山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

コイチヨウラン

2020年08月06日 | ラン科
 高山帯の針葉樹林の林床に咲く薄黄色~黄緑色の小さなランである。名前の通りに一枚の根生葉から茎を出して数個の花を付ける。唇弁は通常全縁であるが、富士山では時にややギザギザしているものを見かける。八ヶ岳、奥秩父、南アルプス、富士山に生育し、群生している場所も時として見かけるがさほど個体数が多いとは言えない。


    コイチヨウラン  平成30年7月 黒戸尾根で撮影


    平成30年7月 黒戸尾根で撮影


    黒戸尾根では群生が見られる。


    令和2年8月 鳳凰山で撮影


    鳳凰山は個体数が少ない。


    平成30年8月 金峰山で撮影


    金峰山はあまり個体数は多く無い。


    平成30年 富士山で撮影  富士山は個体数が少ない。


    通常は唇弁が全縁であるが富士山では時として唇弁が少しギザギザしている個体がある。

 良く似たハコネランは広葉樹林の林床に生育し、唇弁の側縁が鋸歯状であるところが異なる。

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ツチアケビ

2020年08月06日 | ラン科
 葉緑素を持たない菌従属栄養植物で、ナラタケの菌と共生する。茶色いグロテスクな花であるが、開花した花は黄色い唇弁を広げてそれなりに美しい。結実すると赤いソーセージのような実をつける。


    ツチアケビ  令和1年7月 忍野村で撮影


    花は咲き始めたばかりだった。


    後日同じ場所で再写する。


    開花した花は黄色い唇弁を広げてランの形をしている。


    結実したツチアケビは赤いバナナのような実をつける。 平成26年9月 姥子山で撮影

 2018年版山梨県レッドデータブックでの生育地は主に富士山周辺であるが、姥子山や南部町でも見つかっている。広い範囲に生育していると予想されるがいずれの場所も個体数は少ない。

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高山帯の花とシダを巡る 鳳凰山2泊3日(3 日目)  令和2年8月3日

2020年08月06日 | 高山に咲く花
 本日が鳳凰山2泊3日の最終日である。前日夕方から降っていた雨は深夜には上がっていて朝は青空が広がった。8時には眠りについたのだが久しぶりに背負った重い荷物で少しばかり背筋の筋肉痛を起こし、寝返りを打った時に痛みで何度か目が覚めた。起きたのは朝4時だったので、8時間は寝たことになり睡眠は十分である。5時半に朝食となり、ゆっくり準備して7時ごろから調査開始となる。まずは鳳凰小屋周辺から花を見て回るが、小屋の周辺は移植された植物がいくつかあるものの、良く管理されていて様々な種類の植物を見ることが出来た。中にはだいぶ数を増やしている稀少植物もあった。


    鳳凰小屋の前にあるお花畑


    ホザキイチヨウランが咲いていた。


    まだ蕾だが、これはヒメシャジンか、ミヤマシャジンか?


    マクロレンズで覗き込む限りでは萼に鋸歯は無くミヤマシャジンのようである。


    花弁が黄色味を帯びている。


    距は長く、緩く前屈している。おそらくホソバノキソチドリと思われる。ヤマサギソウとの区別がいまひとつ分からず。


    ちなみにこちらがキソチドリ。花の形は良く似ているが色が緑色で唇弁、側萼片、側花弁とも細長い。距は手前のほうから強めに前屈する。


    大株のタカネビランジ。周辺にはかつてヤナギランの群落があったが、昨年の台風で全て流されてしまったそうだ。

 他にも様々な珍しい植物があったのだが、撮影し切れずに出発となる。本日の行程は燕頭山を経て御座石鉱泉側の西ノ平まで下山し、そこに迎えの車が待っている。3日間で最も短い行程であるが、もちろん植生調査しながらの下山なのでそれほど早くは進めない。


