私の映画玉手箱(番外編)なんということは無い日常日記

なんということは無い日常の備忘録とあわせ、好きな映画、韓国ドラマ、そして
ソン・スンホンの事等を暢気に書いていく予定。

ヒドゥンフェイス

2024-11-23 21:21:20 | 映画鑑賞

自分が指揮者を務めるオーケストラのオーナーの娘でありチェリストでもあるスヨンと婚約し、前途洋々に思えたソンジンに突然降りかかる婚約者スヨンの失踪。当初母であるオーナーは、「自分は結婚に向かない」という動画を残して姿を消した気分屋の娘の行動を気にも留めない。しかし、クレジットカードを使った形跡もなく何日も姿を消している事に次第に胸騒ぎを覚えて未来の婿であるソンジンを呼び出すものの、解決の糸口は見つからない。しかし、スヨンの後釜として若いミジュが選ばれた事で、様々なバランスが少しずつ崩れていくようになる。

オーナーの娘と婚約した事で夢に見た家と指揮者としての未来を手に入れたものの、食堂の息子という自分の出自故、人には言えない違和感に苛まれる日々を過ごしていたソンジンの前に、スヨンの替わりのチェリストとして若いミジュが現れた事からソンジンに少しずつ変化が現れる。他人には明かせなかった自分のコンプレックスを彼女には自然に打ち明け、「シューベルトが好きなのは、曲が悲しければ悲しい程、自分自身は悲しくないと思えるから」という思いを共感しあう二人。

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家の中のあらゆる所にさりげなく設置されている鏡と、重厚な本棚。そしてその本棚をバックにして、ヒドゥンフェイスというタイトルが浮かび上がるオープニング。

スヨンが姿を消した後、ソンジンの心の隙に驚く程自然に入っていくミジュ。スヨンが居なくなった事で、隠されていたソンジンの心の闇が表に現れていく事を描いたドラマだと思っていたのだが、後半に入るとストーリーは全く違った色を見せる。鏡に映った姿は本当の姿の様にも思えるが、左右が逆に見えるのが常。どんなに頑張っても鏡越しに見えるのは本来の姿とは違うものだ。更に鏡越しに見る姿に手出しは出来ない故、歯がゆく、鏡に映った姿はどんどん違った姿に変化していく。

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せっかくこの映画を観る為に渡韓した為、11/21と11/22と2回鑑賞。展開を分かっているのに、2度目の方が何倍も面白く映画見る事が出来た。

1回目はチョ・ヨジョンが演じる婚約者スヨンの行動に翻弄されるスンホン演じるソンジンの姿に、この映画はスンホン演じるソンジンの映画ではなく、チョ・ヨジョン演じる婚約者と彼女の後釜となったパク・ジヒョン演じるミジュの映画だと思って鑑賞。ただ、全てを知った上で再び見ると、人の奥底にある支配感情や、どうやっても打ち消す事の出来ない強い所有欲など、人の心の奥底にある感情を驚く程冷静にしかし熱く見つめた映画であると感じる。ラストシーン前、たった一つの何気ない一つの動作に、自分ではコントロール出来ない感情の強さ、恐ろしさ、残酷さを感じる。スンホン演じるソンジンはその残酷さをどんな風に受け入れているのか・・・なんとも不思議な感情を残す映画だ。

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ミジュを演じたパク・ジヒョン。身体もキレイだが、上気した顔が驚く程生々しい。又、場面によってその生々しさ具合にハッキリした差があるのだ。映画の宣伝としてスンホンと一緒に出演していたラジオ番組で見せていた顔からは全く想像もつかない。

 


ヒドゥンフェイス

2024-11-21 19:29:00 | 映画鑑賞
この映画を観る為に7年ぶりの渡韓。
映画館でのチケット購入システムも更にシステマティックになっており、一言も話さずにチケットを購入出来るのは勿論、劇場前に沢山並んでいたチラシの類いも一切無くなっていた。

