私の感じだけではなく、社会的に10年から20年ぐらいの間に原子力工学はもう魅力のある分野に思われていない。
だから原発で事故を起こしてもいいということにはもちろんならないが、そういう趨勢であった。
ところが現実の電力の日本での原発依存度は30%だという。これが原発の依存度の高いフランスでは80%だという。
また、使用済み核燃料をフランスのシェルブールだかに運んでそこの再処理工場で処理をしてもらっていたが、フランスもその処理量に手を焼いたのか、もう日本の使用済み核燃料は処理をしないと言われたとか聞いたような気がする。
それで、処理された物質をどう保管するかだとか一杯の問題点が出てきていた。また、再処理も自国でしなければならないとか。
それで青森県の六ヶ所村にその再処理工場をつくって、操業しようとしているのだが、それがきちんと定常的に操業されているという風には聞いていない。
原発も危険だが、再処理工場はもっと危険だといわれているので、なかなか定常的な運転ができるようにはならないのだろう。
もっとも私の情報は古いものだろうし、それに残念ながら私は記憶のいい方ではないので、間違っているかもしれない。もしそうなら、どなたかから、ご指摘を頂きたい。
10年間くらいあるいはもう少し長く、E大学の工学部で応用物理学の講義で原子力工学の一端を講義したが、もともと専門家ではない者がテクストを見て講義をするのだから、いい講義であるはずがない。
それでも前任者のA先生がしていた講義だから、その講義をするには及ばずといわれるまでは務めた。
この講義をしていたころに武谷三男・豊田利幸両氏の「原子炉」という、岩波講座 現代物理学の1冊をちらっと見たことがあるが、原子炉の原理を記述した隠れた名著だとその当時思った。
もっとも簡潔に書かれているので、その補足をしながら現在風に書き直す必要があるのではないかと思っていた。そうすると小冊子ではなくもっと部厚い書籍となってしまうのだろうが。
(2011.4.6 付記) 私の使っていた講義のテクストは大山彰著「現代原子力工学」(オーム社)であった。大山さんはもう亡くなられているので、この本が今でも出版されているかどうかは知らない。
これは私の上の教授だったA先生が選定したテクストであった。
もっとも原子炉の臨界条件を解くところは他の本で勉強しないとこの本ではよく分からなかった。このテキストにはその辺のことがきちんとは書かれていなかった。