山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

高山帯の花とシダを巡る 鳳凰山2泊3日(1日目)  令和2年8月1日

2020年08月04日 | 高山に咲く花
 鳳凰山に生育する植物の調査に参加させていただくこととなったのだが、レインジャー調査のように咲いている花を見てくるのではなくて今回は咲いていない花を含めて全ての植物を調査する。そのため、葉を見て何の植物かを判断しなくてはないうえに樹木やシダ、スゲなどの植物も同定するとのことである。専門家の先生2名に付いて行く形での参加で、私はあまり戦力にはならないであろう。足を引っ張らないように、少しでも協力できればと思う。1日目の行程は夜叉神峠から薬師岳小屋までの長い行程である。山小屋に泊めていただくので、医療関係者である私はコロナウィルスに感染している可能性が無きにしもあらずなので、前日に抗原検査を行って陰性であることを確認してから参加させていただいた。


    シコクママコナ


    以前は足の踏み場も無いほどに密生していたがだいぶ減った。今年は少し増えてきたように見える。


    シャクジョウソウ


    花の散ったギンリョウソウ


    ヒトツバイチヤクソウ。葉が小さく、半分は菌従属栄養の植物と思われる。


    ミヤマバイケイソウ。夜叉神峠付近では白い花を咲かせるバイケイソウだったが、高度を上げると緑色の花に変わる。


    針葉樹林の苔の生えた林床を好むキソチドリ


    こちらも同じような環境を好むコイチヨウラン。数は少ない。


    コフタバランは辻山のあたりまで行くと比較的多く目にする。


    咲き残りのオサバグサ。これもあまり多くは無い。


    ヒカゲノカズラ。御室小屋周辺にはたくさん生育している。

 登山道周辺の植生調査と写真を撮りながら登って来たため、南御室小屋まで7時間少々かかった。樹木の名前は広葉樹も針葉樹も全く分からず、教えていただいても3分後には頭の中から消えている。覚えているのはシラビソとオオシラビソの葉の違いくらいである。南御室小屋でお茶とお菓子をご馳走になり、休憩しながら小屋周辺の植生調査を行った。


    南御室小屋のロープが張られた草地。比較的良く植生が保護されているが、シシウドは食害に遭っていた。


    テガタチドリ


    おそらくホソバノキソチドリ


    黄緑色の花と長い距は真直ぐか先端部が緩く前屈している。


    クルマユリとクモマベニヒカゲ


    カイタカラコウ

 南御室小屋から薬師小屋に至るまでは本日最後の試練の急登である。森林限界を超えるあたりの岩の隙間に高山性のシダがあるのではないかと期待していたのだが、なかなか目ぼしいシダは見つからず。その中でも山梨県ではほとんど存在が知られていなかったヒモカズラに出会えたことは大きな喜びだった。


    岩の隙間に生育していたのはほとんどがこのミヤマウラボシ。


    苔の生えた岩壁に着生していたヒモカズラ


    日当たりが悪い側の岩壁を好んで生育していた。


    砂払い山のタカネビランジ


    ヒメコゴメグサ。別名コバノコゴメグサ。


    ヒメコゴメグサの群生


    振り返って見る砂払い山。やっと宿泊予定地の薬師岳小屋到着である。

 午後5時半、予定していた時間よりも1時間以上遅れてやっと薬師岳小屋に到着である。心配した小屋主さんが砂払い山の先まで迎えに来てくれた。テント装備ほどではないが2泊分の荷物とシュラフに交換レンズ数本を詰め込んだ重いザックで、自分自身ここまで歩けるのかどうか少しばかり不安があったが、以外に歩けるものだと思った。


    樹林の中で見たリンネソウは咲き始めたばかり。個体数は多くは無い。


    マンネンスギ。低い山でも高い山でも生育していることが分かってきた。


    以前にも見ているが何だか分からなかったイノデの仲間。ホソイノデであることが分かった。全体に細長く流線型をしている。


    幅広の鱗片と毛のような細い鱗片が混在する。


    葉軸中間付近の鱗片は鬣(たてがみ)のように見える。大き目のソーラスが特徴らしいがこの個体にはまだ付いていなかった。


    お目当てだったのがこのヒメワラビの仲間。


    葉の辺縁は鈍い鋸歯状で葉が肉質で厚い。おそらくヤマハナワラビと思われるが、秋に胞子穂が出ているのを確認する必要がある。

 小屋はコロナ対策が徹底しており、敷居を入れて完全個室になっていた。入り口には手指の消毒液が設置されており、マットや布団は貸してくれるが原則シュラフ持参である。食事をとりながら登って来たメンバーと小屋主さんを含めて様々な花談義に花が咲く。快適な個室でぐっすりと眠ることが出来た。
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移植片はどうなっただろうか?  令和7年7月

2020年08月04日 | 番外編
 一昨年木の幹から苔ごと脱落してしまった着生ランを別の木に移植してきた。昨年見に行ってみると、葉が1枚だけ出ていたがとても花を咲かせてくれるような状態ではなかった。移植して2年目、その後どうなっているのだろうか?昨年の台風で脱落してしまっているのではないか?心配である。雨の合間を縫って訪問してみる。


    移植する際に固定に使った麻紐がまだ残っているのが見える。昨年に比べて移植編の苔は元気になっており、生着してくれたようである。


    上と下に出ている葉はノキシノブ、真ん中が着生ランの葉である。後ろ側に隠れて、小さな葉がもう1枚出ている。

 ひとまずは移植片は生着してくれたようであるが、2枚出た葉はいずれも弱々しく、花を咲かせるにはまだ何年もかかりそうである。復活してくれることを祈る。


    こちらも目的の植物だったスギラン(シダ)であるが、手前に出た葉が邪魔になって撮影にならず。


    ホテイシダも目的のシダだったが霧と小雨で霞んで画像はいまいち。この2種類は別の場所で撮影し易いところを探したい。


    もし生着して咲いてくれれば、こんな赤紫色の小さな花を咲かせてくれるはずだ。


    いつか復活してこんな花を咲かせてくれることを願う。


    苔生す近傍の森を探してみたが新たな株は見つからず。

 着生植物は着生している木の老化や苔の状態で脱落してしまう運命にあるのだと思う。しかし、きわめて貴重なランであるだけに、復活を祈りつつ今後も見守って行きたいと思う。


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