スペイン映画のリメイクなのだが、私は攻めた映画だと思う。観覧可能が19歳以上というだけではない。私はスンホンファンなので、興味深く見たが、誰に共感して見れば良いのか?と迷子になる観客の人もいるかもしれない。

監督は、コントロール出来ない感情に流される人間の欲望に強い関心が有るようだ。



ロボット・ドリームズ

2024-11-10 17:43:02 | 映画鑑賞

1980年代のニューヨークで一人暮らしをする犬のドック。TⅤディナーと呼ばれる冷凍食品をレンジで解凍して、テレビをザッピング。そんな風に一人寂しく過ごしていた日々が、TV通販で友達ロボットを購入した時からカラフルに変わり始める。

ニューヨークの名所を楽しそうに巡る二人一緒に過ごす休日。少しずつ心が通じ、静かに手をつなぐ姿が眩しい限りだ。そんな風に夏の終わりの海水浴も楽しかったのに、海水でロボットが錆びてしまった事で二人の穏やかな日常は突然終わってしまうのだ。ロボットを助けようにも動かなくなってしまった身体は重く、海水浴場は翌年の夏まで閉鎖されてしまうのだ。何とかしてロボットを助けたいドックだが助ける術はなく、ロボットは寒い海辺でひと冬を過ごす。

翌年の夏の海開き、ドックがロボットを助けに行くものの彼の姿はない。スクラップ工場に送られてしまったロボットはアライグマのラスカルに助けらる。バラバラになった部品を回収し、見つからなかった胴体はダブルラジカセとなり、斬られてしまった足を新しく作ってくれたラスカル。ダブルラジカセからはロボットとラスカルそれぞれの好きな歌が流れる。ロボットは第二の人生を歩み始めていたのだ。

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シンプルな線でありながら、次々と変わるアングル、ロボットとドックのちょっとした目の動き。セリフは一切ないのに、それらのシンプルな動きと♪Do you remember?The 21th night of Septermber?と二人のテーマソングのように流れるEW&FのSeptemberの力で言葉がない事を忘れてしまう。

突然訪れた別れと、それぞれ新しいパートナーと歩き出してからの突然の再会とロボットが見せる大人の行動。振り返らずに別々の道を歩いて行く姿も二人一緒に過ごしていた時と同じように眩しい。

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エンディングロールにYuko Haramiさんという名前を見つける。(検索してみたところ)パブロ・ベルヘル監督の奥様との事。

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入場者プレゼントでカレンダーを貰う。

 


第37回東京国際映画祭③

2024-11-02 19:47:49 | 映画鑑賞

会期中は、上映会場などで、取材記事や映画祭情報が掲載されたデイリーペーパー「TIFF Times」が配布されていると知人から教えてもらう。

公式サイトでは、デイリーペーパー「TIFF Times」の1面のみ公開されている。

東京映画祭公式サイト

デイリーペーパー「TIFF Times」PDF版 11月1日 金曜日版 トニー・レオン審査委員長 特別インタビュー

役柄に入り込む為に入念に準備をすること、現場での取り組み方、オファーを受ける際の柔軟な対応・・・

ニュートラルな考え方が伝わってくる。

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国際交流基金×東京国際映画祭 co-present 交流ラウンジ

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会場に行けないのは残念だが、こんな風に少しでも楽しめる事に感謝・・・


戦と乱

2024-10-30 21:55:02 | 映画鑑賞

宣祖(ソンジョ)が王だった時代の朝鮮。
両班の息子ジョンリョと友情を結ぶ奴婢の息子チョンヨン。

武術の科挙の試験に合格しない息子の為に両班である父が選んだのは剣術に長けたチョンヨンの身代わり受験。奴婢である身分から抜け出す為、友人のジョンリョの為、試験を受けて身分も友情も確固としたものになるはずだった未来は、ジョンリョの父の不義理と、日本的に言えば文禄・慶長の役(朝鮮では壬辰・丁酉の倭乱)の混乱により、堅い友情を結んでいたはずの二人の歯車が狂ってしまうのだ。

