【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【3/2】「青島枠」廃止、主要5会派のみが質問し、4つの「2名会派」締め出し、改選後初の参議院予算審議は初日は野党最大会派だけで終わる、新型コロナウイルス一色

2020年03月02日 18時12分30秒 | 第201回通常国会(2020年1月から6月)「コロナ感染症」
[写真]参議院第一委員会室、撮影者・著作権保持者は宮崎信行。

 改選後初の当初予算審議が参議院でスタート。昨夏の第25回参議院議員通常選挙は、「れいわ新選組」「NHKから国民を守る党(N国)」という2つの政治団体が法律上の政党に昇格するという歴史的出来事がありました。さはさりながら、永田町の権力構造には影響のない選挙結果であり、いわば選挙制度そのものが空洞化しかねない政治・経済・社会状況を浮き彫りにしました。

●「青島枠」消える

 今回の予算審議に登場する参議院会派は「自民党」「公明党」「立国社」「維新」「共産」の5会派のみ。「れいわ」「N国」は登場せず、選挙ボランティアをされた当事者はがっくりか。参議院には現在2議席の会派が4つあります。「沖縄の風」「れいわ新選組」「碧水会」「みんなの党」。この4会派はすべて2議席。参議院では長年、2議席の会派には、予算委員を1つ出して、質問時間をおおむね総括質疑片道方式で10分程度割り当てる慣例がありました。このため、結果的には1期だけだった、谷岡郁子さん、松田公太さん、薬師寺道代さんらは、再選よりもNHKで総理を追求したテレビ映像を家宝にしたい、という思惑があったでしょう。

 この枠は、青島幸男さんが佐藤栄作総理を「経団連、財界の男めかけ」と罵倒しながらも、政見放送という政策を実現した枠。青島代表の政党「第二院クラブ」、アントニオ猪木さんらの政党「スポーツ平和党」や、選挙区選出で無所属の西川きよしさんらが参画。西川きよしさんが自分の番組に寄せられた総理への質問を「代読」したり、江本孟紀さんがマージャンとばくで逮捕される法的基準をただしたりした、青島枠の廃止。私は評価したい。

 なお、委員外質問という制度もありますが、今回の議案(令和2年度予算案)で、そこまではしないでしょう。社会民主党(福島みずほ党首)は2議席ですが統一会派に所属しているので、質問できます。

【参議院予算委員会 令和2年2020年3月2日(月)】

 「令和2年度予算案」は既に年度内成立が確定しており、消化試合となります。しかも、参議院与党を首相派閥系がおさえていることから、当面消化試合は続くでしょう。先週末から倒閣の機運が国民世論内で一気に高まっており、衆議院側や自民党内での権力基盤の変動で流動化する懸念はあります。

 基本的質疑NHK中継入りは、きょうあすの2日間。

 質問時間は331分間で、その割り当ては

 自民党  84分間
 立国社 133分間
 公明党  40分間
 維新   37分間
 共産   37分間

 となりました。質問順は立、自、公、維、共の順になりました。

 きょうは立憲民主党の福山哲郎さん、蓮舫さんの常連のあと、日教組(県選出)の斎藤嘉隆さん、医師である足立信也さん、全トヨタ労連の浜口誠さんが、専門分野をいかした質問となりました。内容は新型コロナウイルス関連がほとんどとなりました。

 およそ2時間遅れペースで、立国社だけの質問で終わりました。明日の閉会時刻はさほどずれこまないと考えられます。

 学校が臨時休校となりNHKを見た人も多いでしょう。世論に影響するか。

 あすは午前9時から基本的質疑2日目。

【衆議院 同日】

 ありません。

  以上です。

安倍晋三官邸が火事場泥棒、緊急事態条項憲法改正を先取りし北海道「坊や知事」を特区にマスク買い占め転売ヤー、2011年は、野党・公明党の「条例による法律の上書き権」を岡田克也幹事長がはねのける

2020年03月02日 06時30分49秒 | 第201回通常国会(2020年1月から6月)「コロナ感染症」
[写真]東日本大震災で「条例による法律の上書き権」を提案した、野党公明党の石井啓一政調会長(当時)、写真は3年前の2017年、茨城・つくば市で宮崎信行が撮影。

