宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【11/10】大臣所信的あいさつで武田良太総務相は19分「個人情報保護法一体化も」と意気込む、法相「性犯罪」法案提出は明言せず、「ワクチン」審議入り、第3次補正予算案編成指示

2020年11月10日 17時40分34秒 | 第203回臨時国会(2020年10月下旬)菅首相初答弁
[写真]武田良太総務大臣、2020年11月10日、衆議院インターネット審議中継からスクリーンショット。

●大臣の所信的あいさつを当ニュースサイトは詳報

 先週の予算委員会に続き、衆議院の5つの委員会で、「大臣の所信的あいさつ」がありました。あまり報道されませんが、来年に向けての法案策定に向けた、各大臣の意気込みが明言されます。武田良太総務大臣は19分間に及び、前大臣の13分(昨秋)、16分(今春)を大きく上回り「内閣のデジタル化」と「総務省の個人情報保護法3本一本化」などで意気込みました。上川法相は性犯罪被害の刑法改正案の国会提出には言及しませんでしたが、再犯防止の検討を加えました。今国会重要法案が2本かかる野上農相は、簡単に触れただけで、答弁が難航することもありそうです。

●テレビ入り集中審議決まる

【与野党国会対策委員長会談 令和2年2020年11月10日(火)】

 今月下旬に衆参の予算委員会のテレビ入り集中審議(総理、財務プラス要求大臣)の開催が決まりました。

●第3次補正予算案編成指示

【閣議 きょう】

 「令和2年度第3次補正案」の編成が首相から正式に指示されました。感染拡大防止、経済構造の転換、減災防災・国土強靭化の3本柱。

●予防接種法改正案が審議入り

【衆議院本会議 きょう】

 「予防接種法など改正案」(203閣法1号)が審議入りしました。首相とともに壇上に立った田村厚労相は「感染拡大に向けて各国がワクチンを開発している。検疫法34条の水際対策を進めており、延長が必要だ」と趣旨説明。代表質問に立った立憲民主党の中島克仁さんは「日本学術会議の問題について首相の説明が必要だ」としながら「死亡リスクとともに綱渡りが続いている医療関係者への配慮もすべきだ」と迫りました。

 これに先立ち、大島議長は、松尾明弘衆議院議員を紹介。次に、天皇陛下と皇嗣殿下への賀詞を各々に直接手渡したことを報告。国土審議会委員などの各種委員の選挙をしました。

●マスク再び要求

【衆議院議院運営委員会 きょう】

 先月28日にいったん緩めた壇上でのマスク着用を再び義務付けることで合意しました。

●会計検査院の国会同意人事で質疑

【参議院議院運営委員会 きょう】

 衆に続き、岡村肇・会計検査院検査官候補の再任に関する所信聴取と質疑がありました。議運は、経験のある理事と、若手の委員で構成されており、若手の質問は、人物よりも機構に関する質問が中心。共産党の順になると、理事で当選2回の倉林明子さんが「森友学園公有地売却問題で、財務省の改竄問題がなぜ起こったのか」と切り出しました。岡村さんの答弁では、提出された時点で改ざんされていたので見抜けなかったということのようです。2017年当時の岡村さんは「事務総局次長」の立場だったようです。

●総務大臣は今国会の「郵便法」通常国会の「個人情報保護法一本化」意欲

【衆議院総務委員会 きょう】

 上述の通り、武田良太総務大臣が所信的あいさつをしました。これに対する一般質疑は、あさって12日(木)8時半から。武田さんは「国及び地方公務員の定年引き上げに関して通常国会に法案(201閣法53号)を提出した」と事実だけ述べました。今国会で審議されない見通し。「郵便法改正案(203閣法3号)を今国会に提出した。速やかな成立をお願いしたい」と求めました。

 武田さんは「菅内閣がめざす社会像は縦割り打破でデジタル化を進める」とし「社会全体のデジタル変革のために新たな日常に向けて行政のデジタル化をすすめるため、各府省が共通して進めるシステムづくりを主導して、地方団体におけるデジタル化の共通基盤の標準化について年内に計画をまとめる」としました。