倭寇の侵攻により荒廃する国土に更なる混乱を起こしたのは、民を見捨てて早々に逃げ出した宣祖(ソンジョ)の行動。民衆の怒りが爆発し、両班の住居が焼き討ちにあう中、ジョンリョの妻を助けようとするチョンヨンだが、ジョンリョの妻は奴婢である彼に助けられるのを良しとせず、自ら命を絶った事で二人の友情は修復不能になる。
庶民が立ち上がって義兵となり、倭寇として残った者もいる荒廃した中、チョンヨンを信じきれないジョンリョは彼への復讐を心に王を守っていくのだ。

戦のシーンは大きなスクリーンで見たくなる迫力がある。全てに疑心暗鬼になり自分の権力を守るだけに興味がある宣祖を演じるチャ・スンウォン。奴婢から抜け出せなかった悲しみと、友と思ったジョンリョとの対峙に心が揺れるチョンヨン。更には残留した倭寇を演じるチョン・ソンイルが操る自然な日本語。個々の役柄と戦のシーンは非常に迫力があるものの、一番の肝となるチョンヨンとジョンリョの友情が歴史の中で翻弄される悲しみが空回りしてしまうように感じられるのはなんでだろうか。

カン・ドンウォン演じる奴婢のチョンヨンの思いに比べると、チョンヨンを身代わりに仕立てて手に入れた武官の地位に固執するジョンリョの焦燥感を私が上手く理解できなかったせいだろうか。

 


第37回東京国際映画祭②

2024-10-29 21:56:33 | 映画鑑賞

トニー・レオン、東京国際映画祭の取り組みを「実にすばらしい」と称賛 審査員会見で語る

橋本愛「日本で俳優をやっていて危機感を持っている」トニー・レオン、キアラ・マストロヤンニらと並んで堂々会見

映画好きなので、今までも映画祭に興味はあったが、興味の対象は、映画祭でしか見られないであろう作品や、上映作品に合わせて来日する俳優達の動向が主な物だった。

正直、コンペティション部門の最高賞の東京グランプリについて関心を持った事は殆どなかった。

ただ、今年は審査員長がトニー・レオンということもあり、「審査員長としてどんな作品についてどんなコメントをしたりするのか」が非常に気になる。グランプリもそうだし、それ以外の作品のどんな部分に興味をひかれたのかとか、俳優として、審査員長としてどんな言葉を発するのかとても気になる。

映画好きであれこれ見て、ここにテキストととして感想を残してはいるものの、基本的に一人で見て、一人であれこれ考える事が多く、リアルに感想を語り合うチャンスは多くない。

そう考えると、好きな俳優であるトニー・レオンが自分が出演している映画について語るのでなく、自分が観た映画について俳優としてどんな風に語るのか聞くチャンスがあるということは、私にとってかなり特別でかなりうれしい事だ。

 

 

 

 

 


第37回東京国際映画祭

2024-10-28 21:52:20 | 映画鑑賞

今日28日から11月6日まで日比谷、有楽町、丸の内を中心に開かれる東京国際映画祭。

コンペティション部門は勿論、今後公開が予定されている作品から、映画祭でしか見るチャンスがないかもしれない作品、旧作から新作まで各種テーマに沿った作品など色々上映される。

残念ながら直接会場に足を運ぶ事は出来ないのだが、国際交流基金×東京国際映画祭 co-presentの交流ラウンジの様子が配信でも見られるとの事。ジョニー・トーの登壇もあるとの事なので、配信でチェックしたいと思っている。

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コンペティション部門15作品中、中国、台湾、香港等中国語圏の作品があり、日本の作品も3作品入っている。それらの作品に対する審査員長のトニー・レオンの総評が聞けるのが今一番の楽しみ。

 

オープニングセレモニー|Opening Ceremony 第37回東京国際映画祭|オープニングイベント


侍タイムスリッパー

2024-10-26 21:16:19 | 映画鑑賞

命を受けて京都で長州藩士に刀を向けた会津藩士。刀を合わせ、今まさにという瞬間に雷が落ち、気づいた時は140年後の京都の撮影所の中。

そんな風に自分の意志に関係なく、まったく別の世界に足を踏み入れる事になってしまった高坂新左衛門。街中のポスターで幕府が倒れた事を知るも、帰る術の無い彼は、なんと撮影所の中で斬られ役として生きていく道を選ぶのだ。

