渡辺恒雄あとつぎ宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

どうなる岡田克也の2014年、岡田ミクス3本の矢(1)アベノミクス(2)成長戦略(3)財政健全化

2014年01月06日 22時16分05秒 | 岡田克也、旅の途中


 2014年平成26年(第46期衆議院、第22・23期参議院)の岡田克也さんはどうするでしょうか。

 民主党最大の経済通である岡田克也さんは、昨年末に公式ホームページに「岡田かつやが語る国政の重要課題」(http://www.katsuya.net/kokusei_kadai.html)を発表。

 続いて、仕事始めに「2014年―もう一度、民主党を力強い政党に生まれ変わらせる」(http://katsuya.weblogs.jp/blog/2014/01/post-fcb3.html)を発表しました。

 年末年始、岡田克也さんは「私は、予算委員会で是非安倍さんと議論したい」と主張。海江田万里代表・松原仁国会対策委員長に対して、先の臨時国会でつとめた衆議院予算委員(民主党は7名)の続投を要望しました。

 そのうえで、安倍晋三首相(自民党総裁)と黒田東彦・日本銀行総裁による、アベノミクスを評価しました。

 1本目の矢、黒田日銀の「2年間でマネー2倍」について、岡田さんは

1本目の矢、異次元の金融緩和は確かに円安を招き、輸出を増やし、景気回復の一助になっています。マクロで見たときに、輸出の増加が全体の景気を押し上げていることは間違いありません」、「デフレ脱却の可能性が出てきたのではという期待感を抱かせる状況は、私は非常に素晴らしいことだと思います

と評価しました。

 民主党国会議員では、アベノミクス1本目の矢に対して最大級の賛辞を送りました。

 ただ、2本目の矢「公共事業の増額」について、岡田さんは

公共事業の増加についても、短期的には景気を押し上げています。しかし、現場では人手不足で人件費が上がり、資材価格も上がっています。そして、これを長く続けるということになれば、財政を悪化させることは間違いありません

 と語りました。

 優秀な作業員の取り合いによる人件費増と、建築資材の高止まりにより、公共事業による景気押し上げ効果に関して2014年は天井にあたるとの予測です。

 そして、3本目の矢「成長戦略」については、岡田さんは

 「人口減少が始まった日本で経済成長していくためには、生産性を高めるしかありません」とし、「規制改革であれば、いろいろな既得権とのぶつかり合いになりますので、多くの支持団体を持つ自民党にとっては、民主党よりも更に困難な課題です。TPPについても、国内対策を含めて逃げずにしっかりと取り組んでもらいたいと思います

 としました。

 規制改革とTPPは民主党の方が進めやすいとしながらも、政権交代は早くても2016年となりそうなので、岡田さんは

 「私は、日本が抱える様々な困難の中で、最大のリスクは財政だと思います。国だけで1000兆円を超える借金を抱えて、5年もつかどうか、10年は絶対もたないと私は考えています。いままで大きな赤字を抱えた国は、最終的には戦争か超インフレで解決するしかなかったとさえ言われています。日本も戦前の大きな借金を戦後に預金封鎖して、100倍近い物価上昇で借金をいわば帳消しにしたわけです。預金が消えて苦しんだのは国民でした。もちろん、そんなことをいま繰り返すわけにはいきません

 と強く牽制しました。

 そして、経団連企業の支援者も多い岡田さんですが、

 「安倍総理は、法人税の減税が賃上げにつながると言っています。法人税を払っているのは利益の出ている企業ですので、7割を占める赤字の企業にとっては、法人税の減税は効果がありません。したがって、そういった企業が減税を理由に賃金を上げるということにはなりません

