住み込みの工事現場で仕事をするも、仕事中にも隠し持った酒を時々口にする男性。スーパーで品出しの仕事をする女性は、廃棄される食品を持ち帰ろうとした事をとがめられて職場を首になる。
男性は仕事中の飲酒を咎められ住む所を失っても酒を止めることが事が出来ず、スーパーを首になり電気代も払えない女性は食堂の皿洗いのバイトでその場しのぎをしようとするものの、その食堂は店長の不法行為で営業停止になってしまう。
そんな二人が偶然出会う。お互いの苦境は口にせずともなんとなく分かる。でも何かを感じて次に会う約束をする二人。しかし、不幸な偶然が重なりなかなか会えない。
女性が自宅で聴くラジオからはウクライナ戦争の戦況を伝えるニュースが流れる。ニュースには小さな苛立ちを見せ、酒を口にする事を止められない男性の行動を指摘する際にやや声を荒げるものの、それ以外は特に恨み言をつらつらと語る事もない。男性も一緒だ。酒を口にする事を止められないのは心の寂しさを埋める為なのだ。それを受け止め、多くは語らない。
男性も女性も、声高に苦境を叫ぶ事もなく、誰かを恨む事もない。セリフは最小限でも劇中に流れる音楽は、竹田の子守唄、セレナーデ、マンボ・イタリアーノと驚く程雄弁に、風に吹かれる枯れ葉のように漂う二人の気持ちを語ってくれる。
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次々と辛い事が起こるにも関わらず、画面が暗い感じにならないのは、色の力が大きいのだろう。
女性が一人住む家の壁は淡い水色で塗られ、ひじ掛けが少し破れているものの赤い色のソファーはそれだけで少し部屋を明るく見せる。