香港当局、著名歌手のデニス・ホー氏を逮捕 容疑の詳細は不明
今年の6月、今回逮捕されたデニス・ホーの活動を追ったドキュメント映画『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』を渋谷で鑑賞。
以下、その時の感想。
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香港の歌手、デニス・ホーの姿を追うドキュメンタリー映画。
香港返還時、家族と一緒にカナダに渡った彼女は、アニタ・ムイに憧れ、香港に戻って歌手の道を歩む事を選ぶ。
アニタ・ムイが亡くなった喪失感を乗り越え、自分らしく歌に向き合っていこうとしている中で雨傘運動に向き合う事になっていく彼女。
中国は、香港人が香港の地で自由を手にすることを良しとはしない方向に舵を切る。国が認め与える自由を享受さえすればいいのだと、選択肢のない自由の前に疑義を唱える事を許さないのだ。香港人として自由を求める人々の前に立ちふさがる大国。
そんな中、活動が制約されていく中でも、曲を作り、歌を歌い、そして自由を求める発言を続けていく彼女の姿をカメラは追い続ける。
映画が作られた後、香港では国家安全維持法が施行され、状況が更に厳しくなっていることを知っている中でこの映画を見る事はやや辛い事だ。それでも彼女の歌にはパワーがあり、自由を追い続ける姿はとても凛々しい。
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以前『香港は中国になったんだから、中国の言う通りにするのは当然だと思う。何も悪い事をしなければ、なんの問題もない。日々の生活を犠牲にしてまでデモをする心情が分からない』と中国人の知り合いが話しているのを聞き、なんと返していいのか言葉に詰まってしまった時があった。
国家統制の元で平和な社会(たとえ制約があっても平和に変わりはない)の恩恵を享受できることが出来るんだから、それで十分自由だという事なんだろう。
この映画を見ながら、自分の思う自由について、改めて心の中で考えて見る。
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上映後、立教大学法学部の倉田徹教授のトークショーあり。授業を受けている気分になった。以下、私の備忘録・・・
(言葉足らずの部分があったら、それは私の理解不足によるものだ)
*香港は政治的に自由であったからこそ、映画や広東ポップスが花開いた。
*国家安全維持法が施行された事で、検閲が厳しくなって公開できない映画や歌えない歌が益々増えるだろう。(法に反するという判断に政治がいくらでも自由に介入出来るようになったのだ)ただ、政治活動は根絶出来ても、芸能活動は根絶できないはず。
*日本では芸能活動を行う人が政治的な発言を行う事に批判、拒否反応があるが、生活と政治には密接な関係があり、自分の生活に関係する事に対して自分の信念を口にする事は必要な事のはずだ。
*日本は香港に比べたら自由がある。東アジアの一員として隣人として、香港の地では上映出来ない映画を上映したりする事に少しでも協力すべきではないか。
*映画に出てきたアンソニー・ウォンでなく、俳優のアンソニー・ウォンも雨傘運動に賛同した事で活動が制限されるようになった。ノーギャラで淪落の人に出演したりするも、今は香港から台湾に居を移したとの事。
映画『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』予告編
追記:このブログをアップした12月29日、香港警察の国家安全部門は民主派ネットメディア「立場新聞」の幹部ら7人を扇動出版物発行の共謀容疑で逮捕。立場新聞は同日即時廃刊を発表。