【平成27年2015年5月26日(火)衆議院本会議】
戦後最大の法案とされる、
「我が国および国際社会の平和および安全の確保に資するための自衛隊法などの一部を改正する法律案」(189閣法72号)と
「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊などに対する協力支援活動などに関する法律案」(189閣法73号)
が審議入りしました。
民主党の枝野幹事長は質問演説で「国際軍事協力法案と呼ぶべきだ」と命名しました。
これに先立ち、自民党の稲田政調会長が質問し、「アメリカに参戦を迫られたら断れないとの声があるが、国権の最高機関である国会が決める」とし、安倍首相(自民党総裁)は「日米同盟をよりよくするのが平和安全法制で日米同盟がより機能することで抑止力が高まる」としました。
4人目に登壇した公明党の佐藤茂樹さんは「武力行使の新3要件は公明党が事前協議で法案に入れたものだ。武力攻撃事態法(の改正条文に)存立危機事態を入れたことで新3要件は法解釈上より確実に政府の判断をしばることができる」という趣旨の発言をしました。
ここで私見ですが、公明党が極めて重大な「勘違い」をしていることに、私は気づきました。武力攻撃事態対処法は「日本有事」なので、総理大臣が自衛隊に防衛出動を命令できます。これには、閣議決定も国会承認もいりません。当たり前です、そのために総理大臣が設置されていると言ってもいいくらいです。ところが、存立危機事態は、日本平時ですから、日本平時なのに、総理大臣の一存で、自衛隊に防衛出動することができるように公明党はしてしまったことになります。策士策におぼれたという気がします。太田昭宏大臣の明解な答弁を求めたいところです。
本会議場に戻って、佐藤さんへの答弁で安倍首相は「政府は以前より(現行法の)周辺事態は地理的概念ではなく、性質にもとづく概念であると説明してきた。(周辺事態を改正して重要影響事態とする改正法案で新設したいとする)重要影響事態でも引き継いでいく」と答弁しました。
これは、公明党が錦の御旗にしてきた、小渕答弁を完全に否定したものです。
小渕答弁は次のように、公明党の冬柴鉄三さんに対する答弁です。
[国会会議録データベースから引用はじめ]
145 - 衆 - 予算委員会 - 3号 平成11年01月26日
(前略)
○冬柴委員 (中略)
その極東という一つの概念、この概念を今回の周辺事態という概念は超えることはない、どうですか、それは。ちょっと待ってください。総理にお願いします。総理大臣、お願いします。
○小渕内閣総理大臣 まず、この重要なガイドライン法を国会で御審議いただく過程におきまして、国民の皆さんの御理解が十分得られるように政府としては最大限努力をし、そのためにも御質疑をいただきながら誠実に答弁を申し上げているところでございます。
そこで、まず周辺地域でございますが、周辺地域については、日本の周辺地域、こういうふうに限定をしておるわけでございまして、したがいまして、しばしば歴代外務大臣も答弁しておりますように、これは、中東とかインドネシアとか、ましてや地球の裏側というようなことは考えられない、こういうことでございます。(後略)
[引用おわり]
安倍首相は小渕答弁を否定したことになります。ただ、もともと日米政府は安倍さんの認識であり、小渕さんが衆参ねじれの苦しさでこのような答弁をしてしまったのでしょう。これを公明党は錦の御旗にしてしまったのは大失態だっと思いますが、与党協議会の詳細は分からないので、藪の中です。
野党に戻って、2人目に質問した、枝野さんは「民主党は政権担当時に、(平成22年防衛大綱で)基盤的防衛力から動的防衛力に移行し、(グレーゾーン事態に対応する)領域警備法案を(下野後に)提出した」としました。アメリカが集団的自衛権の発動のよるベトナム戦争の根拠とし、連邦議会が全会一致でつくった「トンキン湾決議」を引用し、「平和という言葉は戦争を正統化するための方便として使われてきた」としました。
3人目の維新の党の太田和美さんは「今夏までに成立させたいと安倍首相は言ったが、本当に国民の理解を得られると思っているのか。審議時間ありき、成立時期ありきではなく、国民の理解をえられた時に採決すべし」と語りました。
5人目の共産党の志位和夫さんは「私は、1997年ガイドラインの審議で、米国の要求を日本が拒んだことがあるのかと当時の橋本首相に質問したら、ハッキリと「一度もない」と答弁していた。徹底審議のうえ廃案にするしかない」と語りました。
この志位・橋本問答も調べてみました。次の議事録です。
[国会会議録データベースから引用はじめ]
141 - 衆 - 予算委員会 - 2号
平成09年10月07日
(前略)
○志位委員 (中略) そこで、改めて総理に聞きますが、戦後アメリカが世界各地で行った武力行使の中で、日本がそれに批判的立場をとったケースが一回でもありましたか。あったとすれば、それを具体的におっしゃってください。
