市場内でスンデを出す食堂を営むイグォンの息子ヒョンと同じように市場内で製氷店を営むホシクの娘のヨンジュ。
父親同士が敵のような間柄でも子供たちは同級生。母親が父親の元を去って行った事で、父親の手で育った二人がお互いに仲良くなるのは当然だ。しかし、高校生で妊娠してしまうのは想定外。
娘をソウルの医大に通わせる事が夢だったホシクにとっては青天の霹靂だ。「子どもを産んでも勉強はできる。大学にも行ける」と大変な事はわかってはいても夢を語り未来をあきらめないヨンジュの姿を受け入れる事が出来ない父は、とにかく娘の将来を妨げる事になってはいけないと、病院に行く事を勧めるのだ。母親がいたらまったく違う展開になっていたかもしれないが、自分がギャンブルにのめり込んだ事で、妻は自分と娘を置いて家を出てしまったのだ。彼にとっては娘がすべて。妊娠が娘の将来の足かせになってはいけないと、とにかく中絶を勧める彼。娘にとっては、父親にとって幼い自分が同じように足かせになったのでは・・・と思わせる悲しい展開。
それは同じように母親が家を出ていき父と二人暮らしてきたヒョンも同じ事だ。「母さんを追い出したのは父さんだ。僕は母さんに置いていかれたんじゃない。母さんを送り出してあげたんだ。」というヒョン。息子を育てるためにヤクザ稼業から足を洗い、食堂を営んでいるイグォンにとっては、自分の息子が敵のようなホシクの娘と結婚するつもりなのは受け入れがたい事。
お互いの若気の至りからの仲違い。それを修復することもなく敵同士となった二人。人生は予想もつかない出来事が起こるのだ。男手一つで子どもを育てた時代を思い出しながら、二人の心の中に流れる歌が演歌なのは良くわかる。
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狭いコミュニティーの中、濃い人間関係の中で起こる人間模様。放っておいて欲しいと思うこともあるだろうが、多分この濃い人間関係が若い二人に助けの手を差し伸べてくれるんだろう・・・・