【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

当初予算案が衆議院を通過、自民党若手が失態で無効票1、野党は国際観光旅客税法案の荷崩れに成功、首相「働き方裁量労働は実態把握しないと前に進めない」福井照新大臣は恥ずかしい写真と出資商法で批判を受ける

2018年02月28日 23時22分21秒 | 第196回通常国会(2018年1月召集)働き方 カジノ


 衆議院で当初予算案が通過。安倍晋三首相が「平成25年裁量労働調査は実態を把握できないと前に進めない」と答弁。福井照・新大臣は、「恥ずかしい写真」と出資商法をめぐる関係を追及されました。出国税法案では、財務省主税局長が内税外税を考慮していないし、消費課税の定額課税の例を答弁できないなど、国交省と財務省と官邸の関係性の悪さを垣間見せました。地方交付税法改正案では、無所属の会が、立憲民主党、希望の党とは違う投票行動を取りました。

【衆議院本会議 平成30年2018年2月28日(水)】

 まず、予算委員長解任決議案が緊急上程。阿部知子さんが趣旨説明。討論。採決の結果、投票総数455、賛成137、反対318。委員長の続投が決まりました。

   ここで、平成30年度予算案が議題となり、予算委員長が審査結果を報告しました。野党6党が意見を一致した、政府原案を撤回のうえ編成替えを求める組み替え動議を提出しました。

   組み替え動議は賛成少数で否決。ただちに、政府原案の採決。

   投票総数455、賛成307、反対148の賛成多数で、衆議院を通過しました。

【追記午後11時半】

●自民党若手が失態、大隈議員の隣席の若手議員が無効票に、3時間以上後に議長が訂正。

採決から3時間以上たった、午後11時15分前後に、大島理森議長から投票結果が訂正されました。投票総数455、賛成306、反対148、無効1票。大島議長は自民党の大隈利英議員の票が2つあったとし、各会派の協議で、1票を無効としたとしました。各議員の机には、名前の彫り込んだ木札が12枚あります。そのうち、大隈議員席の1枚を、隣席の自民党議員が間違えて持ち込んだものと思われます。

 【追記終わり】

  税制改正法案の審議。

地方税法改正案(196閣法8号)」と「地方交付税法及び特別会計法改正案(196閣法9号)」は、各々、下述の総務委での投票態度通りに、賛成多数で可決し、参に送られました。

   「所得税法などの改正案(196閣法1号)」。立希無共などの反対、自公維の賛成多数で可決し、参送付。散会。


【衆議院予算委員会 同日】

 「平成30年度予算案」は18日目。さすがに採決の時期でしょう。

 締めくくり質疑は14分ほどの遅れでスタート。安倍晋三首相(自民党総裁)は与党の問いに(1)子育て予算の前倒し(2)緊迫する北朝鮮の情勢(3)来年10月の消費税10%の環境づくりーーの3点から、緊要性の高い予算だと胸を張りました。

 野党筆頭理事は「与野党の合意なく、委員長が職権で委員会を開いたことに抗議する」としつつ、「働き方改革関連法案」(未提出)の前裁きを続けました。首相は裁量労働者の方が一般労働者よりも労働時間が短いとした平成25年度調査について「実態を把握しないと前に進めない」と答弁。希望の党の山井和則さんは「調査無くして政策無し、調査無くして法律無し」と語りました。今回の予算審議では、裁量労働調査のほか、いわゆる「もり・かけ・スパ」のうち、森友学園問題がターゲットになりました。加計学園は入試のシーズンもあってか少なく、ペジーコンピューティング社のS社長は、聞くところでは、業界内で技術的に天才とされている人物で、「ホリエモンと同じく、国は有能な人物をつぶしちゃうよな」という業界内世論ができているそうです。その辺からも野党の追及が弱まったのかもしれません。

 前日就任した福井照・新大臣(比例四国、自民党二階派)については、希望の党の今井雅人さんが「恥ずかしい写真がある」として、2009年の週刊朝日の浴衣姿で女性と足を絡ませて抱き合う写真について質問。さらに、投資商法の広告塔になっていた疑惑にふれ、国外への不倫旅行の費用を持ってもらっていたことを認めさせました。自民党では、非世襲はお金のスキャンダルが出やすいですが、やや趣が違うスキャンダルが出て、衆議院での予算審議は終わりました。

 午後12時21分過ぎに、締めくくり質疑が終局し、討論に。自民党、公明党が賛成討論し、共産党、維新が反対討論しました。採決の結果、立希無共維の反対、自公の賛成多数で可決すべきものと決まりました。緊急上程。