 と語りました。

 民主党ナンバー1の経済通が岡田克也さんであることは、異論をはさむ余地がないところです。

 その岡田さんの経済学、岡田ミクス3本の矢は、

(1)安倍・黒田による異次元の緩和は始めちゃったのだから認める
 
(2)(規制緩和と規制強化による)規制改革と(アジアの成長を取り込む)自由貿易による成長戦略

(3)経済成長と消費税増税による税収増と安定財源確保による財政健全化

 岡田ミクス3本の矢。

 岡田さんは、臨時国会閉会後に、韓国やインドを訪れパワーアップしました。とはいえ、野党内野党ですから。いわば、映画「孫文――百年先を見た男」に描かれたペナン島にいるころの孫文みたいな時期ですな。

 岡田克也の2014年は「経済の好循環」のスタートの1年になりそうです。

[岡田かつや公式ホームページから全文引用はじめ]

  


1.経済はどうなる

デフレ脱却
アベノミクスが成果を上げて、景気回復しつつあると言われています。長かったデフレからの脱却を私も期待しています。しかし、私は楽観的な見方に違和感を覚えています。景気回復は一時的なものに終わってしまうのでは、という心配です。

超金融緩和のリスク
まず、「1本目の矢」、異次元の金融緩和は確かに円安を招き、輸出を増やし、景気回復の一助になっています。マクロで見たときに、輸出の増加が全体の景気を押し上げていることは間違いありません。

ただ、将来景気回復期には、金融緩和策をやめなければいけない。その出口のところが果たしてスムーズにできるのかどうか。そこに大きなリスクが残されていることは、最近の米国の例を見ても明らかでしょう。

出口に入ったところで、金利が急激に上がるということにもなりかねません。そうなれば、市場は混乱し、過大なインフレのリスクも出てくるわけです。そのとき最も影響を受けるのは、弱い立場にある国民です。

公共事業は選択と集中で
公共事業の増加についても、短期的には景気を押し上げています。しかし、現場では人手不足で人件費が上がり、資材価格も上がっています。そして、これを長く続けるということになれば、財政を悪化させることは間違いありません。

「公共事業は悪だ」と言うつもりは全くありません。防災やインフラ整備をはじめ、必要な公共事業はあります。それでもあえて、民主党政権の時代には、選択と集中で公共事業予算を3割カットしました。将来世代のため、財政の健全化に重点を置いたわけです。

いまやそういったことは忘れ去られ、公共事業予算が大幅に増え、国民の中にもそれを歓迎する声があります。しかし、そういったバラマキでどんどん借金を増やしてきてしまった過去の失敗を、いま繰り返しているだけではないかと思います。

3本目の矢こそ本命
大事なことは「3本目の矢」、規制改革や成長戦略です。民主党時代に道筋をつけたTPP(環太平洋パートナーシップ)協定やASEANとの経済連携協定なども重要です。一つひとついろいろな困難があります。例えば、規制改革であれば、いろいろな既得権とのぶつかり合いになりますので、多くの支持団体を持つ自民党にとっては、民主党よりも更に困難な課題です。TPPについても、国内対策を含めて逃げずにしっかりと取り組んでもらいたいと思います。

人口減少が始まった日本で経済成長していくためには、生産性を高めるしかありません。これが「3本目の矢」の意味なのです。自民党ではできない政策もあれば、自民党だからこそできる政策もあるでしょう。いい政策であれば、しっかりと後押しをしていきたいと思います。


2.財政再建を忘れるな

消費税引き上げは着実に
私は、日本が抱える様々な困難の中で、最大のリスクは財政だと思います。

国だけで1000兆円を超える借金を抱えて、5年もつかどうか、10年は絶対もたないと私は考えています。いままで大きな赤字を抱えた国は、最終的には戦争か超インフレで解決するしかなかったとさえ言われています。

日本も戦前の大きな借金を戦後に預金封鎖して、100倍近い物価上昇で借金をいわば帳消しにしたわけです。預金が消えて苦しんだのは国民でした。

もちろん、そんなことをいま繰り返すわけにはいきません。政府は、2020年までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化することにしていますが、それは財政を立て直す第一歩として重要な意味があります。

