初めて見た(聴いた)オペラ(楽劇)がバイロイト祝祭歌劇場での
「トリスタンとイゾルデ」だったのは極めて特異な例だろう
47年前の今日、8月19日、自分は当時西ドイツのバイロイトにいた
そして世界中のワグネリアンが集まる祝祭歌劇場で
「トリスタンとイゾルデ」は始まるのを待っていた
その入場チケットが上の写真の一番右側で、62マルクだったが
えらく安っぽいチケットだ
チケットが手に入ったのは偶然で、あるおばあさんのおかげだ
チケットがない僕等は「ズーへ・カルテ」と書いた紙を持って
祝祭歌劇場の前に並んでいた
そこで知り合った学生さんのアルバイトの女性
彼女らは演奏が始まると劇場内にいて、「愛の死」で終わる頃には涙を流していた
自分は何から何まで初めてなので、全身で音楽を感じようとした
日本での公演のように字幕が出るわけではないので、ストーリーは想像の世界だ
もっとも、事前に大枠の内容は予習していたが、それでも大半の会話はわからない
でも良かったのは一幕の毒薬ではなくて惚れ薬のお酒をお互い飲んだ場面
あのトリスタンとイゾルデのメロディが、ハープとヴァイオリンで奏された時は
なんと効果的なのだろう、、と実感した
その前の運命のモチーフで緊張感を煽る場面も言葉は分からないがドキドキしながら聴いた
二幕はなんと言っても愛の二重唱の場面が印象的
特にブランゲーネの警告は一度聴いただけで心に残った
三幕は暗くて沈鬱な前奏曲とそれに続くイングリッシュホルンの独奏が
トリスタンの心情を表現、(この部分は一幕の前奏曲よりも好きかも)
この「トリスタンとイゾルデ」のあと、翌日の「パルジファル」と
もう一度「トリスタンとイゾルデ」を体験することになった
今は昔の思い出だが、これはとてもいい経験だったと思っている
形として何かが残っているわけでないが、
自分の脳内にははっきりと記憶として残っている
祝祭歌劇場でチケット探しに勤しんで時、指揮者のホルスト・シュタインが近くを
通ったのでノートにサインをしてもらった
バイロイト祝祭劇場では幕間の時間にテラスでファンファーレが演奏される
これがとても雰囲気があって良い
バイロイト音楽祭は今も相変わらずチケット入手が難しいようだ
少し前まではもう一度行ってみたいと思っていたが
それができる時間もなくなりつつある
人は自分の過去を正当化しないと辛い
あの時の自分は今の自分と同じだろうか
今は、経験を積んでもう少し良い人間になっているのだろうか
過去を振り返っているばっかしでは生産的ではないが
過去を振り返る時間は、とても大事と感じるこの頃