宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

労働者派遣法改正案が衆本で審議入り 外相、安倍首相の米議会前のめり発言撤回を参・外防委で拒否

2015年05月12日 17時37分45秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 連休明け国会がきょうから本格始動しました。当初会期末は、6月24日(水)まで。戦後最大の法案、「2015ガイドラインの国内実施のための安保法制の再整備2法案」(189閣法おそらく72・73号)が提出されますが、労働法制、民法債権編改革、特区法改正案などで重要な法案があれよあれよ、と通ってしまうかも。括目せよ。

●厚労省「労働者派遣法改正法案が成立しないと専門26業務の4割が10月失業」の脅しを謝罪

【平成27年2015年5月12日(火)衆議院本会議】

 「水銀に関する水俣条約の承認の件」(189条約4号)が全会一致で承認され、参議院に送られました。ただ、条約はまだ10本審議入りすらしておらず、すべてが両院承認、公布、発効できない可能性が高まりつつあります。昭和10年代も外務省は国会対策を怠りましたが、今国会はどうでしょうか。

 次に、「労働者派遣法改正案」(189閣法43号)が趣旨説明され、自公民維共5党が代表質問しました。

 自民党の高鳥修一さんは「アベノミクスは力強く日本経済を再生させている」と切り出し、平成24年2012年改正(製造業日雇いスポット派遣の禁止)の附帯決議で、「民、自、公の3党で見直しの附帯決議をつけた」として、今次改正の意義は民主党も共有しているとの詭弁を弄しました。

 次に、民主党の大西健介さんは「2度廃案になった、呪われた派遣法案、残業代ゼロ法案(189閣法69号)、解雇の金銭解決(法案未提出)は、悪の3点セットと呼ばれている」と指摘しました。

 厚労委員会は法案が空いているため、委員会でも早めに審議入りするとみられます。まだ6週間あることから、成立の可能性は高まっており、まさに正念場を迎えつつあります。

【同日 参議院厚生労働委員会】

 一般質疑の中で、民主党の石橋通宏さんが、衆本での大西質問と同様に質問をしました。

 厚労省が国会議員に説明した「施行日に関する説明資料」のなかに、「施行日の9月1日を過ぎて、10月1日を向あけると、専門26業務で働く人のうち42%が失業する可能性がある」という趣旨の荒唐無稽な説明が入っていると指摘。塩崎恭久厚労相は「役人はドラえもんのポケットのようにいろいろな資料を出すが、表現が適切でなかったことをおわびしたい」と語りました。

 一般質疑だけで散会しました。健康保険法の改正法案はまだこの委員会に付託されていない(吊るされている)ようで、審議入りしませんでした。

●米議会での安保法制の首相発言撤回拒否

【同日 参議院安全保障委員会】

 一般質疑、とくに4月27日の2プラス2に関する質疑。

 民主党の小西洋之さんは2015年ガイドラインを国内実施する安保法制の再整備2法案(189閣法おそらく72・73号)について、(日本平時、密接他国有事の)存立危機事態と、(日本有事の)武力攻撃事態がかぶる事態では、「予防攻撃となり国際法違反ではないか」と問うと、横畠裕介内閣法制局長官は「違うと思う。いずれの国にも武力攻撃が及んでいる事態では、予防攻撃とならないのではないか」との見解を示しました。これに先立ち中谷元・防衛相(兼)安保法制担当相は「あくまでも(昨年7月1日の解釈改憲による新・)武力行使の3要件を満たすかどうかが、存立危機事態と(主権国家として当然個別的自衛権を発動し防衛出動する)武力攻撃事態との違いだ」と答弁しました。

 中谷大臣は委員会の冒頭、「先週末、沖縄県を訪問したときに、在日米軍の4軍調整官と会った。(地震があった)ネパールには、米軍はオスプレイ(MV-22、ボーイングヘリコプター社製)4機、150名を派遣している。自衛隊も医療隊120名が行っている。現地では、緊密に連絡しており、新ガイドラインのもとでも、このような人道支援での協力を深めていきたい」と答弁し、先月27日に合意した、「2015日米防衛協力のための指針(日米ガイドライン)」にもとづく、日米連携がすでに始まっていることを明言しました。自民党の佐藤正久さんへの答弁。

 これを踏まえて、民主党の藤田幸久さんは「ガイドラインは日米安全保障条約や安保法制再整備法案と違い、国会が関与せず、国民が関与できない」としたうえ、「法案が否決した場合は、ガイドラインの効力はどうなるのか」と質問したところ、岸田外相は「1997年ガイドラインも国会の審議を経ていない」「新ガイドラインに明記されている通り、我が国の法令にガイドラインは従う」と述べました。

 藤田さんが「米議会での、安保法制を今夏までに成就させる、との首相発言を撤回せよ」とすると、岸田外相は「首相の決意を述べたものだ」「行政府として国会にお願いして議論していく決意を米議会で述べたものであり、それを撤回する必要はないと、私は理解しています」としました。

 一般質疑の後、4条約の承認の案件が審議入りしました。

 「日本モンゴル経済連携協定」(189条約1号)
 「WTO協定改定議定書」(189条約2号)
 「ASEANプラス3のマクロ経済調査事務局を設立する協定」(189条約3号)
 「2007年国際コーヒー協定」(189条約7号)。

【同日 参議院国土交通委員会】


 自治体が下水道事業を日本下水道事業団に委託することができる「水防法改正案」(189閣法18号)が全会一致で可決しました。次の本会議で成立し、公布後2カ月以内の政令で定める日に施行されます。

【同日 参議院財政金融委員会】

 「政投銀・日本政策投資銀行の完全民営化を先送りする法案」(189閣法13号)が共産党の反対、自公民維の賛成多数で可決しました。次の本会議で成立し、公布日に施行。「民業を圧迫しないよう」とする附帯決議がつきました。

【同日 参議院文教科学委員会】

 「スポーツ庁を設ける文部科学省設置法改正案」(189閣法14号)が全会一致で可決しました。次の本会議で成立し、10月1日施行、文科省の外局である、スポーツ庁が誕生します。 

【同日 衆議院財務金融委員会】

 「金融商品取引法改正案」(189閣法56号)が趣旨説明されました。金融庁提出は今国会1本ですが、ファンドの取り締まりを強化する一部改正にとどまる法案のようです。次回の委員会は未定。

【同日 衆議院法務委員会】

 ジャーナリストの江川紹子さんら招いて、「裁判員法改正案」(189閣法41号)の参考人質疑が行われました。あすも開催。おそらく採決とみられます。

【同日 衆議院消費者問題に関する特別委員会】

 一般質疑がありました。今国会、消費者庁は法案を出していません。

【同日 衆議院国家基本政策委員会】

 参議院の委員会と合同審査会を開くことを決めました。いよいよ来週水曜日、2015年5月20日、歴史的な安倍・岡田問答となる、QTが開かれます。

【同日 参議院総務委員会】

 「電気通信事業法・放送法・電波法改正案」(189閣法66号)が趣旨説明されました。

【同日 参議院法務委員会】

 日切れ指定の給与法案、「裁判所職員定員法案」(189閣法21号)が趣旨説明されました。衆院段階で民主党の階猛さんが強い口調で反対討論しています。毎年の「暫時改正」にストップをかけるのかどうか、ベテランぞろいの参・法務委の審議が注目されます。

【同日 参議院経済産業委員会】

 「株式会社商工中金法および中小企業信用保険法の一括改正法案」(189閣法17号)が趣旨説明されました。

以上

(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015

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