財政がしっかりしなければ、社会保障も持続できません。私は強い危機感を持って、消費税増税を決めました。10%への引き上げも、経済によほど問題が出ない限り、実現しなければならないと考えています。

5兆円の経済対策は疑問
消費税引き上げのショックを和らげるために、安倍さんが10月に5兆円規模の経済対策を打ち出しました。私は、規模として大きすぎるし、内容も問題があると思っています。

消費税引き上げが経済に一時的に悪影響を及ぼすことは間違いありません。ここ数年、ショックを和らげるための短期対策は必要ですが、それ以上のものを経済対策の名のもとに財源のあてなく行うべきではありません。

増税したものの、結局経済対策として法人減税や公共事業に使われてしまったのでは、何のために増税したのか分からなくなってしまいます。消費税は社会保障にのみ使うことは国民との約束です。

法人税率の引き下げは賃上げにつながるか
安倍総理は、法人税の減税が賃上げにつながると言っています。法人税を払っているのは利益の出ている企業ですので、7割を占める赤字の企業にとっては、法人税の減税は効果がありません。したがって、そういった企業が減税を理由に賃金を上げるということにはなりません。賃上げは必要ですし、法人税減税も決して反対ではありません。しかし、この2つは結びつかないのです。

恒久法人減税を5%やれば2兆円、10%やれば4兆円の財源が必要になります。その財源の手当てなくして減税をやれば、結局赤字国債の増発か、あるいは、引き上げた消費税を財源に充てるということになりかねません。

進まぬ歳出削減
財政を立て直すために、経済成長による税収増と増税に加えて、歳出削減が必要なことは言うまでもありません。

民主党時代の事業仕分けは、予算の削減だけでなく、予算の内容を明らかにし、国民的な議論が行われたことに大きな意義があります。

私は副総理兼行政改革担当として独立行政法人の改革や公務員の定員の削減などに取り組んできました。

例えば、私が国家公務員の新規採用の6割削減を行ったときに、メディアからも相当厳しく批判を受けました。公務員定員数の30万人の1%にあたる3000人を1年間で純減するという計画も、霞が関からは根強い抵抗がありました。しかし、そういうものを乗り越えて、強い決意で実行しました。

安倍総理を見ていると、予算を使う話は多いが、削減の話はほとんどありません。厳しいことも、より真剣に進めてもらいたいと願っています。


3.エネルギー議論は冷静に

いろいろな方とお話をすると、原発について厳しいご意見をいただくことがあります。

民主党も、新たな原発は造らず、将来的には原発ゼロになるわけです。他方で、原子力規制委員会が安全だと判断したものに限って再稼働を認めるとの考えです。

これに対して、再稼働も認めるべきではないというご意見もいただきます。福島の厳しい現実を見れば、すべてやめるべきだという意見があるのは理解できます。ただ、その場合にどういう問題があるかということも、併せて考えなければならないと思います。

石炭やガスによる発電を増やしていけば、CO2が発生し、地球温暖化問題がより深刻になります。世界の学者(IPCC:気候変動に関する政府間パネル)はこのままでは今世紀末までに最大で気温は5℃、海面水位は82㎝上昇すると警告しています。

将来の方向性としては、自然エネルギーにより多く依存することが正しいと思います。ただ、いまの技術ではコストがかかりすぎますので、電気料金が上がるという問題は避けられません。

したがって、安全性、地球温暖化、そしてコストといったことの総合判断を冷静にしないといけません。だからこそ、この問題は難しいわけです。

どの程度の省エネができて、必要なエネルギーを何で賄うかということについて、中長期的な計画を示し、多くの国民の皆さんの理解を得ながら、エネルギーの問題は進めていく必要があると思います。