帰る術がない事を嘆くでもなく、現代の事をあれこれ追求することもなく、自分が出来る事は・・・と斬られ役の道を選び、選んだからにはその事に真摯に向き合う姿がなんとも清々しい。本物の剣士故、飲み込みも早い。どんどん見せる殺陣のスキルも上がる。140年の時間差も、周りの人への配慮を欠かさず、敬意と感謝の気持ちを忘れないという、その真面目さ故乗り越えるのだ。

140年の時間差を乗り越えて現代で真摯に生きる姿と、劇中劇で斬られ役に徹する姿との間に境目があまりないため、観ている側も思わず、どちらも本当の姿のように錯覚し、どちらの姿も熱く応援したくなってしまうのだ。

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子どもの頃、夕方、おやつを食べながら見た数々の時代劇の事を思い出す。


国境ナイトクルージング

2024-10-24 22:05:39 | 映画鑑賞

中国東北部、北朝鮮との国境の街延吉、フィギュアスケート選手時代の傷を抱えながらバスガイドをする若い女性。
延吉は延辺朝鮮族自治州の街。街で行われる結婚式は、新郎が中国人で新婦は朝鮮族。司会者は中国語と朝鮮語を操り、新婦の親族たちはチマチョゴリを着て祝宴を盛り上げる。街中の飲食店にはハングルの看板が掲げられ、若者たちが集うバーで歌われるのはK-POPだ。
国境の街らしく二つの文化が自然に交じり合う。

ガイドの女性ナナは、観光客たちと一緒に朝鮮族の民俗村に行けばカメラマンになり、観光客をツアー向けの料理店に送り届ける。
そんな彼女は、自分のツアーに一人で参加し、携帯を失くした男性を友人と一緒の食事に誘う。気楽にツアー客に声を掛けるその様子に楽しさは感じられない。自分の寂しさを紛らわすかのように声を掛けた彼女と同様、ツアーに参加した若い男性も彼女の友人と一緒に彼女の家に上がり込み飲み明かす。

診療を促すクリニックからの電話を何回も受ける男性の笑顔は力なく、休みなく2週間働いたという彼女にも心からの笑顔はなく、叔母の食堂で働くナナの友人にも底抜けの明るさは感じられない。何もせずにはいられないが、具体的に何かをしたいわけでもない。そんな3人がただ、流れる時間を何かに使いたいがために、長白山にある天池を見に行こうと寒い中車を走らせる。

そんな姿を見ながら、なぜか自分も同じように目的もなくどこかに向かっているような気分になる。冗談を言い合い、ただ寒い中、車を走らせる姿を見ているだけなのだが、彼ら同様に自分もどこか少しだけ解放されたような気持ちになる。

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長白山(朝鮮名:白頭山)は朝鮮民族にとっての聖地。そこで彼らが美しい物語のように語った話は、朝鮮の始祖神、壇君の話。国境の街、お互いの文化が混ざり合う地ならではだ。

王子が人間界に降りて来た際、虎と熊が王子に人間になりたいと訴える。それを聞いた王子は、ヨモギとニンニクを彼らに与え、それだけで洞窟の中で100日過ごす事が出来たら人間にすると約束する。虎は逃げ出すものの熊は耐え抜き美しい女性になり自分を人間にしてくれた王子と結婚をして壇君が生まれる。

彼らが遭遇する熊にもそんな意味が込められていたのだろうか。

 


破墓/パミョ

2024-10-20 19:46:44 | 映画鑑賞

巫堂(ムーダン)のファリムとボンギルは、跡継ぎが次々と謎の病気にかかるという海外在住の家族から桁違いの報酬でお祓いの依頼を受ける。

韓国にある彼ら一族の墓に原因があると踏んだ巫堂(ムーダン)のファリムとボンギルは、墓地の場所を見極める風水師と改葬を取り仕切る葬儀師に声をかけ、家族の意向を受けお祓い改葬を一緒に行うのだが、掘り出した棺には禍々しい秘密があり・・・というオカルトチックな展開。