    コフタバラン群生


    オサバグサとキソチドリ。いずれも終わりかけ。


    コイチヨウラン。数は多くは無いが数ヶ所で確認。


    森の様子から見てきっとあるだろうと何度か探していたランにやっと遭遇した。


    ミヤマフタバラン。光沢のある葉と茶色い茎が特徴。黒戸尾根で見かけたのでこちらにもきっとあると思っていた。


    もっと見たかったのがこの白いラン。もう終わりかけである。


    素心花(白花)のイチヨウラン。やっと出会えた。もっとあったはずだが、イチヨウランを含めて今年大規模な盗掘に遭い激減してしまった。


    咲き終わりのオサバグサ


    オサバグサ群生


    シダも見て回る。シノブカグマは光沢のある緑色が鮮やか。


    初見のシダ、ミヤマサトメシダと思われる。


    ソーラスは長楕円形、ないしは鍵型。鱗片は撮り忘れた。


    これも初見のシダ、イワイヌワラビ。ヘビノネゴザに似るが全体的に細長く小羽片の切れ込みが少ない。


    茶色い帯が入る鱗片はヘビノネゴザに似るがこちらのほうが細長い。


    ソーラスは未成熟だった。まだ自信を持って見分けることは出来ない。


    こちらがヘビノネゴザ。最下羽片の形と向きが違い、小羽片の切れ込みが細かい。しかし、幼弱なものはイワイヌワラビに酷似している。


    ソーラスにも違いがあるらしいが、もう少し数を見ないと鑑別出来なそうだ。


    ミヤマシダ。キヨタキシダに良く似ているが小羽片の切れ込みが深い。かつ、やや高地に分布している。


    鱗片はキヨタキシダよりも少な目である。

 予定では3時ごろに西ノ平到着であったが、1時間ほど早く2時に到着した。韮崎市の職員が燕頭山まで私たち一行を迎えに来てくれた。ゆっくりの行程だったが明日は筋肉痛になりそうである。

 今回の植生調査に同行させていただき、いろいろと課題が見えてきた。まずは地面に生えている背の低い植物だけでなく、背の高い樹木を見なければ植生は理解出来ないということだ。広葉樹林と針葉樹林くらいしか見分けていなかったが、ブナの森とナラの森では下に生える植物は違うし、シラビソとツガの森でもまた違ってくる。全く勉強していなかった樹木を知らないと、本当の意味でのその森の植生は理解出来ないということである。それはカヤツリグサやイネの仲間、イグサの仲間も同じことが言える。つまり、まだまだ勉強不足で植生を語るには程遠いレベルにあるということである。これからは少しずつでも森の木を見て行くようにしたいと思っている。


    食害に遭わずに咲き残っていたシモツケソウ





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高山帯の花とシダを巡る 鳳凰山2泊3日(2 日目)  令和2年8月2日

2020年08月06日 | 高山に咲く花
 薬師岳小屋で6時半に朝食をとり、7時過ぎから植生調査を行う。まずは薬師岳小屋の周辺、そして薬師岳に移動し、ロープが張られた立ち入り禁止区域を含めて調査を行う。鳳凰山を代表するタカネビランジだけでなく、トリカブトの仲間やミヤマダイモンジソウ、樹木などを含めて生育している植物ひとつひとつを調べて行く。ナヨシダやトガクシデンダなどの高山性のシダを期待していたのだが稜線上では発見できなかった。


    お世話になった薬師岳小屋。快適でした。


    鳳凰山を代表する花、タカネビランジ。


    ビランジの変種と言われており、苞と茎には密に毛が生えている。


    キタザワブシ、とのことだが、私にはホソバトリカブトとキタザワブシの区別が出来ない。


    観音岳に近付くとホウオウシャジンが現れる。まだ蕾である。


    咲いていたのはチシマギキョウ


    大部分結実したクモマナズナ。図鑑で調べてシロウマナズナとの葉の違いが分かったが、来年まで覚えていられるかどうか?


    観音岳直下に生えていたタイツリオウギ。


    大株のタカネビランジ


    ほとんど分からないカヤツリグサ科とイネ科の植物だがそうも言っていられない。普通に生えているイワスゲ(カヤツリグサ科)。


    これも普通に見かけるが・・・イワノガリヤス(イネ科)か?