4.日中・日韓関係は重要

日韓関係を改善すべき
安倍総理は就任以来、活発に外交を展開しています。特に、海外を頻繁に訪問していることは評価できると思います。

しかし、安倍総理が言うほど、日米両国が緊密な連携をとれているかというと、必ずしもそうではないと判断しています。日本の対韓国と対中国の政策については、米国政府は懸念を抱いていると言うべきだと思います。

特に日韓関係は、民主主義や市場経済という価値観を共有し、米国から見れば、韓国も日本も重要な同盟国なので、日韓が対立している状況を何とかして欲しいというのが米国の本音でしょう。

韓国側の主張にも首をかしげることがありますが、やはりここは大局を見て、日韓関係を立て直さなければなりません。そのことに高い優先順位が置かれるべきだと思います。

安倍総理は、「ドアはいつも開いています」と、首脳会談を呼びかけていますが、従軍慰安婦の問題や安倍総理の歴史認識に対して韓国側が持っている疑念をなくす努力が必要です。総理になる前の過激な言動、総理になってからも誤解を招きかねない安倍さんの発言が制約になっているのです。

日韓関係というのは、経済的にも極めて相互依存関係が進んできており、国民レベルでも交流が深まってきています。政治レベルでの対立が改善していないことは大変残念で、より真摯な努力が求められます。

日中関係は大局に立って
日中関係には、尖閣諸島という問題があり、ここは日本としては譲るべきではありません。国有化したことについて中国側は批判をしますが、これは中国に対し過激な発言を繰り返していた石原都政が所有するのと比べれば、明らかに望ましい対応だったし、そのことは中国側も分かっていたはずです。

いろいろな理由があって現在の厳しい対立状況になっていますが、この対立状況が軍事的な対立ということにならないように、細心の努力を双方払わなければなりません。同時に、尖閣の問題は、日中関係全体の一部にしかすぎません。日本は中国を、中国は日本を必要としているし、アジアや世界のためにも日中関係は重要であるとの大局に立って、両国関係を改善していく努力が求められると思います。

安倍総理には、広い視野に立って、是非一歩踏み込んだ対応をしてもらいたいと思います。


5.進めなければならない選挙制度と国会の改革

選挙制度改革は国民との約束
衆議院の選挙制度改革については、やるべきことは2つです。1つは定数削減、もう1つは一票の格差の是正です。

定数削減は、野田総理と安倍自民党総裁との最後の党首討論で約束したことです。消費税の引き上げで国民に痛みを強いるときに、国会議員だけが特別ということは許されません。安倍総理には是非約束を果たしてもらいたいと思います。

一票の格差の問題は、民主主義の最も基本というべき重要なテーマです。住んでいる選挙区によって投票の権利に大きな格差があるということは、是正しなければなりません。300の小選挙区を5つ減らす、いわゆる「5減案」がすでに成立をしていますが、これでも選挙区の最大格差は1.998倍で、現時点では2倍を超えています。

2011年の最高裁判決は、47都道府県に1議席を割り振ったうえで、残りの253議席を比例配分するというやり方に対して、「憲法上の合理性がない」とはっきり判示しています。

こういう中で、民主党は比例・小選挙区ともに定数を削減し、小選挙区は人口に比例して各都道府県に議席を配分するという極めて理にかなった提案をしています。最高裁の要求に応えるのはこれしかないと思っています。

国会を機能させるための改革
なぜ国会改革が必要か。それは国会が機能していないのではないかという疑問を多くの国民が持っているからです。実際、効率が悪く、十分な審議が行われていないというのが現状です。したがって、効率的な運営と十分な審議を車の両輪とした改革が必要です。

効率化に関しては、例えば、私が外務大臣のときは、国会審議のため海外になかなか行けず、代わって副大臣に国際会議に出席してもらったり、週末ごとに各国を訪問し、土日に外相会談や首脳との会談をしていました。

消費税の議論のときには、野田総理も週3~4日間、国会に朝から座っているというのが当たり前でした。これでは総理大臣も十分な仕事ができません。

審議の充実という意味では、例えば、最近は議員立法が増えています。しかし、その議員立法が一度も審議されることなく廃案になってしまうことが非常に多いわけです。議員立法についても、国会で真摯に議論しなければいけません。

