宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

◎連帯保証人廃止の民法改正法案、やはり自民党巻き返しのもよう 29日の法制審「大綱」素案で骨抜きへ【追記有】

2014年07月09日 05時40分35秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 アパートを借りるときではなく、銀行からお金を借りること、つまり、新規融資に必要な「連帯保証人」を廃止する「民法(明治29年4月27日法律89号)の第3編」改正法案の策定作業で、やはり自民党・公明党から骨抜きの動きが出ているようです。

 来年の第188回通常国会(2015年1月)で債権法(民法)改正が議題になることは、すでに与野党間で認識が共有されています。

 9日付日経新聞は、「法定利率、3年ごと見直し 民法改正案固まる」の見出しで、3週間後の2014年7月29日(火)に法制審議会民法部会がまとめる「改正法律案の要綱原案」が「明らかになった」としています。

 一連の記事の中で、3面の関連記事の中に「連帯保証人制度に関しては、経営者の家族らが安易に保証人になって高額の借金を背負い、生活破綻に追い込まれる事態が頻発していた。改正原案では家族らの意思を示す公正証書の作成を義務付けるなど連帯保証人になる条件を厳しくする」「今は幅広く認めている経営者以外の保証人を、引き受ける本人の自発的な意思を確認することを条件にする」と書かれています。

 よく日経新聞には誤報が多いと言われ、その通りだと思いますが、日経新聞はステークホルダーが世論誘導するために使われることが多く、実はある程度分かっている人には、かえってそれが一つの情報になります。

 このような記事になっている以上は、29日に決まる「原案」のそのまた「原案」に、「連帯保証人は自発的な意思を確認する」というような文言が入っているとみて、間違いないでしょう。 すなわち、連帯保証人制度を温存させるという骨抜きがなされているようです。

 なお、新規創業企業への融資の受ける際に、代表取締役本人が個人として保証人になるのはある意味当たり前だし、そうでないと、十分な金額、満足いく金利を勝ち取れないでしょう。しかし、連帯保証人は高度に発展した江戸経済の「手形」という決済慣行が明治維新後も残っていることに由来する日本だけの制度、ガラパゴスです。金融消費取引においてまったく不要だし、連帯保証人をとらないと融資を実行できない金融機関は、2017年前後以降と予想される定期預金減少時代でつぶれるでしょう。

 第183通常国会の2013年6月12日(木)の参議院本会議では、法人名と代表者本人以外の連帯保証人の効力を廃する民法改正案自民党と公明党が反対しましたが、民主党などの賛成多数で可決しています。法案可決という参議院の意思を、その39日後の第23回参議院議員通常選挙で、自民党と公明党が過半数を得たから、選挙で勝ったから、の一言で、無かったことにしてよいのでしょうか。

 民主党のネクスト法相らには、不思議と銀行業界からのロビー活動はないようです。おそらく、法制審に入っている委員、学者、弁護士、法務省民事局職員、自民党政務調査会法務部会(大塚拓部会長)らが直接働きかけを受けているのでしょう。

 最近は電車内でもメガバンクの隠れ蓑である高利貸しの広告がめっきり増えています。さらに、上限金利を撤廃する金融業法改正法案が提出されるという観測もあります。

 近代国家、法治国家、民主政治の看板にかかわる事態です。

 あまり分かりませんが、自民党の山本有二さん、伊藤達也さん、柴山昌彦さんらも金融業界の意向で動いているように感じる場面がありました。

 今はまだ働きかけを受けていないでしょうが、民主党にも、金融業界のロビーイングに弱いように感じる議員がいます。維新の会幹事長に転じた小沢鋭仁さんら、不思議と、鳩山由紀夫グループ(政権交代を実現する会)に属している衆参議員が多いように感じます。その一人は、海江田万里代表です。その政治キャリアの長い期間、衆議院財務金融委員でした。海江田代表は腹をくくって、連帯保証人絶対廃止・骨抜き断固粉砕闘争の先頭に立たねばなりません。

 また、先の第186回通常国会の法務委質疑で、谷垣法相に対して、「民法債権編(債権法)抜本改正法案はあまりにも大きすぎるので、2、3本に分割してくれないか」との要望が出ています。

 それと、谷垣法相の内閣改造での続投。これはぜひ望みたいところです。

 場合によって、次期衆院選で勝負をつけてやれ、という感じもします。

 関連エントリー)2013年2月28日付 

◎「連帯保証人廃止」へ 民法改正法案、2015年国会提出へ 2009民主党マニフェスト実現へ

【追記 2017年7月21日午後2時】

 けっきょく、上記要綱を反映した法律が成立しました。
[逐次更新版]改正民法債権編(債権法)は平成29年6月2日法律44号公布、2020年6月2日午前0時までに施行

【追記終わり】