お祓いを取り仕切る巫堂(ムーダン)のファリムとボンギルを演じるキム・ゴウンとイ・ドヒョンの「私たち若いけれども実力はあります」という貫禄さえも感じさせる熱量。お祓いにも若さとプロフェッショナルさが感じられ、風水師を演じるチェ・ミンシクと葬儀師を演じるユ・ヘジンとチームを組むも年配の彼らと同等にやりあう。

掘り返し棺を運び出し、お祓いを済ませてその後祟りのような事がなければ彼らの仕事は終了だ。原因究明が彼らの仕事ではないのだが、不思議な出来事は続き、彼らは再び墓に隠された秘密に向き合わねばならなくなる。

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ここからは、恨(ハン)という感情を忘れることなく、それを自分たちのアイデンティティと捉える韓国らしい展開。恨(ハン)は相手があってこその感情なので、ここで見ている者が一致団結する相手が必要となる。そこで白羽の矢が立つのは・・・という事なのだが、ここからの展開の詰めが甘い。ストーリーとしてはここからの展開が見せ場なのかもしれないが、私には墓を掘り出すというのが一番の見せ場に思えたので、映画的な熱量は随分トーンダウンしていたなと感じてしまう。おどろおどろしい場面が続くも怖さはそれほど感じず。

改葬アベンジャーズの4人の熱演で面白く見るも、後半の熱量が薄れた安易な設定に思わず苦笑い・・・

 

 


2度目のはなればなれ

2024-10-14 19:01:44 | 映画鑑賞

2014年の夏、イギリスの海辺の街ブライトンで妻と二人で施設で暮らす退役軍人のバーニーは、施設に妻を残し、一人、上陸作戦70年記念式典が行われるフランスのノルマンディーに向かう。どんなに長い時間が経とうとも、彼の心には整理のつかない事があったのだ。

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フェリーの中で出会う、空軍として大戦に参加した退役軍人とアフガニスタンに従軍したという若者。誰の上にも戦争の傷は大きく心に影を残す。若者も同じように戦争の傷を自分でコントロールする事が出来ず苦しんでいる。

どんなに幸せに暮らそうとも、どんなに未来があろうとも、戦争の影は容赦なく人生に暗い影を落とす。その気持ちに整理をつける為にどれだけの勇気とどれだけの悲しみが必要なのか。

いつでも二人で過ごしていても戦場であった事を妻には打ち明ける事が出来なかったバーニー。ツアーに入る事が出来なかった彼が、小さなビニール袋にパスポートと財布を入れ、一人フェリーに乗り、ノルマンディーに向かうのには、それだけの思いがあったのだ。

人の優しさを感じながらも、幸せで上書きする事の出来ない戦争の傷の惨さを思う。

映画『2度目のはなればなれ』予告編|10月11日(金)劇場公開


シビル・ウォー アメリカ最後の日

2024-10-13 18:33:23 | 映画鑑賞

連邦政府から何州もが離脱したアメリカ。大統領のいるワシントンDCにはテキサスとカルフォルニアの同盟による西部勢力が迫る。

未来ではあるかもしれないが、限りなく現在に近い未来だ。何故何州もが離脱したかははっきりとは分からない。少なくとも私は分からなかった。2期しか出来ないはずの大統領が3期目に突入し、更にはFBIも解散させたと簡単に語られるが、各州がそれだけで連邦政府を離脱するとも思えない。

ただ、各所で政府軍と西部勢力が衝突する内戦が散発し、内戦に乗じたような略奪が行われ、誰が味方か敵かも分からないような銃撃戦が各地で起こる。一度起こってしまった内戦は簡単には止まらない。

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今、世界各地で行われている事を考えると、この映画を観ながら「アメリカでこのような内戦が起こる事わけがない。荒唐無稽だよね。あり得ないよね。映画の中の出来事だよね」などとは思えない。