 武田さんは来年の通常国会を念頭に、「個人情報保護法(平成15年法律57、58、59号)では内閣官房と連携して、国、独法、民間の制度の一元化に向けた検討と歩調を合わせて、地方団体の制度んいついて全国的な共通ルールづくりを法律にはかる」とし、個人情報保護法一本化の法案を通常国会に提出することを前のめりで語りました。「過疎法」(平成12年法律15号)について武田さんは「過疎法の期限切れをみすえた新たな過疎対策を進める」としました。過疎法の延長は議員立法のことも多く、延長も念頭に与党内の調整が進むのでしょうか。来年の通常国会冒頭で審議されるはこびの「令和3年度地方財政計画」について、「一般財源総額は実質的に前年と同水準を確保する」と意気込みました。

 総務省の副大臣、政務官合計5名は全員自民党の男性議員で、元佐賀県知事の古川康さん、世襲議員としては異例の親子二代東大法学部卒で元自治官僚の宮路琢馬さんらがあいさつしました。

●野上農相今国会2法案淡々と宮内副大臣もあいさつ

【衆議院農林水産委員会 きょう】

 重要法案が2本かかる、今国会最大の焦点となる農水委ですが、参議院自民党の国会対策幹部や官房副長官をつとめながらも農林水産行政の経験に乏しいと指摘される、野上浩太郎農相。所信的あいさつでは「種苗法改正案」(201閣法37号)と「特定水産動植物の国内流通の適正化に関する法律案」(203閣法4号)に簡単に触れただけでした。「中央高速にかかる緑橋(東京)」の手抜き工事への干渉が報じられ、野党が合同ヒアリングを立ち上げた、宮内秀樹・農林水産副大臣(福岡4区)もあいさつしました。次回はあす11日(水)午前10時。

●岸防衛相は給与法案の成立求める

【衆議院安全保障委員会 きょう】

 岸信夫防衛相らの大臣が所信的あいさつをしました。岸さんは「防衛省職員給与法案」(203閣法7号)を提出したことについて「月給はすえおくが期末手当は減額する人事院勧告を実施するため、防衛大学と防衛医科大学の学生の期末手当を改定する」とし、防衛省・自衛隊職員の期末手当は内閣委にかかる他の法律(案)で規定されるため、今回の法律案は防大生・防衛医大生のみに適用されるものだと明かしました。次回は、13日(金)午後1時半。

●小泉環境相は通常国会への「温対法改正案」「自然公園法改正案」提出明言

【衆議院環境委員会 きょう】

 石原宏高・新委員長(東京3区)が小泉環境大臣を二度も父親の名前と間違え「すいません、小泉チルドレンなもんですから」と照れました。小泉環境相は所信的あいさつで「菅首相が2050年カーボンニュートラルを宣言した、私が今まで訴えてきたことでうれしく思う」とし「来年は環境省発足50年」とし、パリ協定復帰を念頭に、バイデン新大統領が就任すれば気候変動政策が大きく変わるとの分析を踏み込んで披露しました。

 小泉さんは「地球温暖化対策推進法(平成20年法律117号)の改正に向けた検討を行う。私が就任したとき7自治体に過ぎなかったゼロカーボンシティは今は170地方自治体人口8000万人となった」とし「再生エネルギーの推進やエネルギーの地産地消」と連携し、「温対法改正案」の通常国会提出に大きく踏み出しました。また「国立公園でのワーケーション、リモートワークをすすめる」とし「自然公園法(昭和32年法律16号)の改正に向けて検討する」としました。今週の衆議院での審議はなく、次回は来週17日(火)となりました。

●法相は安全運転で「入管難民法」「性犯罪刑法」「少年法」強調せず

【衆議院法務委員会 同日】

 上川法相は、あまり改正法案提出には前向きではないようです。3度目の就任とあってか「法務行政のデジタル化、IT化を進めるため、全国の職員と対話する」ことを初めに強調しました。性犯罪に関する改正刑法の量刑見直し3年後規定のプログラムが動いていることについて、上川さんは「これまで必ずしも広く知られていなかった、性暴力の被害が明らかになっている」としながら、法案については「令和4年までの性暴力性犯罪者対策の刑事法に対する検討」にとどまりました。ただ、前法相があまり言及しなかった「性犯罪防止にもスピード感をもってとりくむ」と述べ、同省刑事局だけではおさまらない性犯罪の予防・治療・再発防止にも包括的に取り組み意向を示しました。