あるいは、党首討論という制度がありますが、事実上形骸化し、機能していません。そういったところについて、きちんと見直す必要があります。

国会がきちんと機能し、国民から信頼されるよう、審議の充実と効率化を車の両輪として、しっかりと議論していくという観点で議論を深めたいと思っています。

※「岡田かつや後援会会報2013年冬号」より

 

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第186通常国会は「好循環実現国会」 安倍首相が2014年年頭の伊勢記者会見で、「収入アップ」も確約

2014年01月06日 22時04分13秒 | 第186通常国会(2014年1月)好循環実現国会

 安倍首相は2014年1月6日(月)、三重県・伊勢の神宮に7閣僚で参拝しました。首相の伊勢の神宮参拝は毎年恒例で、7閣僚は平均的な人数。

 この後の神宮敷地内で、記者会見として2014年平成26年初めての情報発信。

 安倍晋三首相(自民党総裁)は第186「通常国会は、好循環実現国会」でありますと定義しました。

 これについて首相は

 「この春こそ、景気回復の実感を収入アップという形で国民の皆様にお届けしたいと考えています。そのことが消費の拡大を通じて、さらなる景気回復につながります。この好循環を今年は全国津々浦々に至るまで、広げていきたいと考えています。今月、通常国会が始まります。5兆5,000億円の今年度補正予算と来年度予算、さらには従業員の給与を増やす企業を応援する税制の拡充など、税制改正もあります。目指すは経済の好循環、収入アップの実現です。今年の通常国会は、「好循環実現国会」であります」と語りました。

 ですから、日銀の金融緩和、2013年~2014年度予算(補正含む)での自民党政府の歳出増(補正などでの公共事業)および税制改正(租税特別措置の拡大・新設による歳入減)によって、消費が拡大し、労働者の収入が、地域、職種をとわずにアップさせることを事実上公約したと考えられます。

 この発言は、衆参の予算委員会による民主党の追及や、2015年9月の自民党総裁選挙などの争点になる可能性があります。

 首相の記者会見全部は次の通り。

[首相官邸ホームページから全文引用はじめ]

