和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

水半球。

2014-05-29 | 詩歌
福音館書店の
「声で読む日本の詩歌166 おーいぽぽんた」は
編集委員が、茨木のり子・大岡信・川崎洋・岸田衿子
谷川俊太郎。そこで選ばれた詩のなかに、
田村隆一の詩「木」もはいってます。
詩「木」のはじまりは、というと

  木は黙っているから好きだ
  木は歩いたり走ったりしないから好きだ
  木は愛とか正義とかわめかないから好きだ

  ほんとにそうか
  ほんとにそうなのか

  見る人が見たら
  木は囁いているのだ ゆったりと静かな声で
  木は歩いているのだ 空にむかって
  木は稲妻のごとく走っているのだ 地の下へ
・・・・・

このようにはじまっておりました。
田村隆一詩集「水半球」(書誌山田)
をひらくと、そこに「木」が載っていて、
その2つ前に、詩「要約せざるもの」がある。
こちらは、吉田満氏をとりあげた詩。
こちらも引用。

きみは
・・・・・・   
昭和二十年三月一七日、
硫黄島の陸海軍の守備隊が全滅したとき、
きみは戦艦大和の電信士だった。
まるで硫黄島の全滅と期を一つにして、
きみの船艦『大和』は沖縄にむかって出航する。
戦後、きみの証言と行動には、
きわめて重要なふくみがある――



ちょっと、間を端折って、
そのつぎを引用してみます。



  では、一つの基本的な姿勢とは何か?
  『戦争の悲惨さの実感に徹する以上は、
   自分だけが戦争から
   身を避けようとする姿勢ではなくて、
   自分の生活の中から《平和》に
   相反する行動原理を駆逐すること、
   何よりも
   人間を尊重し、
   人間の生活の重みをいつくしむこと、
   そのことのために、
   地道な
   潜心が積み重ねられなければならない』

  きみの葬儀は
  東洋英和女学院の
  マーガレット・クレイグ記念講堂で行われた



すこし端折って、最後の四行はというと



  二度死んだ男たちよ
  ぼくはぼくの『死』を大切にしたいと思う。
  要約されざるものよ、
  また逢う日まで。



うん。『木』と『要約せざるもの』とが
一緒の詩集にはいっていたことを知る。
水色の詩集の表紙カバーを、
あらためて見ている。
コメント
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