費用1人月2万6000円”の積算をしたとされるママさん議員で現文科政務官の林久美子さんということになると思います。ところで、蛇足ですが、自民党の女性衆院議員が、同期当選同い年の女性議員(自民党→新進党→自民党)と仲が悪く衆院本会議場でののしりあったことは有名です。うってかわって、民主党では女性議員同士は仲良し。プライベートで海外旅行にでかけるほどです。たとえば、衆院本会議場では、田名部匡代さん(現農水政務官)と菊田真紀子さん(現外務政務官)が隣席で、そのおしゃべりの輪に郡和子さんや、小宮山洋子さんが加わり、衆議院議長が入場してくるとあわてて自席に戻るという光景はよく見かけます。参院本会議場では林久美子さんと蓮舫さん(現・行政刷新相)が隣席で、おしゃべりしながら、参議院議長が入ってくると背筋を伸ばすという光景をたびたび見ました。
ですから、小宮山厚労副大臣も、1万円引き上げの経緯について「何ででしょうね」とTVカメラに答えるのではなく、勇気ある告発をしていただきたい。正直、ホントウのところは分からないのでしょうが、お願いだから、推論で良いから、「おそらく小沢さんが選挙に勝つために財源を考えずに1万円上げたのではないでしょうか」と発言してもらいたいです。ところでキーパーソンのはずなのに、キーパーソンでない人。これは藤井裕久さん(現官房副長官)。税調の柱ですが、05郵政選挙から07参院選の直前まで、落選していて、衆院にいませんでした。ですから、この間の経緯が分からない。この「1万円増額の経緯」はホントウに誰も知らないというのが実情でしょう。
富田さんの質問に戻ります。富田さんは、小宮山厚労副大臣が野党時代に、配偶者控除と扶養控除の廃止で1万6000円にする、としており、3兆円の財源が必要だと05マニフェストで言っている。なぜ2万6000円が出てきたのか?と玄葉さんに聞きましたが、玄葉さんは「分からない」と答弁。富田さんは「玄葉さんらしくない」としながら、冒頭に引用したとおり、「私は小沢代表のときに選挙目当てでエイヤーっと1万円上げて2万6000円になったんじゃないのかと私は思っていました」。
さらに富田さんは、政権交代で発足した政府税調の「第100回会合の議事録」というものを持ち出します。ホントウに与党になると徹底的に野党に調べ上がられるんですね。そのなかで、小宮山厚労副大臣が「最初は、控除から手当へ、という基本理念のもと、男女共同参画と子育て支援の目的から1万6000円にした」という趣旨を述べていると指摘しました。これは、配偶者控除を廃し「専業主婦が原則」から「共働きが原則」という家族観に税制を変えるものです。ただ、「共働きで子育て」はタイヘンなので、その分を手当てする。また、控除を廃止すると、高額所得者で著しい不公平や税額の変化が起きるのを防ぐ。さらには、控除を廃止するだけでは、非課税(低所得)の世帯にはメリットがないので、手当ということで現金をつぎ込む。これに加えて、財務省・国税庁が悲願とする納税者番号制にも近づきます。非常によく出来た政策だと思います。
[画像]05マニフェスト(画像をクリックすると大きくなります)
[画像]07マニフェスト(画像をクリックすると大きくなります)
民主党の過去のマニフェストはこちらをクリックするとご覧になれます(民主党ホームページ)
第21回参院選で勝って、ねじれ国会になり、「法案の嵐作戦」(参院で民主党の議員立法を可決させ、衆院に送る作戦)をやっていたころの民主党ニュースに次のような記述があります。
[2007年12月26日付の民主党ニュースから引用はじめ]
http://www.dpj.or.jp/news/?num=12437
民主党は26日、中学校修了までの子どもに、一人当たり月額2万6000円の「子ども手当」の支給を実現する「子ども手当法案」を参議院に提出した。法案提出には直嶋正行政調会長はじめ、法案発議者の神本美恵子『次の内閣』ネクスト子ども・男女共同参画担当大臣、島田智哉子、羽田雄一郎、林久美子、小林正夫、大河原雅子各議員が臨席。(略)
神本ネクスト大臣は月額2万6000円に設定した根拠について、各種家計調査データ等をもとに算出したもので、中学校修了までの子どもにとって最低限必要な基礎的経費であると説明。林議員は「民主党は子どもが生まれてから社会に出ていくまで一貫して育ちを支えていこうというスタンスに立っている」と表明し、中学校修了までは同法案で支え、その後は公立高校の無料化、奨学金制度の拡充など、学びたいと思う子どもたちをサポートしていく制度を整えていく用意があることを明らかにした。
[引用おわり]
これを読むと、この段階で、「控除から手当へ&ジェンダーフリー」の子ども手当1万6000円という1階部分におんぶに抱っこするように「子どもは社会の共有財産」という中2階が乗り、さらに屋上屋を架すように、「高校無償化」が盛り込まれたように感じます。この後、09マニフェストでは「高校無償化法案」は独立した政策となります。そして政権交代して、文科省が高校無償化を予算にし、子ども手当は中2階があるまま厚労省が予算化したことになります。そして、中2階を財務省が税外収入で支えている格好になります。