 新型コロナウイルスショックで、安倍晋三官邸が暴走。

 先週末からの流れ。2月27日(木)午後6時からの官邸内の会議で、安倍首相が「翌週からの学校一律休業」をあいさつし、ニュース速報。28日(金)に北海道知事が「期限付きの緊急事態宣言」を記者会見で発表し、法令の根拠なく、土日の外出自粛を要請し、実際に外出者が減ったようです。

 おととい29日(土)に知事は上京。安倍晋三首相と10分間面会。首相は直後の記者会見で、「北海道では鈴木知事が緊急事態宣言を発出し、この週末、外出を控えるよう、道民への呼びかけを行っています。国も雇用調整助成金の特例を設け、非正規の方も含めて、休業となる方々への支援をしっかりと行ってまいります。必要となる物資の提供など、あらゆる協力を惜しまない考えであります 」と語り、北海道をいわば緊急事態特区のようなものとして特別扱いすると強調。

 きのう3月1日(日)の「第16回新型コロナウイルス感染症対策本部」で首相は「北海道においては、感染が道内で広がる中、緊急事態宣言が出されるとともに、外出も控えるよう呼びかけが行われています。こうした中、一般住民の感染予防のため、マスクの必要性も特に高まっています。このような状況や昨日の鈴木北海道知事からの要請を踏まえ、国が一括してメーカーから買い取ったマスクを、北海道の感染者の広がりが見える市町村の住民の方にお届けすることとします。このため、国民生活安定緊急措置法に基づき、マスクのメーカーに対して、国へのマスクの売渡しを指示することとします 」

 と語り、政府自ら、マスクを買い占めて北海道に渡す「転売ヤー」になることを宣言しました。

 財政非常事態宣言という言葉はありますが、緊急事態宣言という言葉は初めて聞きました。自民党憲法改正4項目の「緊急事態条項の創設」に影響を受けていることは確実。官邸官僚は無礼にも北海道知事を「坊や」と呼んでおり、IRカジノ施設で期待をかけましたが、知事はおそらく加森観光の捜査などをなんらかのルートで知って見送りました。ですから「坊や」ではないのですが、今回は緊急事態宣言をしておいて、政府から財源を引っ張ろうという政治的な考え方があった、という推論が成り立ちます。仮にそうなら、知事は政治家として優秀です。

 1か月前の自民党本部の新型コロナウイルス対策本部ではネトウヨ議員らが緊急状態条項の創設を2時間近く主張し続け、閣僚経験者が震撼しました。この流れを受けて、今回の首相の「いわば北海道緊急事態特区のようなもの」は、火事場泥棒で、憲法改正への道を開く思考でしょう。ナチスの手口です。おそろしいことです。さはさりながら、さほど深い考えではなく、官邸官僚のうち経産省出身の40代半ばの事務秘書官が暴走しているのではないでしょうか。

 さて、2011年と比較します。野党・公明党の石井啓一政調会長や山口代表、井上幹事長らは、8月下旬に「復興特区制度の早期実現に向けた提言」を与党・民主党の政府や与党に提出しました。この中で「 ○条例による法律の上書き権 復興特区計画に基づく事業については、条例により、法律による規制に関して、緩和・強化・適用除外等の特例を定めることができる」というとてもこわいことが書いてありました。これに先立ち、与党の岡田克也・民主党幹事長は、いくらなんでもめちゃくちゃで飲めないと公明党に伝えていました。3000人の地方議員の突き上げのもとに、与党の幹事長・政調会長・官房長官らが飲めないと言っていることを分かったうえで、公明党地方議員のことを考えて、石井・山口さんらは「条例による法律の上書き権」を入れたのでしょう。

 こういう火事場泥棒のようなことをする人は必ず出てきますから、注意が必要です。

 先の大戦を知る諸先輩方からは「1941年夏の日本はのんびりしていた」「日本では世論が急に変わるから注意が必要だ」と諭されてきましたが、この2020年2月27日(木)午後6時頃からきょう3月2日(月)が終わるまでが、エポックメイキングになるかも。子育てで忙しい中年夫婦が、全国学校一律休業の突然の発表で、1月下旬から日本で起きていたことに、震撼している、ということなのでしょう。北海道のみならず全国的に外出しないモードなのに、きのうは、マスクはしかたないにしても、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、米袋、ひなまつり関係品、冷凍食品などを買いしめたり、買いためたりするレジ待ち大行列ができました。

 いうまでもなく倒閣、政権交代のチャンス到来とは考えていますけど、そのことは同志と心の中での共有にとどめましょう。

 以上です。