昨日は、中西輝政著「賢国への道」(到知出版社)を読みました。
スラスラと読めます。今日になって一箇所だけ引用するとしたなら、私はこれ。
「あの反日デモのあとで、私は田原総一朗さんの司会するテレビ番組に出ました。そこに元外交官の孫崎享(まごさきうける)という評論家が出てきて、こんな発言をしました。
『昭和53年に日中平和友好条約の締結のために小平が日本へ来たとき、尖閣の問題は我々の世代は知恵がないから、知恵のある将来の世代に委ねようという話をした。あの頃から日中は棚上げで合意している。その後、ずっと現状凍結できて何も起こっていないじゃないか。それなのに今回、日本政府は国有化に踏み切った。これが中国を怒らせているんだ』と。
これには驚いて、私は『棚上げなんか中国側はしていませんよ』と反論しました。一緒に出演していた外務省出身のもう一人の方も『日本政府は当時も今も棚上げに合意したという事実は一切ない』と言いました。小平が勝手に発言しただけなのです。
私はいつも強く言うのですが、中国側は自ら言い出した棚上げを、その後、一切反古にしているのです。小平の言葉は完全に嘘だったと証明されていることを知らなければなりません。『棚上げ』発言から14年後の1992(平成4)年に、中国は小平の承認を得て『領海法』という法律を制定していますが、その条項の中には『尖閣諸島は中国領土である』とはっきり書かれています。これは棚上げどころか、中国の国内法上、『国有化』したも同然なのです。この法律を制定した時点で、中国側は棚上げをやめていたのです。
私が尖閣の問題に危機感を持った最初の出来事も、この領海法の制定でした。・・・・
・ ・・・・・・・
この領海法一つ考慮に入れず、『日本側が先に現状を変更した』などという話をする日本人識者は、到底誠実な知識人、専門家とは言えません。一体全体どこの国の利益を代表してものを言っているのだろうかと思うほど、おかしな議論です。
ですから、日本は『尖閣国有化を撤回せよ』という中国の要求は何があっても呑めない、と明示しておく必要があります。もしも日本がこれを撤回したら、その瞬間に、世界は日本が尖閣を中国に返したのだと受け止めます。将来、国際裁判を起こしても絶対に勝てません。国有化は日本が最低限死守すべきラインなのです。・・・」(p76~79)
とかく、本などでは、名指しで論評するのは避けがちなものです。けれども、一読者にとっては、名前をあげていただかないと、なかなかに選別がむずかしいものです。うん。おかげで『誠実な知識人・専門家』の範囲の外に、孫崎享氏を置くことができました。読書のピントをあわせて、少しずつですが、焦点が定まってくるような気分になれます。
スラスラと読めます。今日になって一箇所だけ引用するとしたなら、私はこれ。
「あの反日デモのあとで、私は田原総一朗さんの司会するテレビ番組に出ました。そこに元外交官の孫崎享(まごさきうける)という評論家が出てきて、こんな発言をしました。
『昭和53年に日中平和友好条約の締結のために小平が日本へ来たとき、尖閣の問題は我々の世代は知恵がないから、知恵のある将来の世代に委ねようという話をした。あの頃から日中は棚上げで合意している。その後、ずっと現状凍結できて何も起こっていないじゃないか。それなのに今回、日本政府は国有化に踏み切った。これが中国を怒らせているんだ』と。
これには驚いて、私は『棚上げなんか中国側はしていませんよ』と反論しました。一緒に出演していた外務省出身のもう一人の方も『日本政府は当時も今も棚上げに合意したという事実は一切ない』と言いました。小平が勝手に発言しただけなのです。
私はいつも強く言うのですが、中国側は自ら言い出した棚上げを、その後、一切反古にしているのです。小平の言葉は完全に嘘だったと証明されていることを知らなければなりません。『棚上げ』発言から14年後の1992(平成4)年に、中国は小平の承認を得て『領海法』という法律を制定していますが、その条項の中には『尖閣諸島は中国領土である』とはっきり書かれています。これは棚上げどころか、中国の国内法上、『国有化』したも同然なのです。この法律を制定した時点で、中国側は棚上げをやめていたのです。
私が尖閣の問題に危機感を持った最初の出来事も、この領海法の制定でした。・・・・
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この領海法一つ考慮に入れず、『日本側が先に現状を変更した』などという話をする日本人識者は、到底誠実な知識人、専門家とは言えません。一体全体どこの国の利益を代表してものを言っているのだろうかと思うほど、おかしな議論です。
ですから、日本は『尖閣国有化を撤回せよ』という中国の要求は何があっても呑めない、と明示しておく必要があります。もしも日本がこれを撤回したら、その瞬間に、世界は日本が尖閣を中国に返したのだと受け止めます。将来、国際裁判を起こしても絶対に勝てません。国有化は日本が最低限死守すべきラインなのです。・・・」(p76~79)
とかく、本などでは、名指しで論評するのは避けがちなものです。けれども、一読者にとっては、名前をあげていただかないと、なかなかに選別がむずかしいものです。うん。おかげで『誠実な知識人・専門家』の範囲の外に、孫崎享氏を置くことができました。読書のピントをあわせて、少しずつですが、焦点が定まってくるような気分になれます。