
「世界一のチョコレートの店をつくる」という亡き母との約束を守る為に、12枚の硬貨を持ってチョコレートの町にやって来たウォンカ。
夢見る青年がどんな風にして旅立ったか、硬貨があっという間に無くなっても夢いっぱいの青年が、夢見る事を禁じられたチョコレートの町でどんな風に夢を実現しようとするのか。華やかな踊りと軽やかなリズムで、彼がどんな風に夢に近づき、困難を乗り越えようとするのかが、一曲毎にテンポ良く描かれる。諦めないポジティブさと明るさが画面からストレートに伝わってくる。その綺麗な色使いに心躍り、明るい気持ちで満たされる。
ホテルの女支配人に騙されても、チョコレート作りを独占する三人組になんとかして対抗しようとする姿も、憎しみや苦悩に彩られたものではなく、若さゆえの悩みのように思えてしまうのは、ウォンカを演じるティモシー・シャラメの初々しい感じが画面から溢れているせいだろう。
とにかく、歌も踊りもその初々しさがまぶしいのだ。その初々しさが映画全体を明るく温かいものにしている。シニカルな部分はウォンカを恨み彼にちょっとしたいたずら(嫌がらせか・・・)をするヒュー・グラント演じるウンパルンパに任せて、彼は自分の夢だけを追い続ける心優しい青年に徹しているのだ。
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私はジョニー・デップのチョコレート工場の秘密は未見。予告編のジョニー・デップのやや毒気のある雰囲気に気圧されてしまったからなのだが、それ故、今回は新鮮な気持ちでウォンカを演じるティモシー・シャラメの姿を楽しむ。
追記
昨日はシャラメの初々しさと書いたが、それだけではちょっと言葉が足らなかったと思う。彼から感じられるエイジレス、ジェンダーレスな自由な雰囲気が、画面に自由な想像力の風を吹かしている。