ホームレス・ワールドカップに出場するために急遽集められたメンバー達をまとめる監督は、トラブル続きで現役引退状態になっているサッカー選手のホンデ。
実母の詐欺トラブルで現役時代から雑音が絶えず、更に彼自身も芸能界への転身が噂され、これ以上現役を続ける事は事実上不可能だったのだ。
そんな中で、少しでも勝利に貢献すれば、すっかり傷ついたイメージの回復に効果的だろうとにらんだ芸能プロダクションの後押しもあり、渋々と監督業を引き受ける事になったのだが、蓋を開けてみると監督とは名ばかり。
なんと、この感動的な「ホームレス・ワールドカップ」に目を付けた放送局のプロデューサーが、実質的な監督だったのだ。
IU演じるプロデューサーの笑顔の下に隠された「視聴率ゲットの為に感動的なプログラムを」というやる気満々の野心。
パク・ソジュン演じる選手だったホンデの「まぁ芸能界に入るまでのイメージアップの繋ぎ仕事」というやる気のなさ。
この二つが融合して、なんだかまぁ、とりあえずやりましょうという、妙に脱力した雰囲気がそこかしこに感じられるのだ。
ただ、この二人の掛け合いの脱力さがこの映画の持ち味。プロデューサーは、感動を追い求めすぎると押しつけがましいといいながら、さりげなくストーリーを設定。やる気のないメンバーや、やる気があってもそれをうまく出せないメンバー等をバランスよく配置し、最終的に感動的なプログラムを作ろうと画策するのだが、もちろんそんな事が上手くいくはずもない。ストーリーを作りやすいメンバーを集めても、意図的に感動など作り出せるわけもない。
更に選手たちもそれぞれが事情を抱えて、「競技に集中します!」などと決意を固める状況でもないのだ。しかし、そんな選手たちの事情を知る事で少しずつ彼らのサッカーへの思いに答えようとするホンデ。
彼らの思いに合わせ、でもガツガツする事なくかなり緩い感じで、しかし冷たい目線はなく、一貫して愉快な映画として描いているのだ。
観る側も、作り手の思いを意気に感じて、温かい気持ちでみればいいと思う。
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2010年に韓国が初めて出場したホームレスワールドカップの試合を題材にした映画は、韓国では今年の4月に公開。ヒットが期待されるも、動員客数は112万人。7月末にNetflixで配信が始まり、グローバル部門で7位との事。