平成26年1月6日

安倍内閣総理大臣年頭記者会見

【安倍総理冒頭発言】

 皆様、明けましておめでとうございます。
 この年末年始は、カレンダーもよく、御家族とゆっくり9連休を満喫された方も多かったのではないかと思います。
 明日は、来日するトルコのエルドアン首相と首脳会談を行います。今週の木曜日からは早速、アフリカ・中東へと最初の外国訪問に出かける予定です。心機一転、新たな気合いと緊張感を持って新年のスタートを切りたいと考えています。
 昨年は、台風、豪雨、竜巻など自然災害が相次ぎ、大きな被害に御苦労されながら新年を迎えられた方もいらっしゃると思います。
 東日本大震災の被災者の皆さんも、27万人を超える方々が避難先で新年を迎えられました。この1年間、月1回、東北の被災地を訪問してまいりましたが、夏あたりから青々とした農地、活気あふれる漁港、入居が始まった災害公営住宅、だんだん目に見える復興も進んでまいりました。今年も、一日も早い住まいの再建を始め、復興のさらなる加速に向けて全力を尽くしてまいります。
 昨年は、11月にはフィリピンでも台風による甚大な被害が発生し、日本の医療チーム1,200人規模の自衛隊が緊急支援活動に当たりました。この年末年始、お正月も休むことなく、遠く中東・アフリカの地において、南スーダンの人々のため国連平和維持活動に従事し、海の大動脈で、世界の船舶を海賊から守る自衛隊や海上保安庁の諸君がいます。摂氏50度にも達する過酷な環境のもとでも、士気高く任務に当たる彼らに対し、感謝したいと思います。
 今年も日本は国際社会と協調しながら、世界の平和と安定のためにこれまで以上に積極的な役割を果たしてまいります。
 二度と戦争の惨禍に苦しむことがない時代をつくらなければならない。アジアの友人、世界の友人とともに、世界全体の平和の実現を考える国でありたいと考えています。新年に当たってその決意を新たにいたしました。
 先ほど伊勢神宮に参拝いたしました。10月の遷御の儀に続く参拝でありましたが、境内の凛とした空気に触れますと、改めて身の引き締まる思いがいたしました。
 日本経済は、1年前の危機的な状況から脱し、順調に回復軌道を歩んでいます。ノーアウト満塁でマウンドに立った私は、自分の信じる球を目いっぱい投げ込んできたつもりであります。三本の矢によって日本経済はマイナスからプラスへと大きく転換しました。有効求人倍率は6年ぶりに1倍を回復。失業中で仕事を探している方々もいらっしゃいますが、その同じ数だけ仕事、求人がある状態となりました。中小企業の景況感も好転しつつあります。昨年末には、製造業で6年ぶり、非製造業では何と21年10カ月ぶりにプラスに転換いたしました。
 まだまだ厳しい方々もいらっしゃいますが、この1年間で景気回復の裾野は着実に広がってきました。1回表のノーアウト満塁の危機は何とか乗り切ることができました。
 今年は、攻守交代、1回裏で、デフレ脱却という勝利に向けて攻める番であります。
 この春こそ、景気回復の実感を収入アップという形で国民の皆様にお届けしたいと考えています。
 そのことが消費の拡大を通じて、さらなる景気回復につながります。この好循環を今年は全国津々浦々に至るまで、広げていきたいと考えています。
 今月、通常国会が始まります。5兆5,000億円の今年度補正予算と来年度予算、さらには従業員の給与を増やす企業を応援する税制の拡充など、税制改正もあります。
 目指すは経済の好循環、収入アップの実現です。今年の通常国会は、「好循環実現国会」であります。
 さて、今年は午年です。馬の視野は350度あるそうです。真後ろを除いてほぼ全てを見通すことができます。午年生まれの私としては、馬のように広い視野を持って、今年も政権運営に当たってまいりたいと考えております。
 他方で、馬はあらゆる方向が見えるがゆえに、臆病な部分もあると言います。
 日本も、20年近く続いたデフレによって、自信を失っていました。石橋をたたいて壊すがごとく、心配が先に立って、チャレンジを避けてきた面もありました。しかし、やればできる。世界は再び日本に注目しています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックも決まりました。みんなで頑張れば夢はかなう。「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」という言葉があります。何事もやる前から思い悩むのではなく、まずはやってみる、チャレンジしようとする気持ちが大切なのだと思います。
 今年は2月にソチオリンピック・パラリンピックがあります。6月にはサッカーワールドカップが開催されます。日本の選手たちが世界の舞台できっと大活躍してくれるはずです。考えるだけでわくわくしてきます。頑張れば、来年の新年は、今年よりもきっとよくなる、そう信じて一人一人が新たなチャレンジに踏み出すことができる、皆さんがわくわくできるような一年にしていきたいと思います。
 国民の皆さんにとって、本年がすばらしい年となりますことを心から祈念いたします。
 私からは以上であります。

【質疑応答】

(内閣広報官)
 それでは、皆様からの質問をお受けしたいと存じます。
 質問される方は、所属とお名前を明らかにした上で、質問をお願いいたします。
 最初は、内閣記者会の代表の方からお願いをしたと思いますけれども、どなたが。
 どうぞ。

