たまたま時間があったので、初日だがちょっと見ておこうと何の気なしに映画館に立ち寄ったのだが、凄い混雑だった。映画館に着いたのは11時30分過ぎだったのに、「お客様4時の回までお立ち見です。」座ってみるには6時過ぎの回まで待たなくてはいけないのだ。又出直しなどといったらきっと映画館に足を運ばないままになってしまう。何事も勢いが肝心だと思い、結局そのまま11時45分からの回を立ち見で見ることになってしまった。
日韓同時公開、シンファのエリックの映画デビューなど主演のイ・ビョンホン以外の話題も多い映画だったこと、たまたま立ち寄った映画館が余り広くなかったことなど色々条件が重なってしまったのだろう。
立ち見をしてみるほどビョンホンファンでないのにと思いつつ、2時間過ごすことになってしまった。
仲間内ではシンファのエリックの初映画出演が話題になっており、結構それを楽しみにしていたのだ。チラシには「キム・ジウン監督がほれ込んだそのカリスマ性」などと紹介されているし、実際その姿はかなりかっこいい。しかし台詞もなく本当にあっという間の出演なのだ。待ちに待ち「チョンマル モシッタ」と画面に呼びかけたらもうそれで終わりなのだ。
この映画 究極の愛を描いたと宣伝されているが、実際は愛をきっかけに始まった復讐の連鎖に惑わされ流されていく男たちの話だ。一瞬心が揺れたばかりに復讐の連鎖にはまってしまうビョンホン。そしてそんな揺れる心など知りもしないだろう、エリックの一瞬の出演。
いつかエリックも復讐の連鎖にはまってしまうのだろうが、若い彼はそんな迷いも見せず一言も話すこともなく殺し屋を演じている。
ちょっと足は痛くなったが、それなりに楽しく2時間を過ごす。イ・ビョンホンが「私の代表作になる」というだけのことはある。ファンにとっては甘い2時間だったに違いない。
(以下はサイト
私の映画玉手箱で書いた感想の再掲)
ふと魔がさしたのだろうか。7年もつかえた上司から、若い愛人が浮気をしていたら処分しろと命令を受けていたにも関わらず、何故か助けてしまうイ・ビョンホン演じるホテルの総支配人ソヌ。
宣伝文句には
「愛を知らない男の、命を賭けた選択」「壮絶な愛」「究極の純愛」という言葉が使われているが、 シン・ミナ演じる愛人ヒスがチェロを奏でる姿に心が揺れたばかりに、暴力の復讐の連鎖から抜け出せなくなった男の壮絶な戦いの映画だったのではないだろうか。
部下の裏切りを許せず、力で押さえつけようとし、落としどころが見つからない上司。たった一度の心の揺れのせで行く場所がないからと、スーツの下の白いワイシャツが赤かと見間違える程までソヌが一人戦い続ける意味はどこにあるのか。
一瞬の心の揺れ、もしかしたらこの先確かな愛情に変わっていったかもしれない心の揺れは、暴力によってねじ伏せられ、復讐が復讐を呼び、暴力が暴力を呼び、何のために戦いは始まったのか、なんのために復讐が始まったのか、この暴力と復讐の行き着く先はどこなのか、誰にも分からぬまま進み、あきれるほどの数の銃弾が画面の中を飛び交うのだ。
英語タイトルの「a Bittersweet Life 」の方が原題(タルコマン インセン)の雰囲気を伝えているかもしれない。タルコマダは情緒的に甘ったるい、甘美であるというニュアンスのようだ。
辞書には例題で
タルコマン マルロ ユーホカダ(甘い言葉で誘惑する)こんな文章が載っていた。
一瞬の心の揺れは壮絶な愛を呼び覚まそうとしたが、暴力の前に力尽きていく。しかし恋は始まる前の心の揺れが一番甘酸っぱいかもしれない。
そう考えるなら彼女に会ってしまったこの何日間かはソヌにとってまさしく「甘い人生」だったのかもしれない。