【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

お盆明け安保審議が再スタート、「アーミテージ」など米の下請けを隠せない答弁相次ぐ

2015年08月19日 17時49分20秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

【画像】安倍晋三首相(右、自民党総裁)と、リチャード・アーミテージ氏(中央)、ジョセフ・ナイ氏(左)の親密ぶりをパネルを使って分かりやすく説明する、山本太郎さん(質疑者席)、2015年8月19日、参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

【平成27年2015年8月19日(水)参議院わが国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】


 「2015日米防衛協力ガイドラインの国内実施の安保2法案」(189閣法72号、189閣法73号)のお盆明け審議がスタートしました。

 まず、私が一番興味を持っていたことで、中谷元さんが答弁しましたので、そこを抜き出します。

●中谷さん、有事でも平時でもなく、米艦防護ができるのが、「切れ目のない事態だ」と長時間審議で本音を漏らすーー大野元裕ネクスト防衛相に。

 民主党の大野元裕さんの質疑で、中谷元さんが連日の答弁のなかで、本音を漏らしたようです。

 大野さんは、自民党の高村副総裁が、尖閣諸島における海自、海保、警察の情報共有を盛り込んだ「グレーゾーン事態に対応する領域警備法案」(189衆法27号=現時点でも衆議院特別委で審議中の扱い)について、「防衛省と警察庁の100年戦争に火をつけることになる」と語ったとされる問題を取り上げ、「切れ目のない安保法制というなら、グレーゾーン事態を盛り込むべきだ」としました。

 中谷さんはここで、「アセット防護をすることになっているので、切れ目のない、シームレスな安保法制だと思う」と語りました。アセット防護は米艦防護ともいいます。平時からの米艦防護については、イラク戦争時のアメリカ国務副長官で、ジャパンハンドラーである、リチャード・アーミテージ氏が、「米艦が火だるまになっても日本自衛隊は何もしないのか。ショウ・ザ・フラッグ(旗を見せろ)」という趣旨の発言を、自民党小泉内閣にしたとも、していない、ともされます。

 アーミテージが求める米艦防護を、有事でも平時でもない「切れ目のない事態」と中谷さんが考えていることが、長時間の問答のうちに、本音として出たと私はみます。いったい、彼らにとっての「国益」とはどこの国の国益なのか。恥を知れ。

 民主党の枝野幸男幹事長は同日の定例記者会見で「対案を出すのかどうかよく聞かれるが、自民党に早く対案を出していただきたい」と語り、自民党政府が領域警備法案を出せと迫りました。

●アーミテージ・ナイ・リポートと安保法制は完全コピーだーー山本太郎さん、田中耕太郎長官とロックフェラー財団の関係を指摘。

 リチャード・アーミテージ氏と、元国防副長官補代理のハーバード大学教授、ジョセフ・ナイ氏については、山本太郎さんも次のように取り上げました。

 「今回の安保法制は第3次アーミテージ・ナイ・リポートそのままではないか」

 岸田外相「ご指摘の新ガイドラインと安保法制はご指摘の報告書を念頭につくったものではない」

 中谷防衛相「防衛省・自衛隊としては、幅広く情報を集めて分析しており、あくまでも国民の平和安全のためにつくっており、ナイリポートを念頭につくったものではないが、結果として重なっている部分もある」

 山本さんは「民間のシンクタンクであり、偶然の一致だ、というが、頻繁に来日し、総理も会談している」と切り返し、ナイ・リポートと安保法制について「完コピ(完全コピーだ)だ」、「いつ植民地をやめるんだ?今でしょ!」「アメリカのアメリカによるアメリカのための戦争法案だ」と印象に残るフレーズを連発しました。

 山本さんは、初代最高裁判所長官で国際法学者の田中耕太郎氏が、砂川事件判決の前にアメリカにほとんどの情報を流していたとし、「田中長官はロックフェラー財団の招待を受けたことがある」とし、ガソリンスタンドの「エッソ(esso)」やシカゴ大学を経営する、ユダヤ系石油メジャー、ロックフェラー財団から援助を受けていた可能性を指摘しました。

 ●小池文書は、統幕作成と認める――防衛相。

 不正常なままお盆入りすることになった、小池文書について、 中谷大臣が冒頭発言。

 中谷さんは「小池議員が示した、ガイドラインと平和安全法制と題する文書は、統合幕僚監部が内部部局と連絡して、5月14日の法案の閣議決定にともない、5月15日に私から法案の内容について、いっそう分析研究し、隊員に周知するよう指示したことを受けて作成したもので、資料の内容はガイドラインとあわせて法案の内容を説明したものです」とし、自らの指示にともない、「分析と研究」をしたものだとしました。

 質疑に立った小池晃さんは「今初めて私が示した文書が統幕の作成した本物だと認めた」と指摘し、「私も今はじめて聞いたので、質問するが、何かのプレゼンテーション用の文書ではないか」と問いました。中谷さんは「5月26日のテレビ会議で使う資料として作成しました。私はその前日の25日に毎週月曜日定例の大臣・事務次官・統合幕僚長の打ち合わせのときに、統幕長から翌日説明すると聞いていた。その際、文書は見ていない」としました。小池さんは「5月26日は衆議院本会議で審議入りした日だ」 としました。

