
補佐官からヘジュの過去とスンヒが何をしようとしているのかを知り駆けつけるジュンドの政治家らしい行動力に驚くが、その行動力が本当にヘジュを助ける事になるのかは難しいところ。このトラブルはヘジュが警察に駆け込んだ事よりも、あった事を隠ぺいしようとしたスンヒの兄とスンヒの母の心持に原因があるように思えるのだが、しかし、ヘジュがきっかけを作ったという事にだけにフォーカスすると「ヘジュが悪い」という事実がくっきりと浮かび上がる。スンヒの思考が「あなたの夫は言わなくてもいい事を生放送で言ったから医大生が自殺し、あなたが警察に言ったから兄は自殺した。二人は殺人者の似たもの夫婦」という事になるのも、同じような流れだ。
ヘジュは、スンヒの兄が自殺した事で自分がされた事を証明する機会を失った事から改名して生きるしか道がないと思い、ジュンドも加害者は罰せられるべきという正義感から死亡後も事件の捜査を続ける事が出来る法案と通そうとする。(弁護士出身とは思えない考え方に、政治家としての利があるということなのか・・・)どちらがいいかという事より、どちらを選ぶかという考え方の違いにも思えるやり取りだ。二つの道は選べないし、自分が選んだ道を進むために、相手に譲歩を頼まねばならない。
スンヒの夫でヘジュの元同級生だったキヨンは、義母の為にとスンヒに謝罪する事を頼むのも同じ事だろう。誰かにとっては正義でも相手の誰かにはそれは許せない事なのだ。
ヘジュは自分の発したちょっとした言葉をスビンが覚えており、彼女なりのやさしさを見せた事で心が揺れ、スビンも同様に心が揺れるものの、逆にお腹の子が既に亡くなっている事が言い出せなくなる。こんなヘジュやスビンの心の揺れは自然に理解できるものの、弁護士出身らしからぬ方法で世論を形成し、性犯罪の加害者が死亡した後も事件の全容を解明できる法を作ろうとするジュンドの考え方はちょっと無理があるように思える。どうしてもその後ろにある「政治家として何かを成し遂げたい」という野心が薄っすらと見えてしまうところに何とも言えない違和感がある。見たくない物が見えてしまうのは、なんとも恐ろしい。彼が亡くなった息子を守るためにスビンの携帯を隠し持っていた事を知ったヘジュはどんな決断をするんだろうか・・・
****
やっぱり暗く怖いドラマだ。人の心の揺れが一番怖い・・・