ムラ―教授の白熱バークレイ講義(第2回)はおもしろいものであった。
彼はいろいろなクリーンエネルギーを検証するが、太陽光エネルギーはあまり有望なものとは考えない。それがどうしてだったかはあまりはっきり覚えていないのだが、結論はそうである。
これはインフラコストの問題であったろう。送電網が太陽光エネルギーを送電するのに都合よくはできておらず、その送電網をつくるのにインフラコストがとてもかかるということだったと思う。
風力発電は有望であるが、なかなか適地がすくない。洋上と僻地というか人里離れた地方とが適地である。
ムラ―さんが一番有望というのはネガワットという要するにエネルギー効率を向上させた、省エネ機器の開発である。要するにエネルギーのロスが大幅になくなれば、結局のところそれは大きな発電所をいつもつくることに相当している。この可能性が一番あるという。
たとえば、建物の屋根の上に赤外線を反射する塗料を塗るだけでも大いにエアコンの駆動に使うエネルギーを省くことができるという。
また、家の外壁と内壁の間に断熱材を入れるだけでエアコンとか冷暖房の費用とエネルギーを減らすことができる。
電気自動車は電気料はガソリンよりも単価が安いが、結局バッテリーの交換が問題であるという。バッテリーが高くて、500回くらいの充電をすることができるだけで、それ以上は現在の技術では無理だという。そこがネックである。
車の燃費を上げることはまだ可能であろうという。現在21km/lくらいは可能だという。これが30km/lくらいはまだできるのではないかと予想している。
波力は波の高さが1mくらいで電力を得ることができるが、装置のコストとメンテナンスの費用が問題だという。潮力発電もありるというが、あまり干満の差がアメリカでは大きくないので有望ではない。フランスでは干満の差が8mであるので、有望である(注)。
バイオの燃料の可能性はある。トウモロコシは実の部分しか使えていないのでダメだが、サトウキビは可能性が大いにある。植物のセルロースの部分を利用できるようになれば、可能性はもっと開けるが、現在はまだ利用できてはいない。人間や動物ではこのセルロースの部分も利用ができているので、将来は利用できるようになるのであろう。
核融合はいまもまだ未来のエネルギーである。レーザー核融合とかTokamakというロシアで開発されている方法が有望であるが、現在は入力の方が出力よりも大きいのでこれからの問題であろう。
地熱はアメリカでは有用ではない。日本とかなら有望であろう。これは基本的に地下深いところでの放射性元素の崩壊による崩壊熱を使うことにないのだという。
石油に代わる代替エネルギーの最大の候補は天然ガスだとムラーさんはいう。天然ガスからも炭酸ガスが出るが、石油ほどは出ないという。
以上の細かいところでは私のノートが間違っているかもしれないが、おおよそのところは正しいであろう。
燃料電池の話は出て来なかったが、燃料電池は水素を燃やすことになる。水素吸蔵合金の研究をしていた私の友人の物理の研究者もいたが、さてあまり現在の見通しはよくないということであろうか。
(注) 北海沿岸は遠浅の海岸であり、干満の差が大きい。このことはこのブログでも何回か触れたことがある(ドイツ語で遠浅の海岸を-s Wattenmeerという)。
フランスのブルターニュにある小島ル モンサン・ミッシェル(le Mont-Saint-Michel)では海岸の潮が引くと何キロも平らな海底が現れ、馬車でもそこで行けるぐらいだが、その潮の満ちてくる速さは馬が駆けてくるぐらいの速さだと聞いたことがある(今では橋がかかっており、歩いていけるそうだ)。
その8~10mの潮の干満が毎日2回あるのだから、北海沿岸は潮力発電には適しているのだろう。だが、こういう地の利のあるところは少ない。
東日本の大地震で10mを越える津波が起き、被害が大きかったことは誰でも周知の事実だが、北海沿岸ではこの8~10mの潮の干満が毎日起こるのだから、大変なのだとドイツ人のR氏がいつも言っている。