むしろ、私があり得ないと思ってしまったのは、内戦の最前線にどこまでも食いついていく戦場カメラマンと記者たちの姿だ。当初「14か月もの間取材を受けていない大統領の単独インタビューを狙う」という目的は受け入れる事が出来た。ただ、その後、内戦の最前線、西部勢力がワシントンDCの心臓部にまで迫る勢いの中、銃弾、手榴弾が飛び交う中でもカメラを向けその様子を記録しようとするカメラマンとその様子を見守る記者、そして彼らを邪魔者扱いせずに自分たちの仲間のように受け入れ、全てを記録させようとする同盟軍の対応に驚いた。カメラマンや記者達の矜持も分かるが、あのように生々しい写真の数々を見せられた人々はそれをどのように消化すればいいのだろう。

「お前は、どの種類のアメリカ人だ?」という台詞にも驚いたが、どこまでも情報と記録を追いかけるその姿にも驚く。


武道実務官

2024-10-06 19:14:59 | 映画鑑賞

父親のチキン店の配達を手伝いながら、柔道、テコンドー、剣道と各種武術を学び、それ以外の時間は友人たちとeスポーツで過ごす青年ジョンド。

街中で偶然、保護観察中の元犯罪者ともみ合っている武道実務官を助けた事で、武道の腕を買われて人手不足の武道実務官にスカウトされることになるのだ。

彼の仕事はあくまでも保護観察官と一緒に元犯罪者が再犯を犯す事を阻止する役。基本的には電子足輪をつけた彼らの動きをネット上で監視していくことが中心なのだが、抑止力役として働く中で制約は多い上に、自分たちの安全を確保する事にも苦心する必要がある。

負ける事が嫌いだからと武術を学び、友人たちとビデオゲームの対戦に励んでいたジョンドにとって、保護観察官と共に保護観察中の元犯罪者が再犯を阻止する仕事は全く未知の世界だったはずなのだが、その仕事に思わぬ適性を見せる彼。

「楽しい事だけをしたい」と言っていた素直な青年は、自分をスカウトしてくれた保護観察官をeスポーツ仲間に早々に紹介して焼肉で兄弟の契りを結び、保護観察官の言葉一つ一つを真面目に聞き、素早くそして積極的に仕事になじんでいくのだ。

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「楽しい事だけをしたい」と言った青年は偶然に武道実務官になり、犯罪の渦の中に巻き込まれそうになりながらも、曲がる事なく自分の長所を生かして仕事に邁進し、困難にぶち当たると、eスポーツ仲間と手を組み「法を犯さずに犯行を阻止する」ということに正面から立ち向かう。eスポーツ仲間との行動は、まったくもって少年探偵団ならぬ青年探偵団といった様相で、驚く程直球勝負の映画だ。2時間越えの映画が多い中、1時間49分という見やすい映画だ。寄り道はせず勧善懲悪に徹する潔さがある。

Netflix で鑑賞

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韓国ドラマでも、保護観察中に電子足輪で行動を監視されている場面が時々出てくる。

先日の韓国語レッスンのテキストのタイトルは『性犯罪者の身上情報公開 第二のNIMBY 憂慮』だった。

性犯罪者が出所した際に、その近隣に住む人々に性犯罪者の身上情報を公開することは再犯防止の為に行われているとの事。子どものいる家庭などでは安全面の為にそのような情報を必要とされるも、そうすることで犯罪者を二度処罰することになるのでは?性犯罪者が近隣に住んでいる事が分かると自分の住んでいる地域の資産価値が下がるのではないか?という事が取り上げられた結構重い内容だったが、その中でも電子足輪について触れられていた。

 


