[画像]民法債権編改正案の採決で、賛成する自民党議員(左)と、委員長を挟んで、反対する民進党議員(右)、2017年5月25日の参議院インターネット審議中継からスクリーンショット。
正直言って、参議院野党は見せ場の無い終盤国会となりました。私が強く抵抗してきた、民法債権編(債権法)改正案は、大臣諮問から7年半、国会提出から2年2か月経って、ついに、政府原案通り可決すべしと決まりました。1300万人の保険料が増える介護保険法改正案も政府原案通り。日英日豪ACSA反映と財政法改正の束ね法案も可決しました。
こんなに弱い参議院野党は見たことがありません。
昨年7月10日(月)の第24回参院選がつきつけた現実が、ようやく見えてきた感じです。最大野党の党首は、唯一絶対に尊敬する、岡田克也さんでしたから、私もその責任の一端を共有します。
その一方で、細川・羽田孜内閣の成果である、平成6年政治改革4法のひとつ、衆議院区割り審設置法改正案(193閣法65号)はスムーズな審議入りとなりました。
【参議院法務委員会】
●民法債権編(債権法)改正案は参考人質疑なく委員会で可決
「民法債権編(債権法)改正案」(189閣法63号及び64号)。
午前10時から質疑。午後4時57分頃、質疑が終局しました。ここで、委員長が休憩と、理事会の再開を宣言しました。5時4分頃に再開。委員長が質疑の終局を宣言。討論は、民進党の小川敏夫さんと維新の東徹さんの2人が立ちました。東さんは反対討論で「公証人制度の全面見直しを」求めました。この後、採決され、民反対、自公共維の賛成多数で政府原案通り、可決すべしと決まりました。あっさりと通過してしまいました。
◇
質疑で、共産党の仁比聡平さんは「不払い賃金の短期消滅時効2年」を問題視してきましたが、「きょうは積み残し」として、他党同様に、融資の連帯保証の公正証書化をめぐって、配偶者保証や事実婚の場合をただしました。これに先立ち質疑に立った、小川敏夫元法務大臣(民進党参議院議員会長)は、前日の記者会見や蓮舫党代表の発信とからめて、「改正条文591条第1項で、借主はいつでも返せる、とあるのに、第2項で貸主は借主にその損害を請求することができる」とあるとして、繰り上げ返済のときにその後の利息全額を請求されるケースを質問。維新の東徹さんも「公証人について納得できない」としました。沖縄の風の糸数慶子さんは、法定利率の変動性について問いました。
【参議院外交防衛委員会】
「防衛省設置法及び財政法改正案」(193閣法26号)が民共沖反対、自公維賛成多数で可決すべし、と決まりました。公布から来年3月まで順次施行。我が国自衛隊の装備品の中古を他国に譲ることができる財政法改正条項と、日豪英ACSAの自衛隊法落とし込み条項。財政法の改正と、自衛隊法の改正が、束ね法案(一括改正法案)となったことは残念です。今国会の自公ペースの運営を見ていると、5年ほど前から始まった「束ね法案ブーム」もそろそろ終わりでしょう。
【参議院財政金融委員会】
「銀行法改正案」(193閣法38号)が全会一致で可決しました。
【参議院文教科学委員会】
●前文部科学事務次官「加計学園・獣医学部特区・総理のご意向文書」の参考人質疑は与党が拒否で、一般質疑。
けさ、週刊文春に「総理のご意向文書」(朝日新聞が1面トップでスクープ)は本物だと、前川喜平・前文部科学事務次官が証言している内容が出ました。これについて、民進党などが参考人招致を求めましたが、与党が折り合わず、きょうは一般質疑があり、散会しました。
「総理のご意向文書」は、文科省が内閣府に責任を丸投げしている内容だと私は認識していますが、なぜか、文科省内の犯人探しにマスコミなどの関心が間違って集まっています。きょう午後3時からの民進党蓮舫代表の定例記者会見では、永田町一有名なカメラマンの堀田喬さんが「(民進党などは)内部告発した人を守っているのか」と問いました。