○橋本内閣総理大臣 (中略)
国際法上違法な武力行使については一貫してこれに反対するという日本の基本政策を一般的に述べたものであります。
その上で、第二次世界大戦後、我が国が国連に加盟いたしまして以来、我が国が、米国による武力行使に対し、国際法上違法な武力行使であるとして反対の意を表明したことはございません。
[引用おわり]
このように橋本首相は、国連加盟(1956年)後に、米国による武力行使に対し、反対したことはないと答弁していました。
◇
これに先立ち、衆議院本会議は、
水俣条約の国内実施法である、「水銀による環境の汚染の防止に関する法律案」など2法案(189閣法36号、189閣法37号)を全会一致で、
独立行政法人通則法にもとづく国土交通省の独立行政法人整理のための、「自動車検査独立行政法人法改正案」(189閣法46号)を賛成多数で、
「平成25年度予備費使用調書」を賛成多数で、
可決・承諾し、それぞれ参議院に送りました。
【同日 衆議院我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】
安全保障法制2法案(189閣法72号・189閣法73号)は即時付託されました。
ところが、どうやら岸田外相ら外務省が本会議後に即時付託され特別委で趣旨説明されることを失念したようで、長時間開会が遅れ、岸田外相が冒頭に謝罪し、浜田靖一委員長も謝罪する事態になりました。
この後、中谷防衛相が趣旨説明しました。あす午前9時から質疑。
【同日 衆議院法務委員会】
「刑事訴訟法改正案」(189閣法42号)が趣旨説明され、あすから質疑されることになりました。
上川法相の説明によると、取り調べ以外の証拠を増やす目的で、(1)裁判員裁判と検察独自捜査の刑事事件での取り調べの録音録画(可視化)、(2) 経済犯罪や薬物事件で、取り調べ者に特定の形を確約したうえで、取り調べる司法取引の導入(3)重大犯罪で、通信を傍受・録音し、取り調べなどで再生することができる通信傍受の拡大ーーが盛り込まれた法案です。
このように非常に重大な法案が審議入りしましたので、詳しい人はこちらも注目してほしいものです。
【同日 参議院法務委員会】
「裁判員法改正案」(189閣法41号)の審査がありました。
【同日 参議院厚生労働委員会】
「持続可能な健康保険制度のための国民健康保険法改正案」(189閣法28号)が採決を迎えました。
これに先立ち、薬師寺みちよ参議院議員が、修正案を出しました。以前、薬師寺さんは2013年初当選議員で第1号の議員立法提出者にもなりました。
審議中に、上のように、他の議員の質疑中に、薬師寺さん(右)が参議院職員らに修正案の文面を見てもらっている、と思われるシーンが参議院インターネット審議中継に映っていました。こういうことはよくあります。薬師寺さん、ナイストライです。
採決では、薬師寺さんの修正案は、自公民の反対、共社と薬師寺さんの賛成少数で否決されました。
採決では政府原案が、民共社と薬師寺さんの反対、自公の賛成多数で可決しました。次の本会議で可決し成立します。各党が共同して附帯決議を提出し、議決しました。ただ、決議案を朗読したのが、日本医師会組織内の羽生田俊・自民党参院議員だったので面食らいました。附帯決議は自公民共などの賛成多数で採択されました。
【同日 参議院文教科学委委員会】
「2020年東京オリ・パラ特措法改正案」(189閣法15号)が賛成多数で可決し、
「2019年ラグビーワールドカップ特措法改正案」(189閣法16号)が全会一致で可決しました。次の本会議で成立。公布から1年以内の政令で定める日に施行するため、閣僚枠1人増は、もう少し先になりそうです。
【同日 参議院財政金融委員会】
「金融商品取引法改正案」(189閣法56号)が全会一致で可決しました。これで、衆参財金委は今国会の閣法審査を終えたことになります。
【同日 参議院総務委員会】
「通信・放送・郵便の海外輸出の官民ファンド法案」(189閣法27号)が審議入りしました。
【同日 参議院内閣委員会】
「マイナンバー法と個人情報保護法の改正案」(189閣法32号)が質疑され、後日に参考人質疑をすることが決まりました。
【同日 参議院外交防衛委員会】
「防衛省設置法を改正し、防衛装備庁を設け文官統制を廃する法案」(189閣法33号)が質疑され、午前中は、中谷防衛相がこの委員会で答弁する日程になりました。
【同日 衆議院総務委員会】
「郵便法および信書法の改正案」(189閣法62号)が趣旨説明されました。質疑は後日。
【同日 衆議院地方創生に関する特別委員会】
「第5次地方分権一括法案」(189閣法51号)、
「地域再生法改正案」(189閣法53号)
「特区法改正案」(189閣法65号)の質疑が続きました。
以上
以上
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