 この後、防衛省運用企画局長が答弁し、5月26日には、各幕の、総監、司令官ら制服組のトップが集まっていたとしました。なお、揚げ足取りなのですが、このときに運用企画局長が「佐世保」のことを「させほ」と読んでいました。緊張していたのでしょうし、政府参考人ですから、揚げ足取りはこれ以上しませんが、とはいえ、運用企画局長なので、こういったところで内局と幕僚の軋轢が生じているような気もしました(この2文は冗談)。

 閑話休題。

 小池さんは「39ページに主要検討事項と書いてある」としましたが、中谷さんは「分析と研究のための主要検討事項だ」と答弁。小池さんは「午後の質疑でふたたび質問します」とし、お盆前に中断した少数会派の質疑になりました。

 民主党の藤田幸久さんは、首相の「ホルムズ海峡」答弁に対して、領域であるイランの駐日大使が6月8日に外務省局長に抗議し、局長級協議になっていたのに、7月10日に首相が「イランが機雷を敷設した段階において」「イランが停戦に向かっているときに」と答弁しており、外相、首相に連絡がついていなかった可能性を指摘しました。

 社民党の福島みずほさんが、南スーダンPKOのかけつけ警護について、副大統領が国に準じる組織(国準)になる可能性を問うと、中谷防衛相は「マーシャル副大統領が率いる反政府勢力が国に準じる組織になることは考えられない」とし、「その根拠は自衛隊などが南スーダンで収集した情報だ」としました。

【同日 参議院厚生労働委員会】

 「同一労働同一賃金推進法案」(189衆法22号)の参考人質疑がありました。

 弁護士の中野麻美参考人は、均等待遇と均衡待遇の違いについて、「均衡は、柔らかな均等、とも言われる。あるいはバランスをとる、とも言われる。格差の不合理性をカバーするもので、それもありかなと思う」とし、均等待遇という言葉にこだわらず、均衡待遇という言葉が条文に入ることは認められるのではないか、との趣旨の考えを示しました。「均等」と「均衡」をめぐって議論になっている、同委員会で、今後の与野党の修正協議に反映されるかもしれません。

【同日 衆議院情報監視審査会】

 インターネット中継はありませんでした。

このエントリー記事の本文は以上です。
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地方財政健全化法改正案、2016年通常国会提出の方向性 3セクへの短期貸付金追加か【追記有】

2015年08月19日 06時15分23秒 | 第190回通常国会(2016年前半)

【追記 2016年8月22日】

 この内容は、平成28年度当初予算関連の改正地方交付税法に盛り込まれ、ことし2016年3月31日に成立しました。下の内容の改正条項は、平成29年2017年4月1日施行で、総務省令などが整備されます。

【追記終わり】


 総務省が、平成28年2016年の通常国会(第190ないし191回国会)に、地方財政健全化法(平成19年6月22日法律94号)の改正法案を出したい意向を持っていることが分かりました。

 2015年8月19日付日経新聞が報じました。

 記事によると、自治体から第三セクターへの短期貸付金(1年未満)で、年度末に返済させて翌日に再び貸し付ける事例が、総務省の調べで37件あったようです。これは呆れ果てた話で、バランスシート(貸借対照表)上、長期貸付金(1年以上)にすべきものを、短期貸付金に。さらに言えば、「年度末ゼロ」にもできる話で、粉飾といっていいでしょう。

 これを網羅するために、3セクへの短期貸付金を含める考えがあるようです。ただし、これは牽制で、行政指導で改善する思惑があるようにも思えます。

 同法は、(1)実質赤字比率、(2)連結実質赤字比率、(3)実質公債費比率、(4)将来負担比率、そして、(5)早期健全化基準を定めています。これらを、自治体は決算後に計算し、議会と総務省に報告しなければならないとしています。

 自治体は、(1)から(4)までの数値のいずれかが、早期健全化基準を上回った場合は、財政再建団体として、財政再建計画を定めなければなりません。

 自治体の財政指標にはまず、財政力指数があり、これは、基準財政収入額を基準財政需要額で割った数値で、「1・0」を超えると財政力、とくに歳入力があることになります。

 次に、経常収支比率があり、一般財源(歳出が限定されていない歳入)のうち、人件費、公債費、扶助費(生活保護費含む)の三大義務的経費の占める割合を言います。100%を超える自治体もあります。この三大義務的経費は4月1日の時点で予算化されていないと自治体財政の存続にかかわるため、予算審議が滞っても、全会一致で暫定予算として成立させる格好となります。

