宮崎信行の「新・夕刊フジ」

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

参議院内閣委員会はPFI法改正案が審議入り、TPP国内法案、ギャンブル対策先送り

2018年06月05日 19時55分48秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ

[写真]6月上旬の国会議事堂、3年前の2015年、筆者・宮崎信行撮影。

 1年4か月にわたり国会を混乱させた、財務省・森友国有地行政文書の問題ですが、佐川前局長の動機は不明の報告書が、きのう出ました。私は佐川氏は、同期がつとめていた国税庁長官の後釜をねらった勇み足だと考えます。それを調査しないのは、財務省ではなく大蔵一家を組織だと思っているのではないでしょうか。停職3か月を重いと感じる他省庁の官僚も謎で、私は懲戒免職しかありえないと考えます。

 参議院外交防衛委員会ではTPP11承認案が審議入りしましたが、参議院内閣委員会では、TPP11国内法案は先送り、PFI法改正案が審議入り。ギャンブル依存症対策法案も先送りとなりました。個人的には、TPP11は条約賛成、国内法案反対なので、この審議順はうれしいところ。水道法改正についてはごく一部の地方公共団体は追い込まれているようですが、その財政特例が入った法案の成立が確実となり、水道法改正案そのものは衆議院で審議入りしない状態で、残り2週間となりました。

【参議院外交防衛委員会 平成30年2018年6月5日(火)】

 先週末の本会議で趣旨説明された「TPP11承認案」(196条約11号)が趣旨説明。与野党の質疑が一巡し、次回も審議することにして散会しました。これは憲法61条の規定から、承認と年内発効が確実となっています。私も自由貿易論者として大いに賛同しています。

【参議院内閣委員会 同日】

 先週末に「TPP11締結に伴うTPP12施行日前倒し法案」(196閣法62号)が本会議で趣旨説明。また、衆議院で審議中の「IRカジノ施設実施法案」(196閣法64号)の前さばきとなる、「ギャンブル等依存症対策基本法案」(196衆法20号)が参議院に送られてきています。

 しかし、きょうの内閣委員会では、「PFI法改正案」(196閣法18号)が議題となりました。先月15日に衆議院から送られ3週間たっていました。梶山弘志・担当大臣は趣旨説明で、「国地方ともに財政負担が厳しい中で、民間の資金や創意工夫を取り込むことが重要だ。特定事業の一層の促進と国による支援を強化し、水道事業者の地方債の繰り上げ償還の際に利払いを免除し元金償還のみで良いとする時限の特例を定める」という趣旨の話をしました。次回に審議することにして散会しました。

 これに先立ち、一般質疑があり、日銀総裁の評価を内閣官房長官に聞いたり、東京電力の本社移転を地方創生相に促したり、高齢者の運転免許について国家公安委員長に聞いたりするなどのやりとりがありました。

【参議院厚生労働委員会 同日】

 最終盤国会で目玉法案とされる、「働き方改革関連法案」(196閣法63号)が、加藤勝信厚労相から趣旨説明されました。加藤さんは「勤務間インターバルの努力義務を盛り込んだ」などと説明。衆議院での修正部分は、維新の浦野靖人さんが説明しました。きのうの本会議での代表質問をうけて、与野党の質疑。今国会での成立は確実とみられます。

【参議院環境委員会 同日】

 「気候変動適応法案」(196閣法27号)が全会一致で可決すべし、となりました。衆議院では4月16日から5月22日まで審議しましたが、参議院では5月23日の本会議審議入り後、比較的スピーディーに審査が終わりました。

【参議院国土交通委員会 同日】

 「所有者不明土地の利用の円滑化に関する特別措置法案」(196閣法52号)。官邸の会議などでもこの法案の理念を継いでいく規制緩和などの要望がまとまりつつあります。今回の特別措置法案は、共反対、自公立国維などの賛成多数で可決すべきと決まりました。次の本会議で成立。

【参議院経済産業委員会 同日】

 「省エネ法改正案」(196閣法61号)。採決の結果、全会一致で可決すべしと決まりました。あす成立のはこび。

【参議院農林水産委員会 同日】

●審議順が変わる

 衆議院から送付された順番と、参議院委員会での審査順が変わりました。

 斎藤健農相が「農薬取締法改正案」(196閣法50号)を趣旨説明しました。衆議院からは先週末の6月1日に全会一致で送られてきていました。これよりも前に、新自由主義的な要素がある、「卸売市場法などの改正法案」(196閣法40号)が、5月25日に送られてきていましたが、審議入りは先送りとなりました。参議院委員会先例53は「審査案件が数個あるときは、議題とする順序は委員長が定める」(PDFの12ページ参照)としています。理事会ではなく委員長が決める、ということです。