(記者)
 テレビ東京の渋谷と申します。よろしくお願いいたします。
 昨年は、アベノミクスの金融緩和と財政出動により、株価、為替が刺激され、経済指標が大きく改善しました。
 しかし、総理が求めるデフレ脱却が完了したという形ではありません。また、4月以降、消費税増税による反動も想定される中、今年も経済を最優先課題とすることを話されてきていますが、具体的に、いつ、どのような形で新しい政策を打ち出すつもりでしょうか。また、成長戦略の1つと数え、昨年の大きな政治決断として挙げられたTPP交渉で、日本はアメリカとの妥協点が見出せていないままです。TPP交渉の妥結に向けて重要5項目にある586品目の関税維持は必ず必要とお考えですか。その前提がなければ、妥結がさらに先送りになっても構わないと思いますか。よろしくお願いいたします。

(安倍総理)
 私は、そして安倍政権は、世界に誇るべき日本の年金、医療、介護、この社会保障制度をしっかりと守り、次の世代に引き渡していく責任を果たしていかなければならないと考えています。そのために、伸びていく社会保障費に対応し、さらに子育て支援を拡充していくために、消費税を5%から8%に引き上げていきます。それは同時に、国の信認を守ることにもつながっていきます。
 しかし、一方、我々はやっと15年ぶりにデフレから脱却できるかもしれないチャンスをつかみました。このチャンスを逃すわけにはいかない。だからこそ、この4月からの消費税アップに対応しまして5.5兆円の経済対策と1兆円の税制対策を行い、そして、経済成長、デフレ脱却、それとともに、同時に財政の再建、これを一度に達成するよりほかに道はないと考えています。
 そして、企業収益の向上を賃金の上昇や設備投資につなげていく必要があります。そのために、来年度から法人実効税率を2.4%引き下げます。1兆円規模の税制措置として大胆な投資減税を講じるほか、賃上げ企業への減税の思い切った拡充を行うことといたしました。昨年末には、政労使で企業収益を拡大させ、それを賃金上昇につなげていく必要があり、一致協力して取り組むという共通の認識に至ることができました。その実行に向けて、取り組んでいく考えであります。
 先の国会で成立をいたしました産業競争力強化法と国家戦略特区法などをしっかりと実行に移してまいります。今月には、今後実行していく施策の実行計画を策定し、実施時期と担当大臣を明らかにするとともに、さらなる構造改革を進めるため、今年半ばの成長戦略改定を目指して、雇用、人材、農業、医療、介護などの分野を中心とした今後の検討方針を明らかにする考えであります。
 TPPについてでありますが、TPPはアジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組みであり、まさに国家100年の計と考えます。農産品のいわゆる重要5品目については、衆参の農水委の決議をしっかりと受けとめ、攻めるべきは攻める、守るべきは守るとの方針で交渉に当たっています。
 TPP交渉は、本来、ウィン・ウィンの関係をつくるものであります。ただし、局部的には、国益と国益がぶつかり合います。国益をぶつけ合う中において、最終的な着地点をどう見出していくか、知恵を出して大局的な判断をする考えであります。

(内閣広報官)
 それでは、次に、三重県政記者クラブ代表の方、お願いいたします。
 どうぞ。

(記者)
 三重県政記者クラブ幹事社のCBCの松本と申します。よろしくお願いします。
 原発への対応について伺います。中部電力が計画断念を表明した三重県の芦浜原発計画を含めて、原発の新増設を今後進めていくのかどうか、総理のお考えをお聞かせください。

(安倍総理)
 原発については、再生可能エネルギーや高効率のLNG、石炭、さらには徹底した省エネルギーの推進など、エネルギー源の多様化を図りながら、可能な限り依存度を低減するというのが基本方針であります。
 独立した原子力規制委員会によって、世界最高水準の新しい安全基準が策定されました。まずは厳格な新安全基準を乗り越えた原発について、その再稼働を判断していくことになります。原発の新増設につきましては、現在のところ全く想定していません。今、申し上げたとおり、まずはエネルギー源の多様化と、既存の原発の再稼働の判断に集中していく考えであります。

