「BluePerformance」という名のクリーンディーゼル搭載車が追加された、BMW3シリーズ。
その試乗車があることを知った私は、いそいそとBMWのお店ヘと駆け付けた。
だが、さすがに着目している人が多いらしく、その試乗車は先客の方が試乗中であった。
その待ち時間の間、なんと「320i xDrive Luxury」(8AT:税込車両本体価格500万円)に試乗させていただくことが出来た。
「X DRIVE」のエンブレムは、このクルマが4輪駆動であることを主張する。
2.0リッター直列4気筒ツインパワー・ターボ・エンジンを積み、184ps/27.5kgmを発揮。
それでいて、JC08モード燃費は15.2km/Lというのだから、大したものである。ハイオクガソリンだけど・・・
試乗コースは、圧雪状態の手稲山。
いかに4駆とはいえ、冬場のあの道は、自分のレガシィでもあまり積極的に走りたくはないコースである。
500万円もするクルマをぶつけたりしたら、一家離散の危機になるのは明白だ。なので、基本的にはきわめておとなしく、しずしずと走らせていただいた。
とはいえ、直線の登りでは、ちょっとだけ深めにスロットルを開けさせていただいた。このクルマは挙動を乱すこともなく、ぐぐっと雪の坂道を、絶大なる安心感とともに登る。駆動力が4輪に上手く配分され、DSCと呼ばれる横滑り防止装置も、ほとんど介入しなかった。いや、介入していたのかもしれないが、それを感じさせない。
いやあ、感心した。「このクルマなら100%事故を起こすことはないのではなかろうか」という錯覚に陥るほどだ。ある意味、コワい。
そしていよいよ、お目当てのクリーンディーゼルに試乗する順番が巡ってきた。
「320d BluePerformance M Sport」(8AT:税込車両本体価格514万円)。
このクルマの積むストレートフォー・ツインパワー・ターボ・ディーゼルエンジンは、最高出力184psで、トルクはなんと38.7kgm!JC08モード燃費は、驚愕の19.4km/Lである。
装着するのは、フロント225/45R18・リヤ255/40R18というファットなタイヤ。ランフラットのスタッドレスは、お値段自体もプレミアムなのだそうで・・・
ちなみに、上の写真のホイールハウス上部のリップのようなモノは、「タイヤが太くボディパネルより外側に出てしまうため、車検を通すため」に採られた措置であるとのこと。さすがは、「M Sport」・・・と、言っていいのかどうか、迷う。
5,500rpmという低めの回転から始まるレッドゾーンが、このクルマがディーゼルエンジンであることを物語る。
エンジンを掛けると、ディーゼルエンジンだけに、アイドリングでもその音は若干車内に侵入し、振動も皆無ではない。だが、それは安っぽい類のモノではなく、むしろスポーティセダンの鼓動のようなものだと受け止めることができる。
なお、この試乗車の個体特有の症状かもしれないが、1,500rpm辺りで走っている時に、インパネ周辺から「チリチリッ」とビビリ音が聴こえていたことを、一応報告しておこう。
まあ、さすがにこのような圧雪状態の山道だと、38.7kgmの大トルクを後輪2輪だけで路面に伝達するのは難しいようだ。DSCは作動しまくりで、駆動力が逃げるので、先に乗った「320i xDrive Luxury」のようには走れない。やはり、「スリッピィな路面でクルマを前に進ませる力」は4駆モデルに一日の長がある。
とはいえ、運転していての不安感は、まったくナシ。この大トルクのFR車が、こんな道路を手に汗握ることもなく走れるのだから、やはり「素晴らしい」としか言いようがない。
そのトルクフルな走りは、平坦路ではきわめて豊潤で、懐の深さを感じさせるものであった。
試乗を終えた時。温まったディーゼルエンジンは、走り始めの時よりも静かになったように感じられた。
4駆とディーゼル。価格もごく近いこの2車。どちらを選ぶかは、気絶するほど悩ましい選択だ。
まあ、悩んだところで、我が家の経済事情じゃ、どっちも買えないか・・・ううっ。