PCBでも放射能でも自然界に拡散してその濃度が薄まって行くというのが、普通には熱力学第2法則のエントロピー増大の法則による理解である。
ところが実際にはこのエントロピー増大の法則に一見したがわないような現象が起こる。それが生物濃縮といわれる現象である。
これはビキニ岩礁で水爆実験をアメリカが行った後で、高放射能に汚染されたマグロを獲った漁船が静岡の焼津に帰って来た。
このマグロはもちろん放射能に高度に汚染されていたために地下深く掘られた穴に廃棄されたが、このことから放射能の生物濃縮という現象が起こるということが知られるようになった。
もちろん、熱力学の第2法則が破れている訳ではなく、破れているように見えるのは対象を限って見たための見掛けにしかすぎない。
しかし、外界に放射能汚染をした物質を放出したときにそれが希釈されて薄まるので害がないという説はためにする議論でしかないと思う。特に魚や野菜等の生物にはこういう生物濃縮という作用が起こるからである。
もちろん、この現象を逆に使う可能性はある。それはある一時期、そういう魚を獲り、野菜を育ててそれを食べないで廃棄することによって、自然界に広がっている放射能を少しでも少なくするという考えはあり得る。
もっともそれですべての放射能が取り去れるという考えは浅はかだろうから、単にほんの気持ちだけの除去にしかすぎないのだろう。だが、放射能除去の助けに、そういう考えを使うというアイディアはここにある。
(2011.5.9付記) そういえば、福島の小学校とか中学校のグランドに「ひまわり」を植えてそのひまわりに放射能を濃縮させ、それで土壌の放射能汚染を減らすという方法をとったらどうかという記事を新聞で見た。私と同じようなことを考えている専門家がいるということであろう。しかし、これは時間がかかるのが難点である。