 そして、地方財政健全化法が定める、実質公債費比率。これは公債の残高のみならず、一般会計・特別会計から繰り出す利払いなども含んだ金額を基準財政需要額で割った比率。

 これらに加えて3セクも含んだうえで、その日に全職員が退職したと仮定した退職金などを加えたのが、将来負担比率です。

 総務省のウェブサイトで見ることができます。 

 平成25年度2013年度決算ベースでみると次のようになります。なお、数字は適宜丸めます。

 財政健全化団体である、夕張市は750%で突出していますが、過去に比べると減ってきており、財政力指数がわずか0・2で、経常収支比率が120%なので、国の補助がなければ再生は絶対に不可能です。

 千葉市の将来負担比率は250%で、自治体順、政令市順、県内順のいずれよりも突出して高いです。ただ、これも推移をみると減ってきており、財政力指数は0・95あり、経常収支比率も95%に健全化されいます。これらの指標の推移をみると、歳出の削減で健全化しつつあるようですが、この間に行政サービスが減ったのかもしれません。一方、同県内で活気がある、浦安市、市川市、松戸市、柏市などは軒並み極めて健全な指標です。ただ、今後、経常収支比率が高まって、先行きの重しになるかもしれません。

 東京都内でも港区、武蔵野市、立川市など活気があるところは指標が良い傾向が見て取れます。今後、経常収支比率が高まる可能性もあります。

 神奈川県内では、横浜市の指標が意外と良くありません。人口減がいわれる横須賀市は、財政力指数が弱いのですが、将来負担比率は低い。つまり緩やかな停滞が続きながらも自治体としての持続可能性は高いといえるのかもしれません。相模原市、厚木市は極めて良好な数字であり、街の活気を裏付けます。

 地方部は財政力指数はおしなべて低い。今世紀初頭には、青森県内のごく一部ながらも複数の町村には危機的な数字も見られましたが、今は改善傾向にあります。この辺は人口が少ないから改革しやすいと言えるでしょう。さきほどの380万自治体の横浜市とは対照的といえるかもしれません。

 その中で、長野県内自治体は財政力指数は低いのですが、将来負担比率も低く、これまでも節約型の地方財政を維持してきたことがうかがえます。ただ、世帯収入が高い川上村は意外と財政力指数が「0・25」しかなく、現在の行政サービスが過剰であるのかもしれず、将来的なリスクがあるように思えます。同じ北陸信越では、今話題の石川県金沢市は地方にしては財政力指数が高いのですが、それ以外の指標はIターンするには微妙な数字です。

 大阪府内では、政令市の大阪市と堺市を比べると興味深い。大阪市と堺市では、大阪市が軒並み不健全な数字となっています。ところが、財政力指数は大阪市が堺市よりもかなり強い。今後のやりようによっては大阪市は健全の余地、堺市は悪化の余地があるということになります。一方、高石市、泉佐野市などの財政は極めて不健全です。高石市が消防一部事務組合を堺市と組んでいるのは、この影響なのかもしれません。泉佐野市は自主的な再建はかなり難しいという見方もあるのかもしれません。

 気を付けたいただきたいのは兵庫県。高級住宅街と思われがちな自治体。芦屋市、西宮市、宝塚市の指標が悪いのがはっきり出ています。過去の推移を見てもらうと、経常収支比率が100%を超えていた時期も長く、「公務員天国」だった時期があり、今は「過去の栄光の遺産」の改善傾向にあり、今後の街の活気の伸び方が限定的になるかもしれません。同様の傾向は奈良県内にもみられます。

 今話題の薩摩川内市は、健全な傾向にあります。

 沖縄県内自治体は、歴史的経緯もあり、将来負担比率は健全です。

 このように指標が悪い自治体は、仮に健全化に成功したとしても、その間に住民が受ける行政サービスは低下するかもしれず、住宅を購入する予定がある人は、こういった数字を見ることは必須だと、私には思えます。公務員天国を批判するのは良しとしても、見返りに行政サービスが低下することも勘案する必要があります。その一方、今の活気にひかれて、港区、武蔵野市、浦安市などに住むにしても、現在の経常収支比率が低いということは、周辺から住民が流れ込み、将来的に悪化する可能性が高いともいえ、何世代も住み続ける前提の住宅購入ならば多少は考慮すべき。高齢者が賃貸住宅に住むにはいいと言えるのかも。

 このように、従来の財政力指数、経常収支比率に加えて、新しく、自治体や3セクの公債費、利払い費、退職金負担などを網羅したのが地方財政健全化法になります。

 総務省はこのエントリー記事を初投稿した時点で開かれている第189回通常国会に提出した7本がすべて6月の当初会期内に成立・公布されているほか、一部かかわった内閣府の第5次地方分権一括化法や議員立法の改正公職選挙法も施行されています。その他の公職選挙法改正案は一部審議入りしていないものもあります。

 仮に「地方財政健全化法の改正法案」が提出された場合は、平成28年度年次地方税法改正案、総額を上書きする地方交付税法改正案、NHK予算の承認を求める件の処理が終わった、平成28年2016年3月下旬以降に衆議院総務委員会で審議入りするだろうと予測されます。

このエントリー記事の本文は以上です。
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