続いて尾車氏の提案により、我々取材班は、最近発売されたハイブリッドカーの「SAI」をこの目で確認することにした。そこで向かったのが、
トヨタのネッツ店である。
試乗させていただいたのは、「G」(税込車両本体価格382万3100円)である。私はこのクルマを「
レクサスHS」とのバッジ違いの双子車なのだと思っていたが、ヘッドランプ・テールランプの形状のみならず、リヤドアの形状やボディのプレスラインも異なっており、インパネ周辺のデザインもかなり違っていた。セールスマン氏によると、脚回りも「SAI」の方がややしなやかな仕立てになっているとのこと。実は、かつての
コロナと
カリーナ以上に、それぞれ独自の味付けがされているのだった。ま、「トヨタ」ブランドと「レクサス」ブラントだから、当然のことなのかもしれませんが・・・
室内の品質感は高く、A・B・C全てのピラーの内側に植毛処理が施されている。ジョイスティックのようなシフトレバーは扱いやすく、最初はちょっと戸惑うかもしれないが、すぐに慣れる。
走り出すと、アイポイントがかなり高めだと感じた。215/45R18というファットなタイヤを履いているためか、センター方向への据わり感があるステアリングも、しっとりとしたフィールで、イイ感じ。なにか地に足が着いた感じの安定感のある乗り味である。今回は好きなところを走らせてもらうことが出来たので、ワダチのひどいところや圧雪路等も試してみたのだが、この太いタイヤのFF車はあくまで泰然とした挙動で、まったく不安なく走れる。インパネの警告灯を見ると、トラクションコントロールがかなり作動していたようだが、それを見なければ、それが作動していることにも気付かないくらいである。
ただ、ABSが作動した時にブレーキペダルにキックバックが来ないのは、高級感の演出なのかもしれないが、ちょっと問題アリとも思う。やはりドライバーには「その運転はABSが作動する領域ですよ!」という警告を促す意味でも、そういったインフォメーションを与えるべきだと思う。
さて、この試乗の時に、空調の風向きやら風量をマニュアルで調整しようと思ったのだが、その方法は一見では分からなかった。帰宅してカタログを見たところ、この「リモートタッチ」と呼ばれる操作ノブを、PCのマウスのように操って空調・オーディオ・ナビを操作するらしい。私は実際に使わなかったのではっきりとは断言できないが、自動車のような移動体に、この手のロジックの操作法が馴染むのかどうかは、やや疑問である。
とはいえ、その約400万円というプライスを掲げるだけあって、「SAI」というクルマはなかなかいいクルマだった。そして私は、この高価なクルマの12月の登録台数が約3,800台に達することに、驚きを禁じえない。なんだかんだいっても、日本にはお金を持っている人が、まだ多数存在するのだ。
さて、15分ほどの試乗を終えてディーラーに戻ると、セールスマン氏からの嬉しい申し出が。「よかったら、プリウスと乗り比べてみませんか?」と!そのような素晴らしいお話を、我々取材班が拒むハズはない。
で、嬉々として2009年のベストセラーカー・プリウスの運転席へ。
同じようなコースを同じように走ってみた。ステアリングインフォメーションは、「SAI」と比べると、明らかに希薄である。絶対的には静かなクルマだと思うが、静粛性も明らかに「SAI」には負けている。ま、値段が相当違うから、それはしょうがないですネ。
また、この車の場合は、トラクション・コントロールやABSはけっこう荒々しく介入してくるので、その作動状況がドライバーはおろかパッセンジャーにもハッキリと分かる。だがそれは、ある意味正しい方向付けだと、私は思う。そしてこのFF車も、氷雪や轍の路面を、きわめて安心感高く走り抜けたことはいうまでもない。
これで燃費も良くて、一番安いグレードは税込205万円で、
エコカー減税等の恩恵も受けられるのだから、まあ、売れて当然なのかもしれない。
ただ、このプリウスをあの価格で売ることが、トヨタという会社の経営や、下請工場で働く人たちにとって、いいことなのかどうかは分からない。1台売るたびに赤字になるということは無いとは思うが、かなり利潤を削って売っていることは間違いないだろう。やはり適正な価格でこれを売って、その利潤を底辺で働く人たちに還元していくことが、トヨタのような大企業の果たすべき役割なのではなかろうか。リーマン・ショック以降、それどころではないのかもしれませんが・・・