【参議院法務委員会 同日】

 「民法18歳成年法案」(196閣法55号)の参考人質疑などがありました。

【参議院財政金融委員会 同日】

 一般質疑。

●参議院文教科学委員会はありませんでした。衆議院からは、大量5法案が送られてきています。「文科省・文化庁設置法改正案」(196閣法26号)、「ドーピング防止推進法案」(196衆法26号)、「オリパラ特措法改正案」(196衆法27号)、「スポーツ基本法改正案」(196衆法28号)、「祝日法改正案」(196衆法29号)。これら5法案が参議院に来ていますが、きょうは委員会そのものがありませんでした。

●参議院総務委員会はありませんでした。

【衆議院総務委員会 同日】

 一般質疑がありました。当初会期内の来週12日(火)も委員会を午前10時から開くことにして散会しました。

【衆議院財務金融委員会 同日】

 一般質疑がありました。前日の財務省の報告書について。立憲の海江田万里さんは「3月9日に、佐川宣寿さんが国税庁長官の辞表を麻生太郎大臣の持ってきた。この日は自殺者が出ていたことが明らかになった日だ」とその体質を批判しました。立憲の川内博史さんは「財務省は、不適切だが違法ではないという言い方をしている」と指摘し、自民党の小里泰弘委員長が説明するよう促しました。しかし、矢野官房長は、「あってはならない、不適切な対応だった」とかみ合わない不誠実な答弁を繰り返しました。国民民主党の近藤和也さんは「読んでいて悲しくなった」とし、「小里委員長と私は同じ会社の出身だ」とし、20年前、大蔵省と護送船団で批判された野村証券を念頭に次のように話しました。「自分を殺す仕事をしていても、いつかはバレるかもしれないと思いながら、一生を過ごすことになる」。きょうは一般質疑だけで散会しました。

このエントリーの本文記事は以上です。

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後藤祐一さんら野党提出「コメ、大豆などの主要農作物種子法の復活法案」あす審議の公算

2018年06月05日 07時06分36秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ

 後藤祐一さんら野党が今第196回国会に提出した「主要農作物種子法案」(196衆法13号)が、あす平成30年2018年6月6日の、木曜定例の衆議院農林水産委員会で審議されるようです。

 きょねん廃止法が成立した、県立農業試験場の設置根拠法だった、主要農作物種子法を復活させる法案。

 種子法といっても、コメ、麦、大豆などの主要農作物を対象としています。ただし、県立農業試験場が指定種子生産者を検査する規定もありました。

 例えば、通販サイト「アマゾン」では、我が国最大の種子メーカー「サカタのタネ」(横浜市)が輸入し、改良し、育てた、「ブロッコリーの種子」が500円弱で販売されています。ブロッコリーは、スーパーの棚から耐えることがないし、腹持ちも良さそうで、食料の安定供給に貢献していると思います。一方、主要農作物である、コメ、麦、大豆を種子メーカーがつくれるのか。我が国で二番手の種子メーカー「タキイ種苗」(京都市)は、「大豆の種子60ミリリットル」を、500円強で、アマゾンに出しています。ちなみに、大豆の種60ミリリットルを栽培して、その大豆を絞って醤油を作った場合、500円強以上で売れる、ということは無いだろうと思います。タキイ種苗クラスならば、大豆の品種改良はできるでしょうが、コメ、麦、大豆の品種改良を、民間種子メーカーがやるのはハードルが高いでしょう。そもそも、種子は年1回しか売れません。それで、サカタのタネ、タキイ種苗、カネコ種苗は、年500億円売り上げています。年1回というハンディを克服しようと、モンサント社は農薬と種子をセット販売しようともくろんでいるのでしょうが、日本中がモンサント製になってしまうかのような、元農相らの主張は行き過ぎ。しかし、種苗法で自家採取を禁じてしまおうという動きがあるとの報道も浮上しています。やはり、コメ、麦、大豆などを県の風土に合わせて品種改良する県立農業試験場の予算根拠となる国の法律や、それ以外の種子の検査制度は必須だと考えます。

 衆議院農林水産委員会は政権交代後、自民党農林族がどういうわけか入閣できず委員会の現場にいるせいなのか、国会対策は巧妙で、TPP交渉中に、野党の提出法案を1か月以上かけて審議して、「カモフラージュ」「アリバイ」に使ったこともあります。今回も、主要農作物趣旨法廃止への懸念が大きいことに配慮したと思われます。冷静で、ていねいな議論を、農林省、与党、野党の3方面にお願いしたいところです。

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