ブロードウェイのミュージカル業界で第一線に居続けるのは大変らしい。かつての人気を取り戻すべく初日を迎えた新作も「ナルシスト加減が最悪」と酷評され、あっという間に打ち切りの憂き目にあう主演俳優達。そんな彼らが背水の陣で臨んだ起死回生策は「同性の友人を連れて卒業ダンスパーティに出席したい」というインディアナの女子高生の思いを応援するというプロモーション。
相手の状況も考えない自分達のイメージアップだけを狙った押し掛け善行が受け入れられるはずもない。しかし女子高生の真摯な思いを感じ、本当に応援したい気持ちが芽生えてくる俳優達。
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高校を舞台にブロードウェイのミュージカルスターたちが暴れにやってくる!という展開なので、応戦する高校生たちもキレッキレのダンスを踊りまくる。その高校生らしからぬダンスで鍛え上げられた体格に、最初は『高校生らしい初々しさはどこに?』と思うが、ストーリーが進む内にそんな疑問も浮かばなくなる。逆にそのキレッキレのダンスが心地よくなってくるから不思議だ。
「ガールフレンドとプロムに出たい」という女子高生の思いを応援したい校長の思い。それを突飛な考えと受け入れないPTA会長の強い反対の裏側にある母としての思い。そして自分の思いに正直でありたい女子高校生の思い。更には自分達のイメージアップの為にインディアナの田舎までやって来た、自分の心配ばかりしている心がすさんだブロードウェイの俳優達の思い。そんな各人の思いはプロムをめぐって少しずつ変わっていくことになる。
事情は色々あれど、本当の悪者は誰もいないので、気持ちよく見られるミュージカルだ。なぜショッピングセンターで高校生が踊りまくるのか?なぜ学校の廊下で皆が歌い上げるのか?そんな事は見ている内に気にならなくなる・・・
落ち目の女優を演じるメリル・ストリープとなかなかチャンスがつかめず万年コーラスガールの女優を演じるニコール・キッドマン。この二人の圧はなかなか凄い。それに負けない初々しさを見せる女子高生カップルも可愛らしい。見終わって楽しく、そして元気が出る。
*Netflixで視聴。
『ザ・プロム』予告編 - Netflix