自分の敵は有能はカウンセラーとして勤務する医師だと分かるスヨル。「君の替わりに殺してあげる」と自分の父親を殺めた少年が22年の時を経て自分の目の前にカウンセラーとして出て来たのだ。
自分を守ってくれたKという人格を使い、彼の魂胆を探ろうとするスヨルだが、何人もの学生をコントロールし不幸のどん底に陥れた彼故、そんなに簡単にしっぽは出さない。学校に保存してある面談記録の映像を不法に持ち出し、彼がマインドコントロールしている証拠を見つけるものの、決定的な言葉を使ってのガスライティングではないため、これでは絶対的な証拠にならないのだ。敵ながらあっぱれと言いたい悪魔ぶり。
かつて自分が犯人に仕立て上げた男性を再び手紙でコントロールし、更にはスヨルの目の前で男を殺め、病院のカウンセリングを通してスヨルの母親に「スヨルが殺人を犯したから庇わないと」と思い込ませ、警察にスヨルの家に踏み込ませその証拠品を押収させる。先の先まで読んで罠をしかけ、最後の最後で伏線を回収させるように殺人を行うのだ。
結局、医療機関行きとなったスヨルが満を持して脱走するのは何か月もかかるのだが、そんなスヨルは再びあのヤブ医者(本当のヤブ医者ではなかった。以前は精神病院の病院長だったのだ。それ故、いままで適切な治療をスヨンに施していたのだ)を頼り、カウンセラーが何故別人に成りすましているのかを探ろうとするのも、なんと彼はお見通しだったのだ。一体いつカメラを設置して同じ医者の彼を盗撮していたのか・・・ちょっと都合が良すぎるが、それだけ切れ者ということか。「上手く立ち回っていればいるほど、仮面を剝がされる事を恐れる」というヤブ医者の言葉を信じて、カウンセラーの仮面をかぶった殺人鬼に対峙するスヨル。
当初、黒スヨルと白スヨルが力を合わせ麻薬組織と対決する話だと思っていたら、突然のギアチェンジでスヨルの少年時代の暗い思い出が大きな比重を占めるストーリーになったが、終盤になってその麻薬組織の女社長がクローズアップされるという原点回帰のような展開。麻薬組織の女社長は運命の右腕をカウンセラーである殺人鬼に殺され、復讐を誓っていたのだ。彼女の常軌を逸した行動の数々を見て来たので、彼女ならではの狂気的で情熱的な復讐に、ありえないと思いつつ何となく納得してしまう。緻密な殺人鬼に対峙するのはあれくらいの熱量でないと無理だろう。
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ガスライティングという理不尽な行動に翻弄され、自分で自分を守って来たスヨル。イ・ドンウクのソフトな風貌でハードな二重人格を演じる為に、ウィ・ハジュンが別人格を担当という変わったチャレンジで乗り切るという風変わりな設定がなんとも不思議な感じだった。