 また、当ニュースサイトではまだ報じていませんが、法制審議会に諮問した「仲裁法制は法律改正に向けて検討を始めた」としましたが、これは早くても再来年2022年以降の提出となります。法制審議会に関しては「所有者不明土地の問題は政府全体で取り組んでいるが、法制審で、不動産登記法と民法の改正に向けた作業を進める」としました。来年の通常国会に提出されると思われる少年法改正案についても「罪を犯した18歳、19歳に対する法整備も民法の成年年齢引き上げにあわせて制度を具体化する」との安全運転な発言にとどまりました。

 今国会での提出も検討しており、来年の通常国会に提出されることが確実な、「入管難民法改正案」(当サイト内関連記事)についても、「ことし7月の収容・送還に向けた報告書をふまえた関係法案の国会提出に向けた検討をすすめ、被収容者の人権に配慮し、難民認定についても関係法律の整備を進める」とし、報告書にもとづく一括改正法案の作業を進めることにし、今国会への前倒し提出についての発言はありませんでした。次回は13日(金)午前9時半。

●あすの予定

 衆議院では内閣、厚生労働、農林水産がさっそく一般質疑。外務委も所信的あいさつで議案がかかる委員会はすべて店開きとなります。議案はありませんが、「GoTo」「宮内・現農水副大臣の口利き疑惑」のある国土交通委員会でも所信的あいさつがあり、短い会期ですが、暇な委員会は意外となさそうです。参議院は憲法審査会があります。

 あす(11/11)の衆議院農林水産委員会では午後2時頃から、玉木雄一郎国民民主党代表が登場し「香川県の鳥インフルエンザ」と「高収益作物次期作転換奨励金の予算不足」にするどく迫る予定。

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 我ながら、「ニュースサイト宮崎信行の国会傍聴記」の、この一つの記事は、圧倒的な、すごい情報量だね。以上です。

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Ⓒ2020年、宮崎信行 Miyazaki Nobuyuki

RCEPは第204回通常国会提出へ、ファイザー社コロナワクチン成功か、バイデンTPP仮にも再交渉

2020年11月10日 08時44分07秒 | 第204通常国会令和3年2021年
[写真]外務省、きょねん2019年12月、宮崎信行。

 コロナ禍で、外国との往来も滞っていましたが、米大統領選が終わったこともあってか、海外の情勢で大きな動きがありました。

 先日の毎日新聞報道にもありましたが、「RCEP(東アジア地域包括的経済連携)条約」が署名される公算が高まったようです。日経新聞は、ASEAN10議長国のベトナムの外務次官が、来週2020年11月15日のリモート首脳会議最終日に署名される見通しを示した、と報じました。読売新聞も年内の大筋合意以上が確実視され、来年の2021年通常国会に承認案が提出され、2、3年後に発効するかもしれないとしました。ほとんどの関税項目で例外規定があるため、日本市場への影響は少ないとみられます。

 新型コロナウイルス感染症ワクチンでは、米国ファイザー社が、「成功した」との共通認識が広がり、アメリカの株価が史上最高となりつつあります。ファイザー社のプレスリリースによると、同社は治験で43538人に試してコロナに感染した人は94人。「9割以上が感染を免れたようだ」としています。コロナの罹患率はそもそも高くはないと思いますが、私が計算したところ、例えば、ここ数日の日本の「北海道200人、東京200人を含めて全国で1200人」という水準が「北海道20人、東京20人を含めて全国で120人」という水準にまで落ち着かせることができる計算になります。日本は2021年前半までにファイザー社ワクチンだけで1・2億回分を契約済み。きょう午後1時の衆議院本会議で「ワクチン予防接種法など改正案」(203閣法1号)が審議入りしますが、「安倍内閣最後の8月28日の本部決定」の公約が実現できる見通しが立ったように思えます。

 バイデン次期大統領について、トランプ大統領令第1号で脱退したTPPはどうなるか。報道がようやく出てきて、当面保留のままのようです。が、仮にTPPに戻る場合は必ず再交渉するとのこと。歴代民主党政権はだいたい日本などアジア諸国との交渉でシビアである傾向があります。イギリス保守党のジョンソン首相とトラス国際貿易相らがTPP入りに前のめりとなっており、仮に、英国に続いて、米国と再交渉があれば、日本の国益からみてネガティブな方向に行くことも考えられます。

 コロナ禍の往来制限で、国際関係が、エリート(政策決定に参画できる者)である外務官僚、商社員、特派員記者らに制限された世界に戻りつつあるきらいもありますが、SNS時代は続きますので、積極的な逐次情報開示を願いたいところです。

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