    これも結構ある。ヒメスゲ(カヤツリグサ科)

 タカネビランジは7分咲きというところで、今年は開花が遅れている。長雨で日当たりが悪かったためか、例年よりも数が少なく小さな個体が多かった。観音岳には11時ごろに到着し、小休止して地蔵岳に向かう。


    稜線の岩の隙間に生えているシダはこのミヤマウラボシしか見当たらず。


    岩の隙間に生えていたミヤマダイモンジソウ


    湿った岩壁に群生していたミヤマダイモンジソウ


    薄ピンク色のミヤマダイモンジソウに出会った。


    ムカゴトラノオ。下にある蕾はトウヤクリンドウ。


    咲き始めのイワインチン


    もう消滅したかと思っていたが、残っていてくれたカイタカラコウ。サンカヨウは見つからず。


    赤抜沢の頭の岩峰が迫る。


    この界隈のタカネビランジは色が濃くて美しい。


    色の濃いタカネビランジ


    タイツリオウギ。シロウマオウギは見当たらず。


    稜線の石塔


    赤抜け沢の頭から見る地蔵岳オベリスク


    ハクサンシャクナゲとオベリスク


    賽の河原のお地蔵さん

 賽の河原を通り過ぎたあたりから雲行きがかなり怪しくなり、雨が降り出した。本日宿泊予定地の鳳凰小屋まであと30分ほどであるが、ここで合羽を着てザックカバーを着ける。雨は降ったり止んだりだったが、その後は深夜まで雨が続いた。


    鳳凰小屋手前で見かけたモミジカラマツ


    こちらはヤマブキショウマ

 午後4時半に鳳凰小屋に到着する。日中は日差しが強く、日焼け止めを塗って歩いてきたが首の後ろと顔面がだいぶ日焼けしたようでヒリヒリする。今回の植生調査の一番の目的は、保護ネットをどこに設置すれば植物保護に有効であるかの下調べであるが、風化花崗岩と花崗岩砂で出来ている鳳凰山の稜線はポールが立てにくく、雨や雪の影響を受けて倒れてしまう可能性が高く、保護柵の設置は難しいであろうと思われた。鳳凰小屋の定番であるおいしいカレーをおかわりして腹いっぱいいただき、8時には早々に眠りにつく。
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フガクスズムシソウ

2020年08月06日 | ラン科
 苔の生えた木の上に生育する着生ランである。富士山南麓では比較的多く生育しているが、山梨県側では生育場所が限られている。その理由のひとつが伐採と植林による広葉樹林帯の減少ということが言えるだろう。ハウチワカエデを中心とした高い木の上に生育しているので、撮影するには望遠レンズが必用である。


    フガクスズムシソウ  平成28年6月撮影


    令和1年7月撮影 570㎜望遠レンズで撮影したもの。


    さらに2倍エクステンダーを装着して1,140㎜望遠レンズで撮影したもの。


    苔の生えた木を好んで着生する。そのほとんどがハウチワカエデである。


    白花のフガクスズムシソウ  平成30年6月 200㎜望遠レンズで撮影。


    570㎜望遠で撮影したもの。この年まではこの個体は元気に生育していた。


    令和1年7月 同じ場所を撮影したもの。苔が脱落して大部分が落下してしまった。


    その落下した個体を誰かが倒木の上に移植してくれたと聞いている。

 着生ランは木の老化や苔の脱落とともに落下して消滅してしまう運命にあるのだと思う。大きな株もいつ消滅するか分からず、いつも心配しながら木の上を見つめている。

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セイタカスズムシソウ

2020年08月06日 | ラン科
 草地に生育するランであるが、草地の真ん中では無くて広葉樹林の森との境界付近を好んで生育している。スズムシソウに似ているがこちらは茎が真直ぐに伸びる。生育地が限られており個体数も多くは無い。花期は7~8月。


    セイタカスズムシソウ  令和1年7月 富士北麓で撮影。


    令和1年7月 富士北麓で撮影


    令和1年7月 山中湖近傍で撮影


    令和1年7月 山中湖近傍で撮影


    鈴虫のような花は半透明で透けて見える。


    令和1年8月 富士北麓で撮影  この場所では大型の個体を見ることが出来た。


    令和1年8月 富士北麓で撮影  元気な花。しかしこの場所は林道拡張工事のため令和2年7月には消滅してしまった。

 林道拡張工事が始まった頃にこの場所が削り取られることを知り、移植を考えたが訪問した時には既に時遅く、削り取られた後だった。花を守ってやれず残念である。

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