本日公休

2024-10-04 19:06:55 | 映画鑑賞

台中の理髪店を一人で切り盛りする女性店主。独立している子ども達の私生活の問題に胸を痛めるものの、腕の確かさと沢山の常連さんに支えられ、40年間店を守って来た。

暫く顔を見せない常連さんには、来店を促す電話をさりげなく入れ、頭の形を見れば似合う髪型が分かるという技術力に裏打ちされた言葉の確かさ、道具を丁寧に扱う様子。常連さんと交わす言葉の一つ一つに彼女と常連さんの人生を感じ、さりげない立ち居振る舞いに、キチンと自らの足で歩いて来た女性の人生を感じる。

優しい元娘婿に車を整備してもらい、自らボルボを運転して長年の常連さんの元を訪ねる様子は、短くとも味わい深いロードムービーだ。ただ、自分の人生の終わりに向かって歩む姿にも寂しさはない。自分の技術で生きてきて、これからも出来る限りそうやって生きていくであろうしなやかな強さを感じるのみ。

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心優しい元娘婿を演じるフー・モンボー、彼と離婚した次女と一緒の美容室に勤務するスタイリストを演じるリン・ボーホン、女性店主が車を運転する途中に出会う青年を演じるチェン・ポーリン。

フー・モンボーの演技が印象的なのは勿論、特別出演のリン・ボーホン、チェン・ポーリンも特別出演とは思えないいい役だ。

理髪店の店主を演じるルー・シャォフェンは長いブランクを経ての現場復帰との事だが、そんな感じは一つも感じさせない。

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理髪店のサインポールは万国共通との事。

お互いに気ごころしれた常連さんと店主が交わす何気ない会話も万国共通だろう。何気ない毎日、皆が髪型に込める思いにそれぞれの人生を感じる。

洪佩瑜 @_hungpeiyu 《同款》Official Music Video(電影【本日公休】主題曲)


サウンド・オブ・フリーダム

2024-09-29 19:15:27 | 映画鑑賞

アメリカの国土安全保障省の捜査官ティムは、組織的に誘拐された少年少女の追跡捜査を担当していたが、アメリカ国内で出来る事は加害者を逮捕することだけだ。加害者を逮捕しても、組織は金になる誘拐を南米で行い、再び子ども達をアメリカに送り込むといういたちごっこが行われるのみ。自身の仕事の不毛さを感じ、ティムは実際に幼児誘拐行われているコロンビアに単身潜入することを選択。最終的には仕事を辞め、地元警察と手を組み、更には協力者と手を組み、誘拐された子ども達を助ける道を探そうとする。

子ども達を売買する事で想像も出来ないような大きな金額が動く。子ども達を精神的にも肉体的にも痛めつけられる事で、金金銭的に潤う者と自分の欲望を満たす者が何人もいるという現実。

本編終了後、実在の人物ティム・バラードを演じたジム・カヴィーゼルの映像が流れる。「ストーリーテラーこそ力を持つ」と、この映画では、そのストーリーテラーは売買された姉弟であると二人の置かれた境遇に触れ、映像を一時停止することが出来ない映画館でこそこの映画を観て欲しいと熱く語っている。

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映画は制作後、公開まで5年かかったとの事。

実話を基にした映画のチラシには『アメリカの公開時には賛否両論が巻き起こる中、異例のヒットを記録』と書かれ、映画の公式サイトで紹介されている海外レビューとして『文化論争プロパガンダとして片づけるに値しない作品。』『この映画を取り巻くすべての雑音をシャットアウトせよ。』『いずれの政治的立場にも利用されるべきではない重要なテーマに触れている。』という文章が掲載されている。

少し検索するとニューズウィーク日本版の『小児性愛者や人身売買業者が登場する『サウンド・オブ・フリーダム』は派手なQアノン映画か? まともな批評に値する作品ではない理由』というタイトルの記事がヒット。

ぴあ映画のサイトには『児童人身売買の惨状を描く衝撃作『サウンド・オブ・フリーダム』 監督が制作の裏側を赤裸々に語る』という記事、『『サウンド・オブ・フリーダム』──アメリカで深刻な社会問題となっている児童人身売買の実態』というタイトルの池上彰氏らしいニュートラルな記事が掲載されている。

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87席の劇場で見たのだが、ほぼ満席。