【衆議院総務委員会 同日】

●無所属の会は地方交付税法改正案に反対し、立憲・希望と初めて投票行動が異なる。

 「地方税法改正案」(196閣法8号)が、立希無共社の反対、自公維の賛成多数で可決しました。続いて、「地方交付税法及び特別会計法改正案」(196閣法9号)の採決。無共社の反対、自公立希維の賛成多数で可決しました。無所属の会の投票行動と、立憲民主党、希望の党の投票行動が違ったのは、今回が初めてだと思います。これに先立つ討論では、無所属の会の原口一博さんが、「地域主権改革の観点から決めた」としました。ことここにいたっては、自民党のように、上から下へ金で議員を縛り付けることは、文字通りけた違いですから、旧民進系3党が無理やり投票行動を同じにする必然性はもはやないだろうと、私は確信します。歴史は後戻りできません。そのうちどうにかなるし、ならなきゃ、国民の自業自得です。総務委では、この後、「持続可能な地方税財政基盤の確立の決議」を全会一致で採択しました。

【衆議院財務金融委員会 同日】

●野党、出国税法案の荷崩れに成功。

 まず、「平成30年度税制改正のための所得税法など改正案」(196閣法1号)。総理入り質疑が2時間以上ありました。終わり次第採決になり、立希無共が反対し、自公維が賛成して、賛成多数で可決しました。

 これに先立つ討論では、無所属の会の野田佳彦さんが反対討論。首相経験者の討論というのはかなり異例なことだろうと思います。野田さんは討論で「所得税が複雑化する」と批判。首相入り質疑で、安倍首相は「きょうは、立憲民主党の海江田万里さん、希望の党の前原誠司さん、無所属の会の野田佳彦さんと、旧民主党の歴代代表がそろって質問している」と指摘。これに対して野田さんは、「(無所属の会の代表は、岡田克也・民進党常任顧問なので)私は会派の代表でも何でもない。ただのヒラの委員だ」と現役を強調し、討論もしました。

 閣法1号の採決後に、「国際観光旅客税法案」(196閣法2号)が議題に。ここで、委員長が「3月2日(金)午後1時からの参考人質疑」を提案し、全会一致で決まりました。これにより、政府与党は、閣法2号を、予算案と同時に参議院に送ることができない「荷崩れ」が決まり、野党は一定の成果を得ました。

 国際観光旅客税法案は、希望の党の稲富修二さんが「消費課税で定額課税はあるのか」と問いました。これに対して、財務省主税局長が答えられず「揮発油税などは重量課税だ」としました。これは私は非常に残念でした。というのは、ゴルフ場利用税や入湯税は、1回400円といった消費サービスに対する定額課税のはずです。で、これは、地方税であり、自治体ごとに条例をつくる独自課税です。とはいえ、税は税です。主税局長が地方税に詳しくないという当たり前といえば当たり前の実態を見ました。財務省は、金融経済政策も、理財局も、主税局も自信を失っているようです。

 委員会に戻って、稲富さんは、特定財源のメリットデメリットにも言及。麻生太郎財務大臣は「私の麻生内閣の時に、揮発油税の特定財源が終わったが、当時、自民党議員から、お前はセメント屋だろとさんざん言われた」としながらも、特定財源の新設にあがなわない答弁。

 さらに稲富さんが「例えば、博多からプサンまでの客船のチケットに料金のうち国際観光旅客税が内税か外税が明記することは、納税者の意識にとって重要だ」としたことについて、主税局長は「チケットの内税か外税かの記載のしかたまでは、法律案には書き込んでいない」と答弁。これには、稲富さんや、麻生財務大臣、この後に3回目の登場となった野田さんらが、そろって検討がずさんであるとの認識を示しました。基本的には、きょうも答弁に立っていた、田村・国土交通省観光庁長官と、菅義偉・官房長官のラインで決まったことで、麻生大臣や主税局は傍らから見ていたんだろうと思います。

 稲富さんは「400億円の財源をどう使うかはこの委員会で議論すべきではないか」と提案。国交省は「歳出としては、平成31年度(移行の)予算案になる」とかわしました。野田佳彦さんは、財務省に対して、主計局が一般財源での対応をもっとはかるべきではないかと促しました。私も個人的に、おととし、代表取締役をつとめる法人の税務調査にパスして、やや強気ですので、金曜日の質疑までに、改めて、一つのタイトルの記事をおこしたいと考えています。きょうは野田さんの質疑までで散会。次回は、2日(金)午後1時からなので、参考人質疑の後も、多少の質疑時間はありそうです。


【参議院災害対策特別委員会 同日】

 平和安保法強行採決時の「かまくら」、公明党の河野義博委員長がしきりました。もう一生か、戦後になるか、偉い先生から「まあまあ、河野君も先輩の指示でかまくらをやっただけだから」とご指導いただくまで、何度でも「かまくら」と書いてやる。

 委員会は、まず、河野委員長が、福井など豪雪被害で亡くなった方に黙とう。小此木八郎防災担当大臣が、政府として報告しました。この後、3月5日(月)に福井県に委員派遣することを全会一致で議決し、散会しました。

このエントリーの本文記事は以上です。

(C)2018年、宮崎信行。

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