●介護保険法改正案あす成立へ。
【参議院厚生労働委員会】
「地域包括ケアシステム強化のための、介護保険法改正案」(193閣法15号)。民共希反対、自公維や無所属議員の賛成多数で可決すべしと決まりました。施行は保険料条項はことし8月1日(火)、給付条項は30年4月1日(日)。ことし8月25日(金)の給料日から、1300万人の介護保険料が増え、1700万人の介護保険料が減る見通し(総報酬割の導入)。
【参議院農林水産委員会】
「農工法、農村地域工業等導入促進法改正案」(193閣法29号)。加計学園獣医学部特区の質問が多くでました。採決では、民共希反対、自公維賛成多数で可決すべし、と決まりました。あす成立、公布から2か月以内の政令で定める日に施行。
【参議院経済産業委員会】
「企業立地促進法改正案」(193閣法20号衆修正)。世耕経産相は「地域けん引企業は、1社のみ応援するように言われるが、地域全体を応援する法案だ」とうそぶきました。
採決の結果、共反対、自公民賛成多数で、衆議院修正案通り可決すべし、と決まりました。
【参議院国土交通委員会】
「通訳案内士法及び旅行業法改正案」(193閣法59号衆修正)は、共希反対、自公民維賛成多数で、衆議院修正案通り可決すべし、と決まりました。
【参議院環境委員会】
「種の保存法改正案」(193閣法33号)は全会一致で可決すべし、と決まりました。
●参議院内閣委員会はありませんでした。
衆議院本会議での採決が2回「延期動議」という異例の展開をとっている、「特区法改正案」(193閣法54号)が衆から回ってこないので審議がありませんでした。以前は「地方創生特別委員会」がありましたが、参では廃止されています。
【参議院総務委員会 平成29年2017年5月25日(木)】
「地方自治法改正案」(193閣法55号)が趣旨説明され、散会しました。第31次地方制度調査会は、三菱東京UFJ銀行の特別顧問が会長をつとめており、その答申を法案化したものです。三菱銀行は、多くの自治体の指定金融機関や、静岡銀行などの主要株主です。前日、頭取交代劇があり、例年5月中旬の決算発表日に「副頭取の証券子会社副社長転出」の発表が急きょ取り消され、その人物が1週間後に頭取になりました。資本主義の歴史に残る出来事と言えそうです。マイナス金利の中、地方公共団体頼みが強まるかもしれません。
【衆議院農林水産委員会】
「畜産物価格安定法改正案」(193閣法40号)。小泉進次郎さんがまとめた「農業競争力強化プログラム」にもとづく諸法案に、民進党は強く反発しています。質疑後の採決は、民共反対、自公賛成多数で可決すべし、と決まりました。
【衆議院政治倫理の確立及び公職選挙法改正案に関する特別委員会】
「2015年国勢調査を反映した、平成6年政治改革4法にもとづく、衆議院区割り審設置法及び公職選挙法改正案」(193閣法65号)について、高市総務相から趣旨を聞きました。審議は来週31日(水)の午前9時から。
【衆議院原子力問題調査特別委員会】
理事会での与野党協議がととのい、「アドバイザリーボード」が設置されました。アドバイザリーボードの7名は、いつでも参考人として呼べるようです。この後、一般質疑。
【衆議院東日本大震災復興特別委員会】
一般質疑として、参考人が招かれました。
【衆議院憲法審査会】
「日本国憲法及び基本法令」とくに「新しい人権について」。自由討議があり、まず各派を代表する議員の発言から始まりました。自民党の船田元さんは「教育への公金支出は違憲ではないか」と述べました。民進党の山尾志桜里さんは「3日の安倍首相の発言は、自衛隊を現在違憲とするものなのか」と語りました。次回は6月1日(木)に開催する、と森英介会長から発表され、散会しました。
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Miyazaki Nobuyuki