例えば、私のブログを振り返ってみても、2007年10月17日付のエントリーで次のように書いていました。
[当ブログ内の過去のエントリーから引用はじめ]
民主党の怒濤の法案ラッシュ。今度は参院選マニフェスト「3つの約束」の2つめ、「子ども手当」です。(略)
民主党は「控除から手当へ」、「コンクリートから人づくりへ資源配分」を基本方針に、確定申告での(子ども向けの)扶養控除を廃止することなどで財源を捻出する考えです。ただ、それだけでは財源は足りませんから、補助金・交付金の削減なども進める方針です。
今までは確定申告で、税務署に申告して、税金から引いてもらう方式でしたが、手っ取り早い現金給付に変更しようというものです。(略)民主党の少子化対策の目玉ですが、参院での審議では自民党から財源を同手当するのかツッコまれるでしょう。(後略)
[引用おわり]
筆者(宮崎信行)自身が読みかえしてみても「それだけでは財源は足りません」と控除廃止だけでは財源不足だということについて、恐い物知らずの状態だったことに驚かされます。そして、それを「補助金・交付金の削減」などのムダづかい削減で何とかなると、たかをくくっていた節があります。また、「控除から手当へ」の税制改正と、「少子化対策」の両面の政策だということは理解していながら、2万6000円のうち、それぞれに、いくら、いくら、回るのか、かなりいい加減に考えていた感じがします。また、控除や財源について、国と自治体の分担については、どうやらまったく考えていなかったようです。
こうやって少しずつ骨折してきて、ついには与謝野さんが「財源の一部に消費税を充てる」、枝野さんが「将来的には全額国費負担もあり得る」と答弁する始末で、大混乱。また、私は今週初めて気付いたのですが、ことしから恒久法案になるものだとばかり思っていたら、内閣が1月28日に国会に提出したのは「平成二十三年度における子ども手当の支給等に関する法律案」(177閣法9号)であって、またしても1年間の時限立法だったとうことに気付いてがっかりしました。
子ども手当の平成23年度の国予算は2・2兆円ほどですが、満額支給となると6兆円ぐらいになりますから、国の税収のおよそ1・5割が自動的に子ども手当に流れることになります。最低保障年金は全額消費税増税分で賄うにしても、それでも財政の硬直化は著しく、経済政策での自由度は大きく損なわれます。そう考えると、小沢07マニフェスト、小鳩09マニフェストはかなりムチャクチャで、「詐欺フェスト」だったと、今になって気付きました。とはいえ、民主党は第45回衆院選を「2万6000円」で闘ってしまい、それは「国民からの命令書」(初代厚労大臣の長妻昭さん)だということで、第1次与党期に入ったわけです。このマニフェストをを第46回総選挙前に修正できるのは至難のわざ。小沢さんが丸坊主になって謝ってくれたらいいのに。小沢さんを切っても、マニフェストに残る小沢さんの亡霊。仮に小沢さんが死んでも、マニフェストにその亡霊が残ります。どうやら第1次与党期は、小沢さんの亡霊を最後まで引きずることになりそうです。
2007年夏の「1万円ドーンと上げて、選挙に圧勝」した逆転の夏を思い返しながら、先日の、東京新聞政治部長、高田昌也さんが講演で何度も聞いた言葉を私もつぶやきたくなります。
「民由合併をしなくても、政権交代はできた」
◇
ところで、過去のマニフェストをみましたが、こんな自民党のホームページを見つけ、爆笑してしまいました第22回参院選で山梨選挙区で惜敗した自民党の宮川典子さんのホームページです。
[画像]自民党(山梨)の宮川典子さんのホームページ「日本をあきらめない。」
日本をあきらめない。
5年ちょっと前に、どこかで聞いたキャッチコピー。電通の残間さんが酷評していましたが。やはり時代を先取り過ぎたのでしょうか、私はそうは思いませんが。「国家百年の計」で選挙は勝てないのでしょうか。まあ、予算は通りますから大丈夫でしょう。予算関連法案も、2ヶ月間のつなぎ法案で、統一地方選後のゴールデンウィーク明けに結論を先延ばしする手もあります。しかし、統一選後は、ホントウに公明党に助けてほしいと思います。マニフェスト撤回、暫定マニフェストによる民公連立による内閣で、来年あたりに解散という訳にはいかないでしょうか。新進党の仲間じゃないですか~。散々新進党をいじめたくせにいつのまにか連立に参加している亀井静香さんなんか小沢と一緒に追い出して、民公連立やりましょうよ。
[写真]mixi の「岡田克也トピックス」の「にや」さん撮影の写真をお借りしました。
まあ、いつかは分かってくれます。長生きが必要です。青山社中の朝比奈一郎さんのツイーとによると、孫文は辛亥革命の前に8回失敗していて、リンカーンは8回落選しているとのこと。朝比奈さんは「絶対的な前向き・楽天志向こそが世界を変える」。
ねばり強く、辛抱強く、がんばりましょう。まっすぐに、ひたむきに。
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