(内閣広報官)
 それでは、再度、内閣記者会の代表の方からの御質問をお受けします。どうぞ。

(記者)
 総理、明けましておめでとうございます。時事通信の纐纈と申します。
 外交と憲法についてお伺いしたいと思います。
 総理は昨年、靖国神社を参拝され、そして中国、韓国に自身の姿勢を直接説明したいというふうにおっしゃっています。ただ、これまで対話を呼びかける具体的なアプローチはありませんでしたけれども、これに関して今日、韓国の朴槿恵大統領は、日韓首脳会談に向けた十分な準備をすべきだということで、日本側への歩み寄りを求める発言もされています。今年その中韓といつごろの会談を目指し、どのようなアプローチをされるお考えでしょうか。
 また、総理が進める外交安全保障政策は、中韓の反発もあります。さらにその憲法解釈の変更、改正には両国との外交も密接に絡んでいく中ですけれども、こうしたものをどうやって進められるお考えでしょうか。

(安倍総理)
 中国、韓国と対話を図っていくことは、この地域の平和と安定にとって極めて重要であると考えています。首脳会談においては現時点において見通しがあるわけではありませんが、困難な課題や問題があるからこそ、前提条件を付けずに首脳同士が胸襟を開いて話をするべきだと、こう考えています。
 靖国参拝につきましても、談話で示した私の真意をぜひ直接誠意を持って説明したいと考えています。
 そして、今、御質問にございましたが、対話を求める直接的なアプローチは現在行われていないということでありましたが、私は常に対話のドアは開かれている。ぜひ日中首脳会談、そして日韓首脳会談をやりたい、こういうオープンな場で申し上げております。これこそまさに直接的なアプローチではないかと、こう思うわけでありますが、ぜひ前提条件を付けることなく、胸襟を開いて首脳間で話し合いを行っていく。こういう同じ姿勢を中国側、韓国側にもとっていただきたいと考えています。
 そしてまた、憲法をめぐる問題については制定から既に68年になろうとしている今、時代の変化を捉えて、解釈の変更や改正に向けて国民的な議論をさらに深めていくべきであり、中国、韓国を含む諸外国に対しても丁寧に説明をしていきたいと、このように考えておりますし、今、安倍政権で進めている積極的平和主義についてもしっかりと説明をしていけば、必ず私は理解をしていただけると確信をしております。

(内閣広報官)
 大変恐縮でございますけれども、予定の時刻がほぼ満了に近づいておりますので、次の質問をもちまして最後の質問にさせていただきます。
 もう一度、三重県政記者クラブの代表の方、お願いいたします。

(記者)
 幹事社CBCの松本です。
 もう一点伺います。リニア中央新幹線についてです。三重県の方では経済効果を期待して品川、名古屋間を先に開業する2段階の開業ではなく、全線同時開業を求めていますが、総理はどのようにお考えでしょうか。よろしくお願いします。

(安倍総理)
 リニア中央新幹線は、日本が世界に誇る世界最先端技術の鉄道技術を用いるわけでありまして、私は夢のプロジェクトであると思います。こういうプロジェクトを進めていくということは、日本人みんながわくわくしていくのではないかと、こう思います。
 将来、リニア新幹線がつながれば、わずか1時間ちょっとで東京から大阪まで移動できることになりますし、三重県にも来やすくなります。東京からちょっと伊勢神宮に参拝しようということも実現するわけでありまして、三重県にも大きな効果をもたらすと思います。
 JR東海が建設主体となっておりますので、工事の進め方など、いろいろ考えていると思いますが、リニア中央新幹線は一種の、先ほど申し上げましたように、国家プロジェクトと言ってもいいと思います。政府としても様々な形で、できることはバックアップをしていきたい、こう考えております。

(内閣広報官)
 予定の時間が満了いたしました。以上をもちまして、安倍総理の記者会見を終了いたします。
 皆様、御協力どうもありがとうございました。

(安倍総理)
 どうもありがとうございました。

[おわり] 

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