【参議院予算委員会 平成31年2019年2月6日(水)】
補正予算(案)が参議院に送られてきました。
参・予では慣例になりつつある「補正予算案と当初予算案の同時の説明聴取」が行われました。但し、ここまで委員会が開かれていなかったので、午前8時45分頃から、麻生太郎財務大臣が「平成30年度第2次補正予算案」と「平成31年度当初予算案」を説明しました。後者の審議は3月になります。
野党第一会派は2つありますが、質疑では、国民民主党が先に質疑するという整理がされているようです。仮に地上波テレビさんが「参議院野党どうなる?どうする3時間生スペシャル」を企画されたら、私が間違いなく日本一詳しいので呼んでください。
質疑。自民党トップバッターだった長谷川岳さんで、山下貴司法相は「昨秋の改正入管難民法では自民党法務部会長としてご尽力いただいた」とし、批判に対する理解をかけあいで説明しました。おそらくかなり前から決まっていた打順だと思いますがが、野党からは入管難民法の話は今国会でまるっきりなく、自民党も拍子抜けかもしれません。
国民民主党は大塚耕平参議院議員会長らが質問。毎月勤労統計が中心で、政府は混乱しました。厚労相だけでなく、総務相にも延焼しました。石田大臣は「線形推定値かけるベンチマーク線形推定値で割ったもの・・・」などと混乱しました。大塚さんは総務相に「労働力統計に仕事についていない人がなぜ入っているのか」と問い、石田総務相は「月末1週間休んでいた人を、一定の乗数を出して復元して、仕事についているものとして計算している」という風な答弁をしました。
大塚参議院議員会長は「通常国会を通じて、統計を意味あるものにする審議をしていきたい」とし、来月3月の当初予算審議から6月の会期末にかけて、統計国会にする決意を示しました。
蛇足ですが、大塚さんと石田さんは、筆者と同じく、いわゆる「早稲田の政経」卒業。ちなみに今の内閣には早大卒は4人と歴代では少ないのですが、全員が政治経済学部卒となっています。で、田中愛治教授が、半世紀ぶりに同学部出身の早大総長となっています。田中教授は、例えば「自民党への感情温度は5から1までのいくつ、立憲民主党は」というアンケートをして、それを統計にする、社会統計学・政治動態・投票行動分析の専門家です。いわば、政治を統計化する専門家です。毎月の決まって支払われる給与を、円で一けたまで書いてもらって、それを従業員数で補正して集計するのなんて、ずっと簡単な仕事です。統計を制する者は、権力を制するのかもしれません。
話はかなりそれましたが、第一委員会室に戻ります。立憲民主党会派の野田国義さんが「次に、アベノミクス偽装について」と言ったところで、自民党理事が出て、金子原二郎委員長が、「後で議事録を精査します」と語りました。実際には、こういう理事会協議事項は、理事会で話題にならないことも多いようですが、自民党のナーバスさは、今後どういう方向に行くのでしょうか。
立憲の石橋通宏さんの問いに対して首相が「「テレビを見ている人の中には誤解している人もいるが、実質賃金は手取りではない。手取りは名目賃金」と答弁しました。これについては、さきほど速報版の記事を書いており、すでにかなりのアクセス数が来ています。この記事の末尾に全文コピペしようと思います。
●赤坂プレスセンターにオスプレイ着陸も。
一年前から、国民民主党は「日米地位協定」の改定にとりくんでいます。大塚耕平さんが斬り込みました。日本の国内法が、在日米軍に効力を及ばさない理由を、外務省はこれまで、そういう国際法があるからだ、と説明してきましたが、そういう国際法が無いことが分かり、ホームページでの説明を変えました。これについて河野太郎外相は「国内法に属さない」というような相変わらず不真面目な答弁に終始し、委員長からもたしなめられました。
大塚さんは、赤坂プレスセンターに言及。東京都港区六本木にある「赤坂プレスセンター」は米軍専用のヘリコプターで、横田基地から訓練飛行したり、軍か省の背広のアメリカ人職員が降り立ったりしています。同区赤坂の衆議院赤坂議員宿舎やTBS放送センターなどと超至近距離です。
