宮崎信行の国会傍聴記

元日本経済新聞記者の政治ジャーナリスト宮崎信行が衆参両院と提出予定法案を網羅して書いています。業界内で圧倒的ナンバー1。

特区法案可決・・・当初会期残り3週間、「2度の参考人質疑」が流行、維新若手が修正案積極提出

2015年05月29日 21時22分32秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 

 第189通常国会は残り3週間となり、衆議院から参議院送付の目安になる時期になりましたが、閣法78本のうち、22本(参議院先議含む)が審議入りしていません。議員立法のうち「IRカジノ施設法案」「参議院選挙制度改革法案」(未提出)、条約などを含むと、40本近くが審議入りすらしていない状況で、6月24日(水)までの閣法成立100%は絶望的。ただ、参考人質疑を2回やるという異例の法案審査が今国会では流行。与党としては野党に質問時間をたっぷり渡すことで、円満な成立をめざしているようです。そろそろ国対が「法案の仕分け」を始める時期ですので、国益のみならず私益も入れて、今国会の対応のしかたを考えてほしいです。「梅雨入り」が政治闘争の幕開けです。


【平成27年2015年5月29日(金)法律公布】

 天皇陛下は「改正農林水産省設置法」を公布されました。審議では「議案番号189閣法24号」でしたが、公布により「平成27年5月29日法律30号」になりました。10月1日(木)施行。

【同日 参議院本会議】

 「通信・放送・郵便事業の海外輸出の官民ファンド法」(189閣法27号)が投票総数232、賛成199、反対33で可決し、成立しました。谷合正明総務委員長は「質疑では、機構の必要性、他の機構(クールジャパンなど)との関係が議題になった」と報告しました。

 これに先立ち、「電力システム改革プログラム第3弾(仕上げ)の電気事業法・ガス事業法改正案」(189閣法29号)の趣旨説明と代表質問がありました。

【同日 衆議院安保特別委(我が国および国際社会の平和安全法制に関する特別委員会】

 すでに速報エントリーでお伝えしており、Twitter でも多くの賛同をいただいておりますが、民主党の後藤祐一さんの質疑の途中で、委員会が休憩し、午後1時に開会を宣言した者の再び休憩し、午後1時15分過ぎに散会しました。週明け6月1日(月)は午前9時に設定されています。

 後藤さんは、平成10年1998年2月26日の衆議院予算委員会で、岡田克也委員の「中東で産油国に危機が発生して我が国に石油が来ない。1997年日米ガイドラインでいう周辺事態に含まれますか」との問いに、当時の外務省北米局長(当時は政府委員)が「そういう事態は周辺事態には該当しない」と答弁。平成11年1999年政府統一見解も含めて岸田外相の認識を問いました。これについて、岸田外相が答弁の修正を拒みました。そこで中断したまま、安保法制第1週が終わりました。岡田克也さんは午後4時からの定例記者会見で「整合性のある説明がないといけない」と語りました。

 今次改正法案で(189閣法72号、189閣法73号)では、「周辺事態法は重要影響事態法」に、「存立危機事態は武力攻撃事態・存立危機事態法」にかえます。仮に周辺事態でホルムズ海峡に行けなければ、「武力攻撃・存立危機事態法」で行くことになりますが、これは首相の防衛出動命令となります。

 これに先立ち、公明党2期生が質問に立ち、「自衛官と話したが、自衛官も 国益のためにやってほしいと言っている」としました。だったら、憲法を改正して、専守防衛のための自衛隊をキッチリ書き込むことの方が先ではないか。

【同日 衆議院本会議】

 「ダンスホール規制を外し、いわゆるキャバクラなどの規制を強化する、風俗営業法改正案」(189閣法26号)が共反対、自公民維賛成で可決。「規制除外は公布日に施行、規制強化は公布から1年以内の政令で定める日に施行」。

 「郵便法および信書法改正案」(189閣法62号)は、民共の反対、自公維の賛成多数で可決し、参議院に送られました。

【同日 衆議院地方創生に関する特別委員会】

 「特区法改正案」(189閣法65号)、「第5次地方分権一括法案」(189閣法51号)、「地域再生法改正案」(189閣法53号)の質疑終局。

 民主党の福田昭夫さんが(1)塾立学校特区削除(2)外国人の家事支援単純労働者入国管理緩和特区の削除(3)町医者の外国人研修医特区の削除ーーの修正案を出しました。維新の党は地域再生法改正案の修正案を出しました。

 採決では、まず、民主党の修正案が民賛成、自公維などの反対で否決。続いて、維新の修正案が民維の賛成、自公などの反対で否決。

 政府原案は、自公民などの賛成で可決しました。

【同日 衆議院文部科学委員会】

 「小中一貫教育のための学校教育法改正案」(189閣法49号)が共社の反対、自公民維の賛成多数で可決しました。共産党の反対討論を聞いていると、「小中一貫という縦の統合によるリストラ」という指摘があり、たしかにそれがイチバンの狙いかもしれないな、と感じました。

【同日 衆議院経済産業委員会】

 「特許法改正案」(189閣法44号)が可決しました。共の反対、自公民維の賛成多数。特許の帰属を社員から会社に移す法案で、ノーベル賞を受章した中村さんと日亜の話も出ました。共産党は「経団連主導政治だ」と反対しました。

【同日 衆議院厚生労働委員会】

 「労働者派遣法改正法案」(189閣法43号)と「同一労働同一賃金推進法案」(189衆法22号)が同時に審査されました。高橋千鶴子さんが「パソナの竹中さんの声がけによる派遣会社丸儲け」との指摘があり、審議が深まると、パソナの名が出てきました。 次は来週6月2日(火)午前9時から、2度目の参考人質疑をやることになりました。徐々に採決が近づきつつあります。ていねいな審議のうえ、最終的には確実な成立を図る、自民党国対の戦術が見え隠れします。

