宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

【枝野・宮崎論争】枝野立憲代表「供給サイドの施策より、徹底して消費力・購買力の経済を訴え刷り込み変えたい」宮崎「単純労働で1・2億人が食べられる経済が理想」の問いに、井出教授は「社会保障枠」に

2020年11月03日 11時25分21秒 | 経済
[写真]質問に答える枝野代表、先週末2020年10月30日、衆議院第二議員会館内の「立憲民主党会議室」で、宮崎信行撮影。

 「枝野・宮崎論争」と同じ土俵に乗って、自分を大きく見せたいわけですが、立憲民主党が以前から、井手英策・慶大教授らのいう、政府(国庫など)と民間(企業セクター、家計セクター)との分配の話だけしていて、民間の成長(GDPの1年前と比較した伸び率)の話をまったくしないことが気になっていました。

 立憲民主党経済政策調査会(江田憲司会長)の検討項目に「研究開発等への税金投入」の一点しか成長が見当たらない。研究開発がGDP国連方式でカウントされるようになったのは10年前。それ以前なら成長の項目が全くなく、ひたすら分配の話だけ。さらに、立憲民主党社会保障調査会(西村ちなみ会長)の初回会合に井手英策・慶大教授が招かれたことが分かり、いてもたってもいられず、定例記者会見で枝野幸男代表に聞きました。

 一人でやっているので、久しぶりに全文書き起こしてみましたので、そこから記事にします。



 先週末、令和2年2020年10月30日(金)の枝野代表定例会見で私は次のような質問をしました。

 「経済政策に関してなんですけど、枝野代表はいつも消費や需要が押し上げる経済を成長戦略という形でおっしゃっている。(それとは逆サイドの)生産、製造、供給といったものが引っ張りあげる(経済を成長戦略だ)という考えがあるのか。経済調査会で江田さんがやっているところの論点が示されたが、成長は、研究開発、R&Dしか見当たらない。R&Dは、10年前まで国連方式のGDPではカウントされなかったものだ。日本の工場は今世紀25万軒から20万軒に減っているので、提案になってしまうが、枝野内閣で工場5万件増設するという目標を入れた方がいいと思うのは私だけではないと思うが、いかがか」

 これに対して枝野さんは次のように答えました。

 「生産性と言われている分野、つまり供給サイドについてもさまざまな施策が必要であることは否定しません」

 「しかし、(日本は過去)30年間そちらに一辺倒な政策をやってきました。その結果、国際競争の中で(生産性が)停滞しているのではなく、年4%前後伸びている。これは先進国の中では必ずしも低い数字ではない。つまり生産側、供給側の問題で日本の経済が低迷しているのではない」。

 「国内の需要が日本経済の6割を占めている。ここが停滞しているから、先進国の中でとくに日本だけが停滞を続けている。これは再分配に失敗して、消費者の側に購買力がない。これが日本経済の低迷の本質である、と。ここのところをそうとう強調しないと、経済政策というと、従来もやってきて一定の成果を挙げている供給の問題だけが経済政策だというすりこみを変えないといけない。私は徹底して、消費力、購買力からの経済を訴え続けたいと思います」

 と答えました。もちろん、これまで選挙公約にR&D以外の成長が全くなかった、ということについては認めていますが、やはり国内需要の喚起が成長につながる、という姿勢を維持し、強調しました。

 蓮舫さんが代表の頃とおなじく、江田さんの調査会の検討項目には「人への投資」とあります。しかし、私がよって立つ経済観は人は成長せず、機械や土地が成長すれば、人は成長しなくていいと考え方です。イギリスではブレア首相の「教育改革」が失敗したことが証明されています。私は次のように聞きました。

 「理想とする社会像として、工場で単純労働をするだけで1億2000万人が食べていける経済というのがイギリス産業革命以後の理想だと思うが、そういう考え方はとらないのか。世の中、高校や大学を出た人ばかりではないが」

 これについて、枝野さんは次のように答えました。

 「とりません。なぜならば、日本をはじめとして先進国の生活水準、別の言い方をすれば、賃金水準はグローバル化のなかで圧倒的に高くなってしまっています。(少品種の)規格大量生産分野では、賃金水準の低い新興国との競争には勝ち得ません。したがって、先進国は付加価値が高い、少量多品種の分野だったり、製品の研究開発など大量生産にいたる前の段階の部分であったり、でないと国際競争では生き残っていけない」

 「で、この部分の例えば雇用の需要というのはけっして大きなものではない。そうすると、先進国は国内において富が蓄積されているので、国内の消費、内需によって一定の経済を回して成長していくことができる。これのバランスというか、国内のとくにサービス化された内需が一定程度のベースを支えながら、国際競争をしていく。これが日本だけ、先進国の中で、内需が停滞をし続けるということで、(成長が)成り立っていない。やはりそこを変えない限りは日本の経済は成り立たないと思っています」。

 と話しました。枝野さんは、日本の産業の高度化・社会の複雑化により、東京など都市部での、私のようにサービス産業の見た目は華やかな経済を続け、さらにその可処分所得を増やすことで、工場従事者も含めて経済全体のパイが広がるという考え方のようです。

 そして、3年前から、多くの識者から「経済政策でなく財政政策だ」との批判を浴びながら、国会議員・地方議員が全国に招きながら会合を催すほど心酔した、井手現象について。

 私は「きょう(10月30日)社会保障調査会というのが党で始まると思いますが、井手英策慶應大学教授が講師をつとめるが、井手教授は(経済政策ではなく)「(国庫の歳出である)社会保障専門」のほうに移っていただいたのか」と問いました。

 政治的には、3年前、井手教授をブレーンとする前原誠司さんが、枝野さんと代表選をたたかい枝野さんが負けたものの、すぐに解党されたので、そのチームで枝野・立憲が結党されたいわくつきの政治的な問題も含まれています。

 これについて枝野さんは、

 「私自身、井手先生が従来からおっしゃている社会保障の普遍主義だとか、現物給付を中心にするべきだという考え方は十年来私もそう思っているので、西村ちなみ調査会長も同じ考え方で講師としてお招きしたのではないか」

 と柔軟な対応を見せました。井手さんは、経済ではなく、社会保障ということになります。

 今回の「枝野・宮崎論争」ということで、枝野さんの考え方が分かったような気がします。私としては、アジア各国における日本の賃金水準が相対的に下がっているのだから、繊維工場を大量につくれば、単純労働で稼げる人が増えるように思います。「女工哀史」といわれますが、あれは「12時間労働」が超絶ブラックだと非難された時代で、19世紀には企業内保育所が整備されていました。

 ただ、枝野さんの考えは分かりました。枝野さんのいう「供給サイドの施策も必要だ」との言葉を受けて、経済政策調査会も、工場5万軒増設だとか、子連れ女性が働ける繊維産業や、90歳代でも働ける紙工業の増強などを検討していただきたいと思います。また、反知性主義ではありませんが、「人への投資」ということで「人間は成長するものだ」という考え方のおしつけ、例えば「いい年して何やっているんだ」「さらなる充実を期待します」という言葉は相手をきづつけることもあるので、工場で機械を前に単純労働をして収入を得てアフターファイブで俳優をやってやりがいと社会貢献を達成する人生というものを、柔軟に認めるやさしさをもってほしいところです。

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