[写真]米軍専用ヘリポート「赤坂プレスセンター」(中央)=東京都港区六本木7丁目=、六本木ヒルズ展望台(六本木6丁目)から、先月2019年1月、宮崎信行撮影。
赤坂プレスセンターに、米軍横田基地配備の、回転翼・固定翼両用輸送機「オスプレイ」が着陸することはありえるのか、と大塚さんは問いました。岩屋毅防衛相は「過去に着陸したことは承知していない」と答弁。今後、オスプレイが着陸する可能性があることについて、防衛相・外相とも否定せず、オスプレイが赤坂プレスセンターに飛来することがあり得ることが分かりました。
●参議院自民党は、異例の午後5時20分まで質疑。
議事録を過去3年分振り返ると、通常国会冒頭の補正審議の参議院予算委員会1日目では、3回とも、与党の議員は午後5時前後で質疑を打ち切っていました。きょうは、自民党の1人区改選組、山下雄平さんが午後5時20分頃まで質問しました。きょうはかなり野党でストップしましたので、参議院自民党としても、20分程度、首相らを拘束してでも、しっかりと質疑をした方がいいという判断があったようです。野党議員も5時過ぎたら打ち切るとの見通しもあったようで、新しい議題に入ると当惑した表情もありました。もちろん、基本的質疑の1日目から2日目へのまたぎで、NHKのことも考えて、午後5時で打ち切ってきたことの方が異例です。たしかきょねんあたりから「野党のせいだ」と口走る自民党若手がいたので、その関係で慣例は打ち切られたのかもしれません。いずれにせよ、2013年初当選の参議院自民党議員は自分たちのこと貴族だと勘違いしてそうだし、かなり厳しい夏を迎えることになるだろうと、思われます。
以下は、名目賃金に関する記事のコピペです。
安倍晋三首相(自民党総裁)が言い間違えをしたか、勘違いををしていることが分かりました。
首相は、午後2時35分過ぎ、立憲民主党の石橋通宏さんに対して答弁。
「テレビを見ている人の中には誤解している人もいるが、実質賃金は手取りではない。手取りは名目賃金」と語りました。
首相は、給料から、所得税・住民税・厚生年金保険料・健康保険料(介護を含む場合もある)・労働(労災・雇用)保険料の天引きをした後の、お金を名目賃金だと勘違いしている可能性があります。
筆者が四半世紀以上愛用している定番「入門マクロ経済学第3版」(中谷巌、日本評論社)では
「実質賃金とは、円単位で表示された賃金である名目賃金を、物価水準Pで割ることによって求められた実際の購買力を示す賃金指標です」
と説明しています。実質賃金と名目賃金の違いは、物価の違いを考慮するという要素しかないです。
但し、1990年代の代表的経済学者にも、社会保険料が高騰することにより可処分所得が減少し購買力が低下する、という条件は考えていなかったのかもしれませんが。
首相は、以前にも、実質成長率(経済成長率、対前年同期比のGDP伸び率)について、「名目成長率から、物価上昇分を差し引いたものだ」との誤った答弁を繰り返していました。正しくは、名目成長率を物価上昇率で割ったものが、実質成長率です。
【衆議院 同日】
無し。
【参議院議院運営委員会理事会 同日】
あす本会議をやるかどうかの攻防。
このエントリーの本文記事は以上です。
[お知らせはじめ]
宮崎信行の今後の政治日程(有料版)を発行しています。国会傍聴取材支援基金の創設とご協力のお願いをご一読ください。
このブログは以下のウェブサイトを活用しエントリー(記事)を作成しています。
衆議院インターネット審議中継(衆議院TV) 参議院インターネット審議中継 国会会議録検索システム(国立国会図書館) 衆議院議案(衆議院事務局) 今国会情報(参議院事務局) 各省庁の国会提出法案(閣法、各府省庁リンク) 政党インターネット資料収集保存事業 「WARP」(国立国会図書館) 予算書・決算書データベース(財務省ウェブサイト) インターネット版官報
[お知らせおわり]
tags
(C)2019年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki 2019