【同日 衆議院倫選特(政治倫理の確立および公職選挙法改正特別委員会】

 「18歳19歳に選挙権を付与する公職選挙法改正案」(189衆法5号)について参考人質疑がありました。

【同日 衆議院内閣委員会】

 「女性の職業生活の活躍推進法案」(189閣法8号)が趣旨説明されました。

【同日 衆議院国土交通委員会】

 「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律案」(189閣法58号)が審議入りしました。

【同日 衆議院環境委員会】

 「災害がれきを念頭に置いた、廃棄物処理法および災害対策基本法の改正法案」(189閣法59号)が審議入りしました。いまだに東日本大震災の教訓を法律化する議題があります。これとは別に、きょうは、鹿児島県屋久島町に属する口永良部島が噴火しましたが、すでに全島民が避難しました。このNHKニュース速報で、おそらく生電話で出演していた識者が「東日本大震災の後の地震や噴火がしばらく続いている」と発言しました。こういうのもニュースに乗りにくいのですが、事実でしょう。ただ、一つだけ、本震より大きい余震は無いということは覚えていただきたい。

【同日 衆議院法務委員会】

 午後1時設定でしたが、流会しました。

以上
(C)宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki 2007-2015

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週刊金曜日に2ページ載っています

2015年05月29日 16時51分07秒 | 第189回通常国会2015年安保国会
週刊金曜日の5月29日号に、安保法制と三菱重工業などの防衛装備品メーカーについて書いています。2ページ載っています。表紙にもタイトルを盛り込んでもらいました。宮崎信行。
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【速報】民維共3党が平和のために審議拒否 みんなで応援しよう!賛同した人はリツィート!

2015年05月29日 10時35分18秒 | 第189回通常国会2015年安保国会

 民主党・維新の党・日本共産党の「平和3党」は、平成27年2015年5月29日(金)午前10時過ぎ、衆議院平和安全特別委員会が開かれている衆議院第一委員室から退席しました。

  民主党の後藤祐一さんが、現行周辺事態法の「周辺」の概念について、1998年(おそらく衆議院ガイドライン特別委員会で)の政府委員(現在の外務省の政府参考人)が岡田克也委員に対する答弁と、1999年政府統一見解について齟齬があることから、大臣に確認を迫ったところ、明確な答えがありませんでした。これについて、与党議員からも「前の答弁なんだから、取り消せばいいんじゃないの」とのヤジが出ましたが、大臣は混乱している様子で、答弁が整理できない状態になりました。

 この後、維新の党の下地幹郎理事が、民主党の長妻昭筆頭理事、共産党の赤嶺政賢委員をさしおいて、浜田靖一委員長(自民党)に猛然と抗議。与党理事は大臣を取り囲みなにか抗議しているようでしたが、民維共3党は一致団結して退席しました。与党理事が呼びに行っています。

 中断時に、答弁席には、中谷国務大臣、岸田外相、上川法相が座っていました。安倍首相は参議院本会議での電力システム改革プログラム法案の代表質問に行っています。

 インターネット審議中継の時代になってから、審議拒否は一方的に野党が叩かれることが多くなり、審議拒否をしなくなりましたが、戦争立法回避のためのやむにやまれぬ戦術と考えれます。

 今国会の空転は、衆議院予算委員会での当初予算の基本的質疑3日間が終わった直後に農相が辞任したため、翌日空転。翌々日に「基本的質疑の補充質疑4時間」で正常化して以来、3か月ぶりの空転となります。 他の委員会は開かれています。午後10時35分現在。

 午前11時20分過ぎ、浜田靖一委員長は「暫時休憩」を宣言しました。再開は未定。午前11時半現在。 

[追記 午後1時半]

 午後1時に、民維共も含めて全員が着席。浜田委員長が「再開」を宣言した直後に、長妻理事、下地理事、赤嶺委員が抗議して「休憩」。午後1時10分過ぎに、委員長が「散会」を宣言しました。

 国会議事録によると、平成10年1998年2月26日の衆議院予算委員会で、岡田克也委員の「中東で産油国に危機が発生して、我が国に石油が来ない場合は周辺事態になるのか。周辺事態における日本の平和と安全の、「安全」というどういう意味か?」という趣旨の一連の質問に対して、外務省北米局長と橋本首相、小渕外相らが「湾岸、中東などで起きている事態について言えば、日本の平和と安全に重要な影響を与えるかどうかという観点からいえば、そういうことは基本的に生じることは想定しえない」「そういう事態は周辺事態には該当しない」などと答弁したことについて、後藤さんが岸田外相の見解を問うた問答だと思われます。

 なお、当時の国会は、現在の政府参考人と異なり、外務省北米局長は「政府委員」としての答弁で、省・局・人に関係なく、全省庁を統轄した「政府」としての見解として答弁しています。

 ホルムズ海峡機雷封鎖により石油が日本に来なくなった時に、首相あるいは政府は「周辺事態あらため重要影響事態(とする案)」を使えないことになり、首相の防衛出動命令である、「武力攻撃事態対処法に付け加える存立危機事態(という案)」を使うことになり、日本平時で、首相が自衛隊に防衛出動を命じなければならないことになります。おそらく後藤さんはこういう展開に持っていきたくて質問したと考えられます。

 次回の委員会は、後藤さんに対する外相答弁から始まることになりそうです。外務省内でも対応が迫られます。次回の開